上 下
47 / 89

生配信18 夜配信まであと1時間!

しおりを挟む
「あああ、楽しかった。やっぱり暇潰しには聡太さんだな」

 昼配信が予定より早く終わり、暇になった俺は、聡太さんの家に突撃した。突撃した俺を優しく迎え入れてくれた聡太さんは、親友通り越してマジ神。

 まあ、迎え入れてくれるまで時間はかかったが。

「さて、夜配信まであと1時間」

 現在22時。夜配信は予定通り、23時に行う。

 この1時間は何しても良い時間だ。

「さてさて、何をするかな」

 長くもあり短くもある1時間。

 何をするか考えていると、スマホに通知が来る。

「サキサキチャンネルが配信を始めた、と」

 良いタイミングの通知。1時間は暇なので、少しお邪魔させていただこうかな。

 俺はスマホの通知に触れ、スマホからサキサキさんの配信にお邪魔する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『じゃあねぇ。今日は『テトリス』をしていこうかな』

 サキサキさんの今日の配信は、テトリス配信。配信画面にはテトリスのホーム画面が映し出されている。

 テトリスか。あれ、結構頭使うんだよな。

 サキサキさんがこれからプレイする『テトリス』とは、一種のパズルゲームだ。

 どんなゲームかと言うと、上方から落ちてくる『テトリミノ』と呼ばれる様々な形をしたブロックを、回転させたり、落ちてきたままの状態で落とし、画面の底に、隙間なく横1列に並べるゲーム。

 横1列に並べたブロックは、その1列ごと消えていき、どんどん底に並べることができる。

 もちろん、ブロックを並べる枠は決まっており、上手く横1列に並べることができず、枠の中からはみ出した場合はゲームオーバーとなってしまう。

 1人で出来るゲームでもあり、複数人と対戦形式で出来るゲームでもある。

 今回は1人用だが、そんなパズルゲームを、あのサキサキさんがやるのだ。

「見ものだな」

 こう言ったら性格悪いとか言われそうだが、どう失敗するのか見てみたい。

『テトリスは初見なんだけど、色々動画見てきたから大丈夫。できる』

 そうサキサキさんは宣言し、テトリスが始まる。

『まずは、枠の右半分側にブロックをどんどん積んでいくでしょ』

 サキサキさんは、言った通りに枠の右側きっかりに積んでいく。

 俺的には半分というよりか、3分の2程度積んでも良いと思っている。

『半分くらいを上枠上限ギリギリまで積んだら、あとはもう半分を積む』

 反対の左側にどんどん積んでいき、1列2列と消していく。

 右側に貯金していたブロックが段々と無くなると、

『ブロックが無くなった右側、また貯めるんよ。どうよ、初見にしては上手くないか⁉︎』

 また貯金を作っていく。

 ちまちまとした作業のようなゲームなのだが、その作業がまた面白い。

 コメント欄ではどんな反応しているのか気になり、コメント欄を表示すると、

『初見とは思えないです』
『なかなかやるやん』
『ちゃんと予習した成果が出てる』
『このまま頑張って!』

 応援のコメントが多数送られてきている。でも、中には、

『Tスピンって知ってる?』
『Tスピンやると良いよ』
『その積み方なら素人でも出来るべ』

 と、応援以外のコメントもきている。

 素人でも出来るって、サキサキさんは素人なんですよ。あと多分だけど、サキサキさんTスピンとか知らないと思う。

 始めたばかりの人はTスピンといった技術は知らない。俺だって始めたばかりの頃はTスピンという技術知らんかったもん。

 まあ、案の定というか、やっぱりというか。

『Tスピンって何? Tの形のブロックが回せばいいの?』

 ちょうど落ちてきたTの形をしたブロックを、クルクル、クルクルと回している。

 そんなサキサキさんに、リスナーさん達は呆れることなく、ちゃんと教えてあげる。

『そう! それがTスピン』
『出来てるじゃん!』
『うますぎ! そんな早くクルクル回せる人見たことない』
『クルクル回しながら積むと、3列一気に消える』

 嘘の情報を。

『本当! クルクル回しながら積めばいいのね!』

 リスナーさん達の言葉を信じたサキサキさんは、クルクル回しながら、左側にブロックを持っていく。

『よし、これで3列は貰いだぜ!』

 本当に信じ込んでるサキサキさんは、クルクルと回しながら、Tブロックを空いている場所に持っていく。

『あっ!』

 まあ悲鳴で分かる通り、適当にクルクル回しながら積んだものだから、Tブロックは変な風に置かれてしまう。

『あっ』
『あっ』
『あっ』
『あっ』
『あっ』

 そして、ここから落ちてくるブロックのスピードが速くなるわけだが、サキサキさんはそれに対応できるのか?

『おい、嘘じゃねぇか! ってか、落ちてくるスピード早くなってない⁉︎ チッ、このTブロック邪魔なんだけど! あっ、あっ、あああああ!』

 配信画面の中央にはゲームオーバーの文字が。

 これは仕方ない。

 嘘の情報を吹き込んだリスナーさん達と、嘘だと教えなかったリスナーさん達が悪い。

 悪いのだが、失敗を見たかった俺からしたら、ナイスコメント。

 ってか、予習したのではないのか、サキサキさん?

 さて、失敗したところを見れたので、俺もコメントしとく。

『どまw』
『どまw』
『これは仕方ない』
『Takiチャンネル : どまw』
『どまw』

 リスナーさん達と同じコメントを送り、少し様子を見る。

『はああ。Tスピンってあれ嘘? 嘘なら教えて欲しいんだけどって、滝くん! いたの!』

 流れるコメントの数々から俺を見つけられたらしい。

「最初から見てたよ。っと」

 最初から居たことと全てを見ていたことを教える。

『ねぇ、Tスピンって何? 滝くんなら知ってる?』

 Tスピンというテトリスの技術は知っているし、出来る。出来るが故に、サキサキさんに教えとく。

「初心者のサキサキさんには、まだ難しい。普通に並べられるようになってからにしなさい。っと」

 すると、

『いや、もう私、上級者だし! あれだけ積めれば、上級者だし!』

 自分は上級者だと勘違いしているサキサキさん。

 残念ながらあなたは初心者中の初心者ですよ。

「あんなミス、上級者はしない。初心者は黙っていなさい」

『はあ⁉︎ 誰が初心者じゃ! 見てろよ、これからすごいプレイを見せてやる!』

「すごい珍プレイを見せてくれんですかぁ? 見ものですな!」

『カチン! おい、その言葉覚えてろよ! 謝らせてやるからな』

 そう言い、再度テトリスを始める。

「見せてもらいましょうか、上級者さん!」

 俺は少し煽り文句をコメント欄に送信し、俺の配信時間が来るまで、サキサキさんの配信を見続ける。

 夜配信5分前まで見続けていたが、サキサキさんの言うすごいプレイは1度も見ることは出来なかった。しかし、珍プレイを何度も見せてくれたサキサキさんは、俺の期待に応えてくれた。なので、

「まあ、初心者は黙ってプレイしてな。あばよ!」

 俺はこのコメントを残して、スマホの電源を落とす。

 最後、「ちょ、お前」とサキサキさんが何か言いたそうだったが関係ない。

「さて、こっちもこっちで配信を始めようかな」

 俺は、サキサキさんの言葉を無視して、自分の配信に集中するのであった。




 


 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

翠名と椎名の恋路(恋にゲームに小説に花盛り)

jun( ̄▽ ̄)ノ
青春
 中2でFカップって妹こと佐藤翠名(すいな)と、中3でDカップって姉こと佐藤椎名(しいな)に、翠名の同級生でゲーマーな田中望(のぞみ)、そして望の友人で直球型男子の燃得(もえる)の4人が織り成す「恋」に「ゲーム」に「小説」そして「ホットなエロ」の協奏曲

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...