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第二章 人として生きる
8 緋色 10
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常陸丸が生松を連れて戻ってきた。
「成人に、結婚のことをなんて教えたんだ?」
「一番好きな人と、これから先の人生を共に生きる誓い、と教えました」
「…………。合ってるな」
少し考えた常陸丸が、唸るように呟く。
「合ってるわ。……なるの一番好きな人は緋色さまで、これから先離れる気は無いんだもの」
「どうされたのです?」
疲れた顔で、生松が聞く。医師免許の試験日が近いから、ろくに寝ていないのだろう。
「成人が緋色さまと結婚するって言ったんだよ」
「……ははあ。……説明したとき、うっとりしてましたね、そういえば。幸せそうに」
そうして、成人を見る。今も、幸せの極地にいるぞ、飴で。
締まりのない顔をして、口の中の飴に夢中だ。
相変わらず口の端からこぼれてくる涎を、べろっと舐めてみる。……甘い。
取られたような気がするのか、むーむー言いながら顔を反らそうとするが、右手は服を掴んだままだ。
「いいんじゃないですか? 緋色さまがいいのなら」
「よくないだろ。ちゃんと教えろ」
「お任せします。私の思う結婚は教えたので。違うと言うなら、常陸丸さまが訂正してください」
くあ、と欠伸をかみころして、生松が出ていこうとする。
「生松。飯は、しっかり食え。医者が体調崩すなんて、笑い話にもならん」
「とりあえず、寝ようかと」
成人を抱いたまま立ち上がり、冷蔵庫からゼリー飲料を取り出した。
「せめて、これだけでも腹に入れろ」
「ありがたく頂きます」
近付いてくる生松にようやく気付いた成人が、ゼリー飲料を見て嫌そうに顔を背けた。
「これは、嫌いか。帝国にもあるのか、これ」
「軍の携帯食料がその形です」
斎の声がした。
「嫌なことを思い出すのか」
「それもあるのでしょうが、単純に不味いです。ずっと戦場にいたなら、そればかり食べていたのでは?」
道理で、味のほとんど無いお粥も、美味しそうに食うわけだ。今は、飴で幸せいっぱいだしな。
「成人。お前、戦場に何年いたんだ?」
ふと、気になって尋ねる。しがみついていた右手が離れて、指が三本立てられた。どこか誇らしげに、成人は笑った。
まさか、三年?!
「成人に、結婚のことをなんて教えたんだ?」
「一番好きな人と、これから先の人生を共に生きる誓い、と教えました」
「…………。合ってるな」
少し考えた常陸丸が、唸るように呟く。
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「どうされたのです?」
疲れた顔で、生松が聞く。医師免許の試験日が近いから、ろくに寝ていないのだろう。
「成人が緋色さまと結婚するって言ったんだよ」
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そうして、成人を見る。今も、幸せの極地にいるぞ、飴で。
締まりのない顔をして、口の中の飴に夢中だ。
相変わらず口の端からこぼれてくる涎を、べろっと舐めてみる。……甘い。
取られたような気がするのか、むーむー言いながら顔を反らそうとするが、右手は服を掴んだままだ。
「いいんじゃないですか? 緋色さまがいいのなら」
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くあ、と欠伸をかみころして、生松が出ていこうとする。
「生松。飯は、しっかり食え。医者が体調崩すなんて、笑い話にもならん」
「とりあえず、寝ようかと」
成人を抱いたまま立ち上がり、冷蔵庫からゼリー飲料を取り出した。
「せめて、これだけでも腹に入れろ」
「ありがたく頂きます」
近付いてくる生松にようやく気付いた成人が、ゼリー飲料を見て嫌そうに顔を背けた。
「これは、嫌いか。帝国にもあるのか、これ」
「軍の携帯食料がその形です」
斎の声がした。
「嫌なことを思い出すのか」
「それもあるのでしょうが、単純に不味いです。ずっと戦場にいたなら、そればかり食べていたのでは?」
道理で、味のほとんど無いお粥も、美味しそうに食うわけだ。今は、飴で幸せいっぱいだしな。
「成人。お前、戦場に何年いたんだ?」
ふと、気になって尋ねる。しがみついていた右手が離れて、指が三本立てられた。どこか誇らしげに、成人は笑った。
まさか、三年?!
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