上 下
73 / 89

生配信28 師匠vs弟子 Part1

しおりを挟む
「今日もゲーム配信。配信者はお馴染み、Takiチャンネルの滝です」

『お疲れ様』
『お疲れ』
『じゃあ、また夜配信で』

「はい、じゃあみんな夜配信で』

 俺は配信の枠を閉じた。

 ………

 ……

 …

 そして、すぐさま新しい配信の枠を作り、

「この馬鹿リスナー! 面倒臭いことさせやがって!」

『したのはお前や!』
『人のせいにするな』
『さっき来たばっかりなのにすぐ終わった』
『人のせい?』

 馬鹿なノリをしたのは確かに俺だが、そうさせたのはリスナーさんたち、お前らだ!

 なんて言ったら、またなんか言われそうなので、何も言わずに配信を始める。

 今日プレイするゲームは、俺の好きな格ゲー『DOAデッド オア アライブ』。

 Twitterでも配信のサムネタイトルにもそう記載されているので、リスナーさん達も理解しているはず。

 今までの『DOA』と違うところは、というところだ。

 ここは説明せねば。

「ええ、今回は、配信の概要欄にも書いてある通り、リスナー参加型ではありません。今回は格ゲーに興味を持った人がいるらしく、その人とコラボするつもりです」

『サキサキさんでしょ?』
『サキサキさんも今説明してた!』
『サキサキさんなの?』
『サキサキさん、格ゲー上手くなるかな?』

 せっかくコラボする人をボカしていたのに………ネタバレするかね?

 そこは空気読んで、知らないふりしておいて欲しかったな。

「コメント欄に書かれているように! そうですよ! サキサキさんですよね! サキサキさんが俺の格ゲー配信見て、やってみたいんだって!」

『知ってるよー』
『怒ってるの?』
『サキサキさんです、って言いたかったんだろうな』
『残念だったなw』

 クソ、リスナーさん達は決して謝らないか。いつも通り、俺を弄って遊んでやがるな。

 流れるコメント欄に対して言いたいことは色々あるが、構っていたら配信時間が終わってしまうため、ここは我慢。

 時間は有限なので、そろそろサキサキさんを呼んでいく。

「あっ、お待たせしました」

「いえいえ、こっちもダウンロード、今終わったので!」

 サキサキさんは、今日が『DOA』初見プレイとなる。

 なので、まずは操作方法からだ。

 操作方法を教えたら、格ゲーマーの洗礼を受けてもらおう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「と、このように操作するわけですよ」

「なりほど。ガードばかりしていると、投げ技で攻撃を受けると。単調なパンチやキックだとカウンターを受けると」

「そうです、弟子よ」

「カウンターのタイミングが難しいです、師匠」

「慣れなさい」

「分かりました」

 俺とサキサキさんだけのロビーマッチを作り、操作を教える。その小1時間、それぞれ相手のことを「弟子」「師匠」と呼び合い楽しんでいた。

 その光景は、リスナーさん達からも好評のようで、

『調子に乗んな!』
『そこの席変われ!』
『俺は教えたほうが強くなるわ!』
『いや逆に俺も弟子になれば、お姉ちゃんと呼べるのでは?』

 コメント欄には罵詈雑言が流れている。

「頭沸いてんのか、リスナーどもよ。これが友達という席に座っている俺の権利よ。弟子は1人で十分。帰りな!」

 ミュートにして、サキサキさんに聞こえないように暴言を吐く。

『ちょっと対戦しようや!』
『ロビーマッチしようや』
『その性格の悪さ叩き直してやるよ』
『オレ、オマエ、ヤッテヤル』

「やりません。私は、サキサキさんと遊ぶんですぅううううう!」

 さあ、煽りに煽ったところで、

「弟子よ、ちょっと戦ってみますか」

「了解です、師匠!」

 今度は軽く格闘をしてみる。

『あとで殺す』
『Twitter荒らす』
『燃やしてやる』
『コメント欄はもう燃えてるけどね』

 まずはキャラを選ぶところから、サキサキさんには初めてもらう。

 操作方法の時使ったキャラは、お互いにティナというキャラを使った。

 このキャラは女性プロレスラーで、俺がよく使っているキャラだ。

 技を熟知している分、教えやすかったのでこのキャラを使ったのだが、今回は、

「ぱっと見で使いたいキャラ使っていいですよ」

 サキサキさんの使いたいキャラを使わせようと思う。

「そうですね。この人は綺麗な人で使ってみたいし、ああ、この子可愛い! どれもいいな」

『DOA』はどのキャラも魅力的なので、サキサキさんの気持ちが痛いほどわかる。

「あっ、この子、日本人なんですね」

「そうですよ。その子は空手が格闘スタイルですね」

 サキサキさんが選んだキャラは『ヒトミ』というキャラで、言った通り空手の使い手。

「この子にしようかな。可愛いし、強そうだし」

 そう言い、キャラを決め、いよいよ対戦。

「まずは、適当に攻撃してきてください」

 最初は連打の練習。

「こう、こう、こう!」

 ガードやカウンターをせずに素直に受ける。

「その連打は、これくらいダメージが入るので、覚えていてくださいね。大体でいいんで」

「おっす!」

 空手のキャラを使っているからか、サキサキさんの返事が空手家みたいなる。

「今度は上下に動かしながらとか、パンチとキックを織り交ぜながら攻撃してきてください」

「うっす!」

 サキサキさんのサンドバッグになってあげていると、俺の体力ゲージが無くなり、1ラウンド目は負ける。

 2ラウンド目も同様に、動かないサンドバッグになり、攻撃方法を覚えてもらう。

 このままだと、1ゲームがすぐに終わってしまうため、サキサキさんに次の課題を与える。

「こう、こう、こあああああ!」

 さっきと同様に、パンチの連打攻撃をするサキサキさん。連打攻撃を止めるように、俺がカウンターを入れていく。

「単調な攻撃は、カウンターが入れやすいんですよね。なので、こうやって」

 上段攻撃、中断攻撃、下段攻撃を織り混ぜて攻撃していく。

「こうすれば、相手に読まれることなく攻撃することができます」

 本当はちゃんとした技名のあるコンボを教えてあげたいんだが、今のサキサキさんには難しそうなので、普通の攻撃にも種類があることを教えてあげる。

「なるほど。じゃあ、これなら!」

 パンチの攻撃にキックの攻撃を混ぜて攻撃してくるが、

「それは、全部が中段の攻撃なんで、タイミングさえつまめれば「ああああああ!」こうなります」

 カウンターを入れていく。

 サキサキさんの攻撃にカウンターをどんどん入れていくと、サキサキさんの体力ゲージが0になり、1ラウンドを取り返すことができた。

「なるほど、奥深いですね。格ゲーは」

 格ゲーを楽しんでもらえているみたいなので、とても嬉しい。

「今度は、相手の攻撃に合わせてガードやカウンターを入れてみましょう」

 今度はこっちが攻撃する番。

「あっ、ちょっ、んあああ!」

 カウンターはタイミングが命。

 カウンターのタイミングが合わなければ、一方的に殴られる。

 体力が減って、カウンターよりもガードをしてくるサキサキさん。

 なので、

「ガードをしすぎると」

「ああああああ、やめて!」

 投げ技がくる。

 ティナはパンチやキックよりも投げ技の方がダメージは大きい。

 タイミングが掴めないサキサキさんは、パンチの餌食となり、もう1ラウンドを落としてしまう。

 これでお互いに2勝2敗。

 最後のラウンドもサキサキさんには、カウンターやガードの練習をしてもらう。もちろん、初心者のサキサキさんは、

「………負けまし」

 無しすべなく、ラウンドを落とし、1戦目は俺が勝ってしまった。

 まだまだ始まったばかりの格ゲー練習。

 サキサキさんはまだやる気はあるだろうか、心配していると、

「でも、ヒトミちゃん可愛いので、極めたい! 師匠、もう1戦!」

 声のトーンはまだ大丈夫そう。

「よし、じゃあ、もう1戦行きますか」

 サキサキさんとの練習はまだまだ続けられそう。

 配信時間はまだ全然あるので、練習を続けていく。
 

 







 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

翠名と椎名の恋路(恋にゲームに小説に花盛り)

jun( ̄▽ ̄)ノ
青春
 中2でFカップって妹こと佐藤翠名(すいな)と、中3でDカップって姉こと佐藤椎名(しいな)に、翠名の同級生でゲーマーな田中望(のぞみ)、そして望の友人で直球型男子の燃得(もえる)の4人が織り成す「恋」に「ゲーム」に「小説」そして「ホットなエロ」の協奏曲

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...