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第四章 西からの迷い人
77 俺のくま 緋色
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何だ、この可愛い生き物は。
ぎゅーと抱きしめると、しがみついてくる。パーカーの帽子に耳が見えて、もう一回脇を手で持って、体を離してぶら下げてみた。
「がお?」
ヤバい。可愛い。
「どうした、これ?」
もう一度、抱き直しながら聞くと、生松にもらったー、と言う。
生松?どういうことだ?
広末が、診察してもらえ、と言ってたな。ついでに聞くか。
「帰って来ないから心配した。」
「ん?んー?」
「着替えたら来るって言ってたろ?」
自分が着替えてから、緋椀をからかってやろうと客間に行ったら、お茶を並べ終えた成人と入れ違いだったのだ。
「これ、気持ちいいから着たら、くまと似てるから、じいやが鏡持ってきてくれて見てた。俺も、くま!」
自分が、可愛い生き物になってることは分かってるんだな。
「乙羽にも見せるー。」
好きそうだな。
機嫌良くしがみついてくるので、抱いたまま生松の部屋へ移動してノックする。それにしても、手触りのいい服だ。
返事が聞こえて扉が開いた。
「今、入ってもいいか?」
正装の軍服を脱いで、シャツ姿の生松が、どうぞ、と中へ招いてくれた。
相変わらず、殺風景な部屋だな。
「殿下、どうされました?」
「ああ。広末が、成人を診てもらえと言ってたから。」
話しながらソファに座る。成人は膝の上でいいか。
「成人、どうかしましたか?」
「夜ご飯いらないって言ったら、広末が、食べないのは駄目って。」
「ははあ。」
生松は、くすくすと笑った。
「お腹いっぱいですか。披露宴はご馳走でしたからねえ。」
そう言いながら、成人の服を手早くめくって、薄っぺらいお腹に手を当てる。
「成る程。たくさん食べましたね。消化が間に合ってないようだ。うん、これはもう入らないねえ。」
薄っぺらいままだけどな。
「殿下。夜ご飯は無理そうです。何か、スープか何かの液体を、飲めたら飲むくらいでいいと広末にお伝えください。」
「……そうか。」
たくさん食べたな、と思ったら次が入らないから、結局、増えないんだよな。
軽くため息を吐いたのがバレたのか、ごめん、と成人の小さな声が聞こえた。
いや、お前が謝るようなことは何も……。
「成人、大きくなりましたよ。前よりたくさん食べられるようになったし、体もお肉が付いてきた。背も伸びてます。」
「俺、大きくなった?」
「ええ。数字で測ってあるんだから、見たらすぐ分かります。お洋服も、きつくなったり、短くなったのがあるでしょう?」
「ある!」
「体が大きくなったから、服が合わなくなったんです。ね?」
うんうん、と嬉しそうに頷く顔を見て、ほっとした。生松、すまん。
「それにしても、可愛い服ですね。先ほどのですか?」
「そうだ、これ、どうした?」
「衣装部から預かってきました。注文の物と違うけれど、嫌でないなら着てほしいとのことです。できれば、衣装部に見せに来てほしいと。」
「これ、好き。」
「とても、似合ってますよ。」
生松がこちらを向く。
「あー、うん。似合ってる。」
「ではまた、見せに行ってあげてください。」
とりあえず、聞きたいことは聞けたので、礼を言って部屋を出た。
ぎゅーと抱きしめると、しがみついてくる。パーカーの帽子に耳が見えて、もう一回脇を手で持って、体を離してぶら下げてみた。
「がお?」
ヤバい。可愛い。
「どうした、これ?」
もう一度、抱き直しながら聞くと、生松にもらったー、と言う。
生松?どういうことだ?
広末が、診察してもらえ、と言ってたな。ついでに聞くか。
「帰って来ないから心配した。」
「ん?んー?」
「着替えたら来るって言ってたろ?」
自分が着替えてから、緋椀をからかってやろうと客間に行ったら、お茶を並べ終えた成人と入れ違いだったのだ。
「これ、気持ちいいから着たら、くまと似てるから、じいやが鏡持ってきてくれて見てた。俺も、くま!」
自分が、可愛い生き物になってることは分かってるんだな。
「乙羽にも見せるー。」
好きそうだな。
機嫌良くしがみついてくるので、抱いたまま生松の部屋へ移動してノックする。それにしても、手触りのいい服だ。
返事が聞こえて扉が開いた。
「今、入ってもいいか?」
正装の軍服を脱いで、シャツ姿の生松が、どうぞ、と中へ招いてくれた。
相変わらず、殺風景な部屋だな。
「殿下、どうされました?」
「ああ。広末が、成人を診てもらえと言ってたから。」
話しながらソファに座る。成人は膝の上でいいか。
「成人、どうかしましたか?」
「夜ご飯いらないって言ったら、広末が、食べないのは駄目って。」
「ははあ。」
生松は、くすくすと笑った。
「お腹いっぱいですか。披露宴はご馳走でしたからねえ。」
そう言いながら、成人の服を手早くめくって、薄っぺらいお腹に手を当てる。
「成る程。たくさん食べましたね。消化が間に合ってないようだ。うん、これはもう入らないねえ。」
薄っぺらいままだけどな。
「殿下。夜ご飯は無理そうです。何か、スープか何かの液体を、飲めたら飲むくらいでいいと広末にお伝えください。」
「……そうか。」
たくさん食べたな、と思ったら次が入らないから、結局、増えないんだよな。
軽くため息を吐いたのがバレたのか、ごめん、と成人の小さな声が聞こえた。
いや、お前が謝るようなことは何も……。
「成人、大きくなりましたよ。前よりたくさん食べられるようになったし、体もお肉が付いてきた。背も伸びてます。」
「俺、大きくなった?」
「ええ。数字で測ってあるんだから、見たらすぐ分かります。お洋服も、きつくなったり、短くなったのがあるでしょう?」
「ある!」
「体が大きくなったから、服が合わなくなったんです。ね?」
うんうん、と嬉しそうに頷く顔を見て、ほっとした。生松、すまん。
「それにしても、可愛い服ですね。先ほどのですか?」
「そうだ、これ、どうした?」
「衣装部から預かってきました。注文の物と違うけれど、嫌でないなら着てほしいとのことです。できれば、衣装部に見せに来てほしいと。」
「これ、好き。」
「とても、似合ってますよ。」
生松がこちらを向く。
「あー、うん。似合ってる。」
「ではまた、見せに行ってあげてください。」
とりあえず、聞きたいことは聞けたので、礼を言って部屋を出た。
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