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第二章 人として生きる
69 緋色 37
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消防車の音がし始めた。
王城の警備隊の車も、装甲車を囲むようにして停まる。
うちの屋敷に異常があれば報せが行くようになっている。王城から駆け付けたのだろう。
「遅い」
近付いてきた責任者らしき男へ言うと、膝を付いて左拳の上に右手を置き、その手を掲げて頭を下げた。
「第一警備隊大隊長、正宗義藤と申します。緋色殿下。ご不便をお掛け致しまして、申し訳ございません。とりあえず皆様は、王城へ避難されることを進言致します」
「手近な屋敷は空いておらぬか」
「朱実殿下からの直言でございます。先ずは、王城へお越しくださいますようお願い致します」
「離宮は?」
「城の敷地内に一つ空いてございますが、手入れが必要最低限しかなされておりません」
「そこでいい。自分たちで整える」
「屋敷とは違い広大です。数人では難しいと存じます」
「ちっ。何処でもいい。屋敷を一つ寄越せ。城では、我らの料理を作る厨房も借りられぬだろう」
「城の厨房にも料理人は数多おりますれば、ご不自由はお掛けしないかと思われます」
「お掛けするんだよ。特別な料理がいるんだ。作れるのはうちの料理人だけだ」
「お教え頂ければ、お作り致します。先ずは、皆様で王城へ。お連れ致しますことが私の役目でございます。どうか、ここはお聞き届け頂きたい」
成人がうとうとし始めている。後ろを振り向くと、乙羽も常陸丸の腕の中にいた。二条からの攻撃だと気付いて不安定になっているのかもしれない。
「仕方ない。先ずは、休めるところへ移る。立て」
「ありがとうございます」
ようやく礼を解いて正宗は立ち上がった。装甲車の前に転がされていた賊は、全員縛り上げられている。見知った顔は一つも無かった。
「二条朱空は死んだか」
「はい、昨晩でございます。よくご存知で」
乙羽の命も奪ってしまうこの攻撃は、もうそれを必要としていないことを示している。何故、乙羽のことを最後に残った、たった一人の跡継ぎとは思えないのだろうか。
そして朱木は、この時でさえ自分では来ないのだ。
どうしても理解できそうにない、との結論だけは出た。
最後に話すことができたら聞いてみてもよいのかもしれない。
王城の警備隊の車も、装甲車を囲むようにして停まる。
うちの屋敷に異常があれば報せが行くようになっている。王城から駆け付けたのだろう。
「遅い」
近付いてきた責任者らしき男へ言うと、膝を付いて左拳の上に右手を置き、その手を掲げて頭を下げた。
「第一警備隊大隊長、正宗義藤と申します。緋色殿下。ご不便をお掛け致しまして、申し訳ございません。とりあえず皆様は、王城へ避難されることを進言致します」
「手近な屋敷は空いておらぬか」
「朱実殿下からの直言でございます。先ずは、王城へお越しくださいますようお願い致します」
「離宮は?」
「城の敷地内に一つ空いてございますが、手入れが必要最低限しかなされておりません」
「そこでいい。自分たちで整える」
「屋敷とは違い広大です。数人では難しいと存じます」
「ちっ。何処でもいい。屋敷を一つ寄越せ。城では、我らの料理を作る厨房も借りられぬだろう」
「城の厨房にも料理人は数多おりますれば、ご不自由はお掛けしないかと思われます」
「お掛けするんだよ。特別な料理がいるんだ。作れるのはうちの料理人だけだ」
「お教え頂ければ、お作り致します。先ずは、皆様で王城へ。お連れ致しますことが私の役目でございます。どうか、ここはお聞き届け頂きたい」
成人がうとうとし始めている。後ろを振り向くと、乙羽も常陸丸の腕の中にいた。二条からの攻撃だと気付いて不安定になっているのかもしれない。
「仕方ない。先ずは、休めるところへ移る。立て」
「ありがとうございます」
ようやく礼を解いて正宗は立ち上がった。装甲車の前に転がされていた賊は、全員縛り上げられている。見知った顔は一つも無かった。
「二条朱空は死んだか」
「はい、昨晩でございます。よくご存知で」
乙羽の命も奪ってしまうこの攻撃は、もうそれを必要としていないことを示している。何故、乙羽のことを最後に残った、たった一人の跡継ぎとは思えないのだろうか。
そして朱木は、この時でさえ自分では来ないのだ。
どうしても理解できそうにない、との結論だけは出た。
最後に話すことができたら聞いてみてもよいのかもしれない。
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