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第三章 幸せの行方
44 緋色 50
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「どういうことかな?」
俺が口を開くよりも早く朱実が話を進めていく。
「朱実殿下より、緊急で離宮の使用人として人員を提供するように、と言われた時には驚きましたが、これがまあ、大人気でして。」
「大人気。」
「ええ。挨拶を交わしながら掃除や洗濯をする、という仕事が新鮮だったのです。来客もほとんどありませんし、呼んでいない客も即、排除しているうちに徐々に減って参りました。その上、朝昼晚の食事がまあ、とんでもなく旨い。おやつまで付きます。自分の仕事が済んだら、何をしても自由で、九条さまや常陸丸殿と手合わせもできる。力丸殿も、我々の相手にはぴったりでして。隠の我々としては、一族でない者とは実戦以外で仕合うことができなかったので、喜んでおります。更に!」
「まだあるの?」
「乙羽さまと成人さまが可愛い!仕事をしていたら、天使が二人、声をかけてくれるのですよ。お二人で戯れていらっしゃる様子などもう、眼福でございます。」
言い切ったな……。
朱実が唖然としている。珍しいものを見た。
「えーと、それで?」
「あ、それでですね、離宮の仕事が取り合いで、当番表もできました。他の仕事が入っている者も当番に行きたいので、なるべく早く終わらせようと必死です。父も、成人さまが好きすぎて昼間はあそこから離れませんし、王城の外の屋敷にいちいち集まるより、あそこで会議をした方が効率が良いので、頭領は離宮で執事長として仕事をしつつ、指示を出したり報告を受けることに致しました。」
若干、弾む声で村正は報告を終えた。
頭領になったということは、ずっと離宮にいられるから、押さえきれないくらい喜んでいるんだな。
まあ、一ノ瀬は気が合うから、好きにしたらいい。離宮を整えてもらえるのは助かるし。成人が好きすぎる、という言葉には若干引っ掛かりを感じるが。
額に手を当てた朱実が、低い声を出した。
「緋色。一ノ瀬は、私のものなんだが。」
俺が口を開くよりも早く朱実が話を進めていく。
「朱実殿下より、緊急で離宮の使用人として人員を提供するように、と言われた時には驚きましたが、これがまあ、大人気でして。」
「大人気。」
「ええ。挨拶を交わしながら掃除や洗濯をする、という仕事が新鮮だったのです。来客もほとんどありませんし、呼んでいない客も即、排除しているうちに徐々に減って参りました。その上、朝昼晚の食事がまあ、とんでもなく旨い。おやつまで付きます。自分の仕事が済んだら、何をしても自由で、九条さまや常陸丸殿と手合わせもできる。力丸殿も、我々の相手にはぴったりでして。隠の我々としては、一族でない者とは実戦以外で仕合うことができなかったので、喜んでおります。更に!」
「まだあるの?」
「乙羽さまと成人さまが可愛い!仕事をしていたら、天使が二人、声をかけてくれるのですよ。お二人で戯れていらっしゃる様子などもう、眼福でございます。」
言い切ったな……。
朱実が唖然としている。珍しいものを見た。
「えーと、それで?」
「あ、それでですね、離宮の仕事が取り合いで、当番表もできました。他の仕事が入っている者も当番に行きたいので、なるべく早く終わらせようと必死です。父も、成人さまが好きすぎて昼間はあそこから離れませんし、王城の外の屋敷にいちいち集まるより、あそこで会議をした方が効率が良いので、頭領は離宮で執事長として仕事をしつつ、指示を出したり報告を受けることに致しました。」
若干、弾む声で村正は報告を終えた。
頭領になったということは、ずっと離宮にいられるから、押さえきれないくらい喜んでいるんだな。
まあ、一ノ瀬は気が合うから、好きにしたらいい。離宮を整えてもらえるのは助かるし。成人が好きすぎる、という言葉には若干引っ掛かりを感じるが。
額に手を当てた朱実が、低い声を出した。
「緋色。一ノ瀬は、私のものなんだが。」
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