【完結】人形と皇子

かずえ

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こぼれ話

幸せを配る  成人

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「お土産、です。」

 俺は食堂の入り口でまんじゅうを配る。こういうのも、いい!お土産って、幸せを分けてあげてるみたい。
 乙羽おとわはせんべいを買ってきて配っていた。

「おお、成人なるひと、おかえり。楽しかったか?」
「うん。」

 じいじには、お宿で飲んだお酒が美味しかったと緋色ひいろがお酒を買ってきたから、まんじゅうは無しね。そのお酒を抱えて、にこにことじいじは笑った。

「旅行もええなあ。」
「温泉は気持ちいい!」
「おお、成人なるひともそれが分かるか。」
「お外のお風呂はいいよー。」
「なんと、露天風呂か。豪勢じゃな。」

 うふふ。

力丸りきまるはこれね。」
「やった。特別?」
「うん。」

 力丸りきまるは、綺麗な包装紙をすぐに開けて、ぞうのキーホルダーを取り出した。

「おお、ぞうだな。」
「俺も、一緒!」

 おれは、肩かけかばんに付けたぞうを見せた。

「やった。おそろいか。嬉しい。」

 おそろい。
 そう、おそろいなんだ。

村次むらつぐも一緒。」
「なんだ、二人のおそろいじゃないのか、残念。」

 力丸りきまるは、にやって笑う。

「友達だから。」
「そっか。」
「でも、虎が好きなんだって。」
村次むらつぐ?」
「そう。」
「俺も虎は好きだな。格好いいんだよ。しなやかな動きで強そうで。」
「虎、いなかった。」
「今いないのか。残念だな。」
「うん。でも、ぞうがいるから。」
「ぞうが好きなんだな。覚えとく。これ、ありがとな。大事にするよ。」
「うん!」

 みんな、とても喜んでくれた。村次むらつぐにも、夕食が終わってからぞうのキーホルダーを持って行った。力丸りきまるも厨房に付いてきた。

「ぞうかよ。」
「ぞうだよ。」
「……ありがと。」
「うん。」
「三人でおそろいだってよ。良かったな。」
「ああ、うん。」

 村次むらつぐは、力丸りきまるから視線を逸らして返事をする。

「今から飯か?いつも、ありがとな。」

 力丸りきまるが言った。
 俺たちはご飯を先にもらってるからね。村次むらつぐ広末ひろすえはいつも、俺たちが終わる頃に食べている。

「ありがとね。」
「仕事だから……。」
「今度、一緒に出かけようぜ。駄菓子屋とかさ。」
「え?」
「三人で。」
「ああ、え、と……。」
「街で評判の食べ物を食いに行く、とかの方がいいか?お前、料理人だもんな。」
「あ、うん。」

 二人の会話を聞いて、嬉しくなる。
 また楽しみが増えた!
 
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