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こぼれ話
お茶会 赤璃
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最近、悩んでいる様子のなるの憂いを晴らしてあげようと計画したお茶会もどき。
だというのに、どうやら悩みを深めてしまったようだ。
「結婚するんだよね?」
「はい。」
「結婚は、一番好きな人と生涯を共に過ごす誓いだよね?」
「一番好きでなくても、結婚はできますよ。」
「え?」
「生涯を共に過ごす誓いではありますが、主に家同士が結び付いて子どもを作ることが結婚ですかね。」
「…………。」
あちゃー。
どうしましょ。
右目を見開いて、固まってしまったわ。
「え、と。一番好きじゃなくても結婚するの?」
「はい。」
「……結婚って何?」
振り出しに戻ったわね。
視線を泳がせているなると目を合わせる。
「生涯を共に過ごす誓いよ。」
「一番好きじゃなくてもできる?」
「そうね、そんなときもある。」
「……ずっと一緒にいるのに?」
「責務を果たせば、ずっと共にいなくても大丈夫ですよ。」
淡々と寧子ちゃんが答えて、ますますなるは首を捻っている。
「責務。」
「まあ、端的に言えば子を成して家を存続させることですね。」
「好きじゃなくても、できるんだ。」
「はい。嫌いでもありませんし。まあ、言ってみれば仕事ですね。」
「仕事……。」
なるがぱちぱちと右目を瞬かせる。
「え、と。じゃ、私となるは結婚の仕事ができてないの?子どもを生めないから。」
「いえ、そんなことは。子どもを望まなければ、二人で生涯を共に過ごす誓いを結婚という形で表して良いのではないかと思われます。……男同士というのは珍しいと思いますが。」
なると同じように、驚いた様子で話を聞いていた乙羽が口を挟んだ。寧子ちゃんは大した動揺も見せずに答えている。
「一番好きなら男同士でも女同士でも一緒にいたいよね……。ね、緋椀くん。」
「は?え?ああ。えーと。」
割りとぼんやりと話を聞いていた緋椀が、いきなり話を振られて焦った声を上げる。
「俺は、その。仕事で結婚しろと言われたら、するけど……。」
最後の方はとても小さな声だった。
「え?そうなの?そしたら三雲さんはどうなるの?」
「え?いや。作治さんは……。」
「だって、恋人同士なのに。違う人と結婚したら一緒にいられないじゃない。」
「…………!」
直撃弾を食らって答えられずに、緋椀が唖然としている。
「なるほど。緋椀さまとのお話が無くなって赤虎さまとの縁談が届いたのは、緋椀さまに決まったお相手ができたからでしたか。」
すっかり取り乱し始めた三人をよそに、変わらず冷静な寧子ちゃんの声が部屋を流れた。
だというのに、どうやら悩みを深めてしまったようだ。
「結婚するんだよね?」
「はい。」
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「一番好きでなくても、結婚はできますよ。」
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「仕事……。」
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「いえ、そんなことは。子どもを望まなければ、二人で生涯を共に過ごす誓いを結婚という形で表して良いのではないかと思われます。……男同士というのは珍しいと思いますが。」
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「は?え?ああ。えーと。」
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「俺は、その。仕事で結婚しろと言われたら、するけど……。」
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「…………!」
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