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第四章 西からの迷い人
68 御前会議 3 赤璃
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「ああ、そうだ。最近、養女として登録した。間違いなく三条の血筋の娘だ。」
「なるほど。すみません、それだけです。見覚えのない方がいらっしゃったので気になっておりました。」
六条の跡取りは淡々と、答えを聞いて頷いた。
「跡取り息子も、すでに嫁がれた立派な娘さんもいらっしゃったのに、何故ご養女を?」
八条の若当主が首を傾げる。学者気質の前当主は、国の政治や領地の平定よりも研究をしたい質で、跡取り息子が二十歳になるとすぐに代替わりをして、大学の研究室に入り浸り、学生たちと楽しく過ごしているようだ。
若くして八条家の当主となった現当主も、分かっていたことだし父も責任は果たされたから、と気にせず、堂々と仕事をこなしている。年寄り相手にも物怖じしない立派な若当主だ。
「そのようなこと、どうでも良かろう。話がずれておる。」
「はあ、まあ、気になっただけなので。」
なるが完全に目を覚まして、きょろきょろと辺りを見回した。右手が、緋色の服をきゅっと握りしめているのが可愛い。
「陛下は、本当にあれを緋色殿下の伴侶だと仰るのか。」
「くどい。成人は緋色の伴侶でうちの子だ。これ以上の侮辱は許さぬ。」
「こんな、馬鹿な……話があるものか!緋色殿下は我々をからかって遊んでいらっしゃるのだ。甘やかすのも大概になされよ。」
「甘やかす?」
「ええ。息子可愛さに何でも願いを叶えていては国が滅びますぞ。」
「ははっ。知らぬのか?緋色には我儘を言う権利がある。成人を伴侶にする、なんて可愛い願い、幾らでも叶えてやるさ。」
「なん、ですと……?」
「良いか。緋色は戦争を終わらせた英雄だ。この国の民を代表して、私は緋色へ尽きぬ感謝を捧げる。どんな褒賞を望んでも良い。その緋色の望みが、成人を伴侶として生涯共に過ごすこと、なのだ。喜んで叶えるとも。婚姻の規定に、同性でも良いとの文言を追加した。間もなく正式に、成人を緋色の伴侶として発表する。もともと、同性との婚姻を禁止する文言は無かったが、暗黙の了解というものがあったでな。はっきりと、しても良いと書いておいた。」
「そんな規定の変更、私は了承しておりません!」
「この程度の文言の変更は私の独断でできる。」
「あ、あ、あなたは、皇帝に相応しくない。」
「知っておるよ、誰よりも。」
「国の規定を独断で変えるような皇帝には、付いていけません。」
「陛下、失礼致します。あの、よろしいですか、三条殿。」
六条が、口を挟んだ。
「正式な発表などなくとも、成人さまが緋色殿下の伴侶だと、城の者は皆知っております。城下の者も知っておる者は多いですよ?何故、あなたはご存知ないのですか?」
「なるほど。すみません、それだけです。見覚えのない方がいらっしゃったので気になっておりました。」
六条の跡取りは淡々と、答えを聞いて頷いた。
「跡取り息子も、すでに嫁がれた立派な娘さんもいらっしゃったのに、何故ご養女を?」
八条の若当主が首を傾げる。学者気質の前当主は、国の政治や領地の平定よりも研究をしたい質で、跡取り息子が二十歳になるとすぐに代替わりをして、大学の研究室に入り浸り、学生たちと楽しく過ごしているようだ。
若くして八条家の当主となった現当主も、分かっていたことだし父も責任は果たされたから、と気にせず、堂々と仕事をこなしている。年寄り相手にも物怖じしない立派な若当主だ。
「そのようなこと、どうでも良かろう。話がずれておる。」
「はあ、まあ、気になっただけなので。」
なるが完全に目を覚まして、きょろきょろと辺りを見回した。右手が、緋色の服をきゅっと握りしめているのが可愛い。
「陛下は、本当にあれを緋色殿下の伴侶だと仰るのか。」
「くどい。成人は緋色の伴侶でうちの子だ。これ以上の侮辱は許さぬ。」
「こんな、馬鹿な……話があるものか!緋色殿下は我々をからかって遊んでいらっしゃるのだ。甘やかすのも大概になされよ。」
「甘やかす?」
「ええ。息子可愛さに何でも願いを叶えていては国が滅びますぞ。」
「ははっ。知らぬのか?緋色には我儘を言う権利がある。成人を伴侶にする、なんて可愛い願い、幾らでも叶えてやるさ。」
「なん、ですと……?」
「良いか。緋色は戦争を終わらせた英雄だ。この国の民を代表して、私は緋色へ尽きぬ感謝を捧げる。どんな褒賞を望んでも良い。その緋色の望みが、成人を伴侶として生涯共に過ごすこと、なのだ。喜んで叶えるとも。婚姻の規定に、同性でも良いとの文言を追加した。間もなく正式に、成人を緋色の伴侶として発表する。もともと、同性との婚姻を禁止する文言は無かったが、暗黙の了解というものがあったでな。はっきりと、しても良いと書いておいた。」
「そんな規定の変更、私は了承しておりません!」
「この程度の文言の変更は私の独断でできる。」
「あ、あ、あなたは、皇帝に相応しくない。」
「知っておるよ、誰よりも。」
「国の規定を独断で変えるような皇帝には、付いていけません。」
「陛下、失礼致します。あの、よろしいですか、三条殿。」
六条が、口を挟んだ。
「正式な発表などなくとも、成人さまが緋色殿下の伴侶だと、城の者は皆知っております。城下の者も知っておる者は多いですよ?何故、あなたはご存知ないのですか?」
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