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第二章 人として生きる
4 緋色 8
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斎が右耳を触ったのを見て、そういえば、と気付く。
「帝国人は、皆ピアスを付けているのだな。左だけなのか? 成人は、付けていたか?」
「生まれたときに、国から支給されたピアスを左耳に付けます。結婚するときに、相手から贈られたピアスを右耳に付けます。戦闘人形も帝国人であれば、左耳にピアスはあるかと思いますが」
ベッドを覗きにいくが、成人の左耳にはピアスは無く、小さな穴が塞がりかけで付いていて、そのまわりに傷痕が残っていた。
「ああ、前の怪我の時にふっ飛んだんだな」
そっと、寝ている成人に手を伸ばして左の耳たぶに触れる。穴があるなら、ピアスを買ってやるかなー。
……国から支給されたピアス?
「ピアスは、国から支給されて、全員付けるのか?」
「はい、そうですね。元々、幸せを祈って、親が子どもにピアスを贈る風習がありましたが、いつからか国から支給されるようになって」
「それか……」
「え?」
「受信機だ。ピアスが、指令の、受信機だ」
しばらく呆然とした後で、斎は震える手でピアスを外した。
「……確かに、確かに、そうです。ああ、そんな簡単な仕組みで、俺たちは操られて……、くそっ」
「調べさせてもらって、構わないか」
「是非、是非、お願いします」
「捕虜も皆、外させよう。……もう少し早く気付いていれば、帝都を灰にしなくてすんだものを。すまない」
「……いえ、気付いたところで、国民全員のピアスを外させるのは無理です。捕虜も、素直に外さないかもしれません。このピアスは帝国人の証。皇国の人間が言えば言うほど……」
斎は、操られることにこそ恐怖を抱いていたのですぐに外したが、それを外すことは、帝国人であることを捨てるような行為である。
戦勝国であることを利用して、命令して外させるとして、フォローが必要だろう。
これが外れていたのも、成人には良かったのだろうな。
そっと耳たぶを触りながら、早く目を覚ますように祈るしかできなかった。
「帝国人は、皆ピアスを付けているのだな。左だけなのか? 成人は、付けていたか?」
「生まれたときに、国から支給されたピアスを左耳に付けます。結婚するときに、相手から贈られたピアスを右耳に付けます。戦闘人形も帝国人であれば、左耳にピアスはあるかと思いますが」
ベッドを覗きにいくが、成人の左耳にはピアスは無く、小さな穴が塞がりかけで付いていて、そのまわりに傷痕が残っていた。
「ああ、前の怪我の時にふっ飛んだんだな」
そっと、寝ている成人に手を伸ばして左の耳たぶに触れる。穴があるなら、ピアスを買ってやるかなー。
……国から支給されたピアス?
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「それか……」
「え?」
「受信機だ。ピアスが、指令の、受信機だ」
しばらく呆然とした後で、斎は震える手でピアスを外した。
「……確かに、確かに、そうです。ああ、そんな簡単な仕組みで、俺たちは操られて……、くそっ」
「調べさせてもらって、構わないか」
「是非、是非、お願いします」
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戦勝国であることを利用して、命令して外させるとして、フォローが必要だろう。
これが外れていたのも、成人には良かったのだろうな。
そっと耳たぶを触りながら、早く目を覚ますように祈るしかできなかった。
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