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51 隠してほしい
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結局、シリル王太子殿下は、大勢の者が近寄ろうとすればするほど警戒を強め、護衛騎士に命じて、近くに寄ろうとする者の名前と用件を聞いて、納得してからでないと話をしないことにした。
その結果、近くに寄れるのはジャンとコンスタン、エクトルにジュストだけである。人々は、シャルルの側近候補が、全員そのままシリルの側近候補となったかのような光景に、首を傾げるしかできなかった。
ともあれ、日々は過ぎていく。二年生になる直前には、成績の良いシリル、コンスタン、ジュストのもとに生徒会役員になってほしいとの打診がきて、三年生になったら考えると逃げたりしたくらいで、大きな問題もなく一年が過ぎた。
しっかり食べて鍛えることができるようになったシリルは、今までの分を取り戻すように身長が伸びた。栄養が追い付けず体は細さが際立っていたが、鍛えているので筋肉はついている、美しい王子様のできあがりである。
その綺麗な顔は、令嬢たちが熱い視線を向けるほどに冷たさを増す。それもまた良いのだとか、誰にも甘い顔を見せないのだから安心だとか、様々な声が聞かれていた。
でれっでれですけどね。
遠巻きの令嬢たちを置いて貴賓室へ行くと、すぐにソファに座ってリュカに抱きつくシリルにジュストはため息をついた。
体格差が大きくなって、以前は小さめの少年二人が抱き合って寛いでいる様子だったのが、シリルがすっぽりリュカを覆って抱き締めているし、なんなら膝の上に抱き上げて書類を読んでいる時もある。リュカは、痩せすぎだった体に少し肉がついて丸みを帯びてきたけれど、身長はそれほど伸びず、学園の令嬢たちと比べても小さいくらいのままだった上、美人に磨きがかかってきた。
シリルはまったく遠慮が無くなり、貴賓室で甘い眼差しを隠す気も無さそうだ。リュカの方は、シリルにされるがままで、抱き締められても気持ち良さそうに寄り添って、自分の手は、ただ下ろしてあったりシリルの背中に軽く回っていたり、寄せられる温もりを喜んでいるように見える。
学園の休みに手伝いにいく宰相府で、シリル殿下に気になるご令嬢はいそうですか、と聞かれるたびにリュカと答えそうになるのだ。宰相は、そろそろ王太子の婚約者を定めたいのだろう。政治的な判断の押しつけにならないように考えてくれているに違いない。
でも。リュカは、侍従だ。侍従というのは男である。
どんな事情か分からないが、リュカは男として殿下の側にいる女の子なのだろう、といつしかジュストは気付いていた。そして、シリル殿下はリュカが好きなのだろう、とも。それは、あまり良い未来に繋がる気がしない、気付きたくないことだった。
その結果、近くに寄れるのはジャンとコンスタン、エクトルにジュストだけである。人々は、シャルルの側近候補が、全員そのままシリルの側近候補となったかのような光景に、首を傾げるしかできなかった。
ともあれ、日々は過ぎていく。二年生になる直前には、成績の良いシリル、コンスタン、ジュストのもとに生徒会役員になってほしいとの打診がきて、三年生になったら考えると逃げたりしたくらいで、大きな問題もなく一年が過ぎた。
しっかり食べて鍛えることができるようになったシリルは、今までの分を取り戻すように身長が伸びた。栄養が追い付けず体は細さが際立っていたが、鍛えているので筋肉はついている、美しい王子様のできあがりである。
その綺麗な顔は、令嬢たちが熱い視線を向けるほどに冷たさを増す。それもまた良いのだとか、誰にも甘い顔を見せないのだから安心だとか、様々な声が聞かれていた。
でれっでれですけどね。
遠巻きの令嬢たちを置いて貴賓室へ行くと、すぐにソファに座ってリュカに抱きつくシリルにジュストはため息をついた。
体格差が大きくなって、以前は小さめの少年二人が抱き合って寛いでいる様子だったのが、シリルがすっぽりリュカを覆って抱き締めているし、なんなら膝の上に抱き上げて書類を読んでいる時もある。リュカは、痩せすぎだった体に少し肉がついて丸みを帯びてきたけれど、身長はそれほど伸びず、学園の令嬢たちと比べても小さいくらいのままだった上、美人に磨きがかかってきた。
シリルはまったく遠慮が無くなり、貴賓室で甘い眼差しを隠す気も無さそうだ。リュカの方は、シリルにされるがままで、抱き締められても気持ち良さそうに寄り添って、自分の手は、ただ下ろしてあったりシリルの背中に軽く回っていたり、寄せられる温もりを喜んでいるように見える。
学園の休みに手伝いにいく宰相府で、シリル殿下に気になるご令嬢はいそうですか、と聞かれるたびにリュカと答えそうになるのだ。宰相は、そろそろ王太子の婚約者を定めたいのだろう。政治的な判断の押しつけにならないように考えてくれているに違いない。
でも。リュカは、侍従だ。侍従というのは男である。
どんな事情か分からないが、リュカは男として殿下の側にいる女の子なのだろう、といつしかジュストは気付いていた。そして、シリル殿下はリュカが好きなのだろう、とも。それは、あまり良い未来に繋がる気がしない、気付きたくないことだった。
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