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第三章 幸せの行方
37 力丸 6
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俺は耳を塞いだ。聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない。
成人が俺の方を向いて、何か言っている。仕方なく耳から手を離す。
「力丸。俺、布団で寝てる。」
一つしか開いていない目が細くなって、笑顔を作る。
どうして、斎さんも生松先生も成人の前で俺にそれを教えたんだろう。
広末が、呆然と立ち尽くしている。
「布団で、寝てる?」
口を開いたら、涙が出てきた。格好悪い。
「俺、力丸と遊んでる。」
戦闘人形はしないことをしてるって言いたいのか。
「ごめんね。」
何を謝っているのか分からない。お前は、そう育てられただけじゃないのか?いや、作られた?……違う。そんなことを考える自分が嫌だ。
斎さんが疲れたようにソファに深くもたれ掛かった。食べかけのプリンは、カラメルと混じってまだら模様になっている。
「謝るのは、私。戦争を止められなかった無力な私。すみません。本当に、すみません。」
身分の低い文官の斎さんに何ができたというのだろう。戦争を終えるための手続きを一手に引き受けていたから、殿下が連れて帰って来たんじゃないの?
分からない。
「いっそ、誰か酷く私を罵ってくれたなら。どうして、どうしてこんなに優しく生かしてくれようとするのだろう。」
斎さんの左手が顔を覆った。震える声が告げる。
「私は、帝国の罪を引き受けて死んでも構わないのに。」
「そ、それは、狡いってもんですよ。」
部屋に、広末の声が響いた。
「死ぬのは、逃げです。斑鹿乃のお父つぁんは戦争で死んで、おっ母さんもそれが原因で出ていって、そりゃ苦労してたけど、でも、もしお父つぁんの仇を見つけたとして、死んでもらっても何にもなりやしません。それなら、生きて働いてもらって賠償金をもらった方がよっぽど助かるってもんです。」
「広末……。」
「意地汚いって思ってもらっていいです。死んだら何にもできないんだから。生きることが辛いからって死んだら駄目だ。罪を犯したって言うんなら、それを悔いているなら尚更。」
広末は、一度止まって息を吸った。
「生きてこそ償えるんですよ!」
成人が俺の方を向いて、何か言っている。仕方なく耳から手を離す。
「力丸。俺、布団で寝てる。」
一つしか開いていない目が細くなって、笑顔を作る。
どうして、斎さんも生松先生も成人の前で俺にそれを教えたんだろう。
広末が、呆然と立ち尽くしている。
「布団で、寝てる?」
口を開いたら、涙が出てきた。格好悪い。
「俺、力丸と遊んでる。」
戦闘人形はしないことをしてるって言いたいのか。
「ごめんね。」
何を謝っているのか分からない。お前は、そう育てられただけじゃないのか?いや、作られた?……違う。そんなことを考える自分が嫌だ。
斎さんが疲れたようにソファに深くもたれ掛かった。食べかけのプリンは、カラメルと混じってまだら模様になっている。
「謝るのは、私。戦争を止められなかった無力な私。すみません。本当に、すみません。」
身分の低い文官の斎さんに何ができたというのだろう。戦争を終えるための手続きを一手に引き受けていたから、殿下が連れて帰って来たんじゃないの?
分からない。
「いっそ、誰か酷く私を罵ってくれたなら。どうして、どうしてこんなに優しく生かしてくれようとするのだろう。」
斎さんの左手が顔を覆った。震える声が告げる。
「私は、帝国の罪を引き受けて死んでも構わないのに。」
「そ、それは、狡いってもんですよ。」
部屋に、広末の声が響いた。
「死ぬのは、逃げです。斑鹿乃のお父つぁんは戦争で死んで、おっ母さんもそれが原因で出ていって、そりゃ苦労してたけど、でも、もしお父つぁんの仇を見つけたとして、死んでもらっても何にもなりやしません。それなら、生きて働いてもらって賠償金をもらった方がよっぽど助かるってもんです。」
「広末……。」
「意地汚いって思ってもらっていいです。死んだら何にもできないんだから。生きることが辛いからって死んだら駄目だ。罪を犯したって言うんなら、それを悔いているなら尚更。」
広末は、一度止まって息を吸った。
「生きてこそ償えるんですよ!」
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