【完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

31 成人 19

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 点滴は生松いくまつが外しにきて、俺にもお粥が出てきた。座らせてもらって、スプーンで食べてる。お水も、コップに入れてストローを差してくれた。お水ばっかり飲んでたら取り上げられた。お粥、三口で止まってたらスプーン取られて、口に運ばれる。もう、あんまりいらないんだけど。

成人なるひと、頑張って全部食べたらデザートあるぞ」

 デザートって何だ?

広末ひろすえがお前のために、美味しいジュース作ってくれたんだよ。飴より美味しいんだって」

 ジュース。飴より美味しいものは無いけど、オレンジジュースは、同じくらい美味しいんだよねー。飲みたい。

「はい、あーん」

 仕方なく口を開く。ジュース。ジュースのために。

「で、それが戦闘人形ドールか」

 ソファで優雅に昼ごはんを食べている朱実あけみ殿下が言った。緋色ひいろは俺の横に椅子と小さいテーブルを出して食べている。

「いや? 俺の嫁」
「……常陸丸ひたちまる、説明しろ」
「はあ? 勘弁してくださいよ。知りませんよ、俺だって」
 
 朱実あけみ殿下の護衛が銃を取り出す気配がしたな、と思ったら常陸丸ひたちまるに腕を捻られて制圧されてた。うん。強い。

「あ、すみません。つい」
「貴様、不敬の上に暴行か」

 護衛の人がすごい怒ってるけど、常陸丸ひたちまるの手を外せず押さえられている。

「いや、銃を取り出す気配がしたので、つい」
「最強が更に強くなってるじゃないか、怖い怖い。大人しくしてろ、由狩ゆかり。この部屋に、お前が勝てる相手は一人もいない」
「は?」
「そこのお嫁ちゃん、常陸丸ひたちまるより反応速かったからね。緋色ひいろに敵意向けたら、動くよ。話が進まないから諦めてじっとしてて」 

 もう、ご飯いらない。無理。デザートとやら、諦める……。
 ふいっと顔をそらすと緋色ひいろが溜め息をついた。スプーンを置いて自分のご飯を食べ始める。

「左手の指輪、何かのカモフラージュかと思ってましたよ。まさか、成人なるひととお揃いだったとは」
求婚プロポーズされたからな。受けたんだよ。二人で誓いは立てた。だから、成人なるひとは俺の嫁」

 ご飯食べたら疲れた。座った姿勢から寝る姿勢になろうと、ベッドの上でずりずり動いていると緋色ひいろに捕まった。抱っこで、ソファに移動する。膝の上に座らせてジュースの入ったコップをくれた。
 いいの? ご飯残したけど、いいの?

「飲んでいいよ。こっちの方が栄養あるしな」

 オレンジジュースより色が白っぽいトロリとした液体は、俺がこれまで飲んだものの中で一番美味しかった。
 何これ。何これ。
 美味しーい。
 神様の飲み物なんじゃない? 色んな味がする。甘いねー、いいねー。

広末ひろすえ特製ミックスジュースだ。バナナとオレンジとリンゴと牛乳が入ってるんだと。ちゃんと成人なるひと用に二回も濾したらしいぞ」

 今日も幸せ。
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