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生配信10 初めましてコラボ

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 掃除が終わり、サキサキさんのコラボに急遽参加することになった俺は、メッセージにて「準備完了」と送る。

 返信が返ってくるまで、絵茶チャンネルの視点で配信をみることにした。

「やっぱり、バトルロイヤルのFPSゲームは難しいですね。1位を狙うにはどうゆう動きをすればいいのか全然分かりません」

 俺の知らないキャラを使い、フィールドを走っていく絵茶さん。

 装備が弱く、残り部隊が19ということから、このマッチは始まったばかりだと分かる。

「バトルロイヤルは難しいよね。CPコンピューターじゃないから動きが読めないもん」

 まあ、確かに人とCPじゃあ、人との戦闘のほうが難しいよね。CPはプレイスキルとかないしね。

 サキサキさんと絵茶さんが建物を漁っていると、絵茶さんの近くから足音が聞こえる。

 敵の足音だ。

「んん? なんかこっちにいる⁉︎ 足音聞こえる⁉︎ 助けて!」

 しゃがんで物音を立てず、ジッと助けを待つ絵茶さん。

 サキサキさんに向けてのSOSのはずなのだが、

「シーッ。こっちにも足音聞こえる。敵がいると思う」

 残念ながらサキサキさんも敵に怯え、動けずにいた。

「どうしよう。野良さん助けてくれるかな?」

 このゲームは声で位置がバレるなんて機能無いはずなのだが、何故かサキサキさんは小声で喋りだす。

「どうだろうね。助けに来てくれるかな? 少し待ってみる?」

 待つ意味はあるのだろうか?

 エーペックスというゲームは、味方に敵の位置を教えることができる。壁越しの敵を透しては無理なのだが、だいたいの位置は教えることができる。

「あっ、野良さんが死んじゃった!」

 2人が隠れていると野良の人がダウンから確定キルされる。

 残りはサキサキさんと絵茶さん。

 さて、どっちが先に動くのだろうか。

「サキちゃん、私特攻するよ」

 先に動いたのは絵茶さん。

 扉を開け、野良さんの方に向かうと、

「あっ、私も死んだわ」

 敵3人が待ち構えていた。

 アーマーと体力が溶ける。

「私も行くから死なないで!」

 サキサキさんも扉を開け、外に出ると、

「ここにも敵いるんだけど!」

 どうやら絵茶さんのところに1部隊、サキサキさんのところに1部隊いるようだ。

 サキサキさんも倒され、部隊が壊滅。

 20位中18位と始まってすぐに死んでしまった。

 まあ、仕方ないわな。誰も近くに2部隊いるとは思わないもん。

 1ゲーム終わったようだし、合流していくか。

 絵茶さんの配信画面を切り、エーペックスを開くと、サキサキさんから返信が返ってくる。

『入ってきて!』

「よし、参加させてもらいますか」

 サキサキさんの部隊に参加する。足を引っ張んないようにしよう。

 サキサキさんのリスナーが怖いから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「滝君、きたぁああ! ボイス繋げます!」

 サキサキさんから通話の招待を貰い、参加する。

「どうも絵茶さん初めまして、滝です」

「ああ、初めまして! 絵茶です。サキちゃんからよく話を聞いてます」

 どうやらサキサキさんは絵茶さんを「えっちゃん」呼びしており、絵茶さんはサキサキさんを「サキちゃん」呼びしているらしい。

「ああそうですか。ちなみにどんな話を聞いたのか聞いていいですか?」

「えっちゃん! いいよ、そんな話!」

 どんな話か気になるが、サキサキさんに口止めされた絵茶さんは「じゃあ話しません」と、話してはくれなかった。

 あとで本人に聞くか。

「じゃあ始めますよ。滝君が先頭で走ってくださいね」

 準備完了をし、サキサキさんからの命令に従うことにする。

「分かりました。じゃあついてきてくださいね」

 俺はレイスというキャラを選択する。サキサキさんは衛生兵のライフライン。絵茶さんはお相撲さんのジブラルタル。

 飛行船から戦場に降り立ち、周囲に警戒をしながら物資を漁る。

「ウィングマンとプラウラー、ゲット!」

 同じ弾を使う武器だが、良い武器なのでこれを使っていく。
 
「そっちはなんか良い武器ありました?」

「こっちはありました! アーマーもいい感じです!」

 絵茶さんのところは物資が豊富らしく、アーマーは紫と強いお相撲さんと化す。

「サキちゃんは?」

 絵茶さんが声をかけるも、返事がない。

「サキサキさん?」

 フリーズしたのか心配するも、した形跡はない。

「どうしたんですかね」

「どうしたんだろ、サキちゃん」

 サキサキさんが降り立った場所に俺と絵茶さん2人で向かってみると、

「ああ、あれは敵ですかね」

「敵ですね。固まってますね、サキちゃん」

 部屋の角っこに隠れ、バレないように静かにしている。

「「………ほっとくか」」

「助けてよ! 見てないで助けて!」

 助けを乞われたからには仕方ない、行くか。

 俺が先行し、敵の後ろをつく。アーマーが弱かったおかげで、無傷で敵1人をダウン。

 俺の銃声で近づいてきた敵1人と撃ち合いになるも、これもなんとか勝てた。

 最後の1人は、と探していると、

「死ね、こら! オラオラオラ!」

 銃を乱射し、敵を倒す絵茶さん。

 俺と絵茶さんでサキサキさんのところにいる敵1部隊を倒して、なんとか救出する。

 2キルの俺と1キルの絵茶さん。キルしている間、サキサキさんは動けずにいた。

 ってか、今、絵茶さん死ねって言ってなかった?

 いいの? 女の子がそんなこと言って⁉︎

「よくやった、2人とも!」

 俺が驚いていると、サキサキさんは敵の持ち物をドンドン自分の物にしていく。

 少しは残してくれているかな、と期待したものの、やはりサキサキさん。

 物資を全て持ってかれていた。

「少し分けて下さい、サキサキさん!」

「いやだ! これは私の! 先に取ったもん! いやだいやだ!」

「駄々こねんな! さっきの戦闘何もしてないだろ! 少し分けろ!」

 敵の物資を持って逃走するサキサキさん。逃走するとサキサキさんに向けて銃を発砲する。

「きゃあああ! えっちゃん、滝君が撃ってくる!」

 お前が悪いんじゃ!

 銃声を鳴らし遊んでいると、

「もうサキちゃんが悪いんでしょ。仕方ないな、滝さんこれあげます」

 先程敵を殺す際に暴言を吐いていた人と思えないほど、綺麗な声で俺に物資を分けてくれる絵茶さん。

 優しい人だな。ええっと何をくれるんですかねぇ………スナイパーのスコープ? それとグレネード?

「………弾が欲しいんですけど。あとこれって、自分に入らないもの寄越してません?」

 絵茶さんの方に視点を合わせると、サキサキさんと一緒に明後日の方向に走り出していた。

「待て、デブ! 弾よこせ!」

「滝さんがデブって言った!」

「サイテー、女子にデブだなんて」

 悪ノリをするサキサキさんには、弾を浴びせる。

 きゃああああ、と俺から逃げる2人。

 バババババッ、バババババッ、バババ、カチッカチッ。

 んんん? あれ、マウスのボタン押しても弾が出ない。

 俺の画面にはリロードの文字が。

 あっ、

「弾無くなった」

 無駄撃ちしすぎた。

「「ざまぁあ」」

「こっのっ! この状態で敵きたら俺死にますからね」

「大丈夫です! 滝さん1人にして私達逃げるんで」

「バイバイ、滝君。頑張って逃げてね」

 このアマ2人が!

 2人が走って行く方向に、グレネードを投げつける。

 ボッンっと大きな音が戦場に鳴り響く。

 エーペックスというゲームにはフレンドリーファイヤー、味方殺しができないようになっている。

 もし出来るのなら、俺は容赦なく2人を殺すだろう。

 どうか、あの2人に天罰が降りますように。

 そう願って束の間、銃声と爆発音を聞きつけた敵が俺を殺しにきた。

「ちょ、ちょっと待って! 俺銃はあるけど弾ないし、装備も悪いし、物資もないよ! お願い殺さないで!」

 バトルロイヤルに命乞いは無駄。敵3人から弾を浴びせられ、俺は死んでしまう。

 人を呪わば穴二つというが、俺を先に殺すか?

 ………まあ、ほぼ棒立ち状態だったから殺すか。

 さてさて、サキサキさんと絵茶さんは?

 エーペックスは自分が先に死ぬと、仲間の視点を見ることができる。

 まずはサキサキさんから。

「………」

 ………うん。まあ、そうなるよね。

 サキサキさんはどこかの家に入り、角っこでジッとしている。

「敵と闘ってください、サキサキさん。助けはもう来ませんよ」

「えっちゃんが来てくれるもん」

 なるほど、絵茶さん頼りか。

 じゃあ、絵茶さん視点でも見てみるか。

 ………まあ、そうだよね。

「絵茶さん、サキサキさんが助けを求めてますよ。

「ごめんサキちゃん。私は1人で逃げるよ」

 絵茶さんは隠れることなく1人で遠くの方に逃げている。

「だそうですよ。サキサキさん」

 通話はしたままなので、お互いの声は届いている。

「えっちゃん、見捨てないで。行かないで」

「ごめん、自分の命可愛さに逃げるわ」

 逃走を続ける絵茶さんなのだが、絵茶さんはわかっているのだろうか?

 ジブラルタルというキャラは、おデブで身長が高い。そんなキャラが、走って逃げているのだ。

 見つからないはずはない。

 ババババババババッ! バンッ、バンッ!

「痛い痛い痛い! はああ⁉︎ なんで私を撃つのさ!」

 そりゃあ、周りの誰もおらず、1人で逃走しているんだから、「あいつ1人じゃね」みたいに思われて、狙うでしょ、敵さんも。

「そこらへんに、1人隠れてますよ! そいつを狙って下さい! 雑魚ですよ、雑魚!」

「はああ⁉︎ 敵さん、そのままあのおデブを撃ちゃって下さい。あーあ、良いデコイだわ」

「デコイだと! きゃああああ、死ぬ死ぬ!」

 まあ敵さんも、強いアーマー着てる絵茶さんを見逃すわけないよね。
 
 索敵よりも殺す方を優先するよね。

「ふっふっふっ、無理無理無理!」

 弾を避けるためにジグザクに走る絵茶さん。

「敵さん、もう後ろまで来てるんじゃないですか? 早くしないと死んじゃいますよ」

「他人事みたいに言わないでください、滝さん!」

 いやいや、他人事ですよ。だって、

「俺死んでますから、他人事ですよ」

「そうだった! きゃあああああああ」

 あーあ、敵に倒されちゃった。

「そのままキルされちゃいましたね。さて、サキサキさんはっと」

 サキサキさん視点に戻すと、絵茶さんが逃げていた方向とは逆の方向に逃げていた。

 これではまるで、

「ふふっ、まじで絵茶さんをデコイにしましたね」

 囮を使って自分だけ逃げる、みたいな光景が今俺の画面に映っている。

「はああ! サキちゃんいもってたんじゃないの?」

 今、絵茶さんの画面にもサキサキさんが逃げている映像が流れているだろう。

 ちなみに『芋ってる』とは、ゲーム用語で、建物に籠もっていることを指す。

「デコイよ、よくやった! 私は1人でも生きる」

 ははははははは、っと笑いながら逃げるサキサキさん。

 それに対して絵茶さんは、

「くやしいぃいいいい! サキちゃんより早く死んだし、何より仲間に裏切られたのが1番悔しい!」

 バンッ、バンッ、と台を叩いている。

 どんだけ裏切られてたのが悔しいのやら。ってか、絵茶さんも俺を裏切っているんだけどね。

 俺と絵茶さんは逃げるサキサキさん視点を見ていると、画面の端っこに人影らしきものが見える。

 俺の見間違いかな? いや、あれは絶対敵だよね、多分。

 サキサキさんはどうやら気づいていない。

 言うべきだろうか、言わないべきだろうか悩んでいると、前方から足音が聞こえる。

「ねぇ、前の方から足音聞こえない?」

 サキサキさんはその場でしゃがみ、俺と絵茶さんに聞いてくる。

 やっぱり敵がいたようだ。

 足音は見ているこちらにも聞こえている。

「そうで」

「いや、聞き間違いじゃない? ねぇ、滝さん?」

 そうですね、と答えようとした俺の言葉に、絵茶さんは否定の言葉を被せ、同意を求めてくる。

 どうやら絵茶さんはサキサキさんに囮として使われたことを根に持っているようだ。

 どうして根に持っていることが分かるのかって?

 だって、今TwitterのDMに絵茶さんから「黙っててください」ってメッセージが送られてきたからだ。

 もちろん、そっちの方が面白そうなので、俺もその嘘に乗っとく。

「気のせいですよ。さっさと逃げないと俺たちを殺した敵がやってきますよ」

 めっちゃ足音が聞こえる。もうそこまで来ているんじゃないだろうか。

「信じるよ、2人の言葉。めっちゃ足音らしきものが聞こえるけど、前に進むよ?」

「「ええ、進んでみてください」」

 俺らの言葉を信じたサキサキさんの運命は定まった。

 死という結末に。

 サキサキさんは立ち上がり、前方に向け走り出す。

 サキサキさん視点の画面には、遮蔽物がいくつかある。多分だが、どこかの遮蔽物の後ろに1部隊が隠れていて、待ち伏せをされている。

 さて、待ち伏せしている敵と接敵したときのサキサキさんのリアクションはどんなもんなのか?

 3、2、1、Q!

 サキサキさんが敵のいそうな遮蔽物に向けて走って行き、そして、

「キャああああああああああ!」

 音割れがするほどの悲鳴を上げ、敵3人にめった撃ちにされる。

「「ははははははははは」」

 アーマーとHPが瞬時に溶けていき、画面に部隊全滅の文字が。

 俺と絵茶さんはサキサキさんの運命に笑う。

「嘘つき! 最低! 外道!」

 なんか言っているが、聞こえない。

「やっぱり足音聞こえてたじゃないですか⁉︎」

 サキサキさんの文句に、絵茶さんが一言。

「仮に足音聞こえてるって知らせるじゃない? サキちゃんは逃げ切れたの?」

「………」

「ねぇ、サキちゃん?」

「……………無理」

 無理なのか、無理だよな。

 全滅した俺たちは、ロビーに戻り、

「じゃあ、次行きましょうか」

 気持ちを入れ替え、次の戦闘に向かう。

 次からはちゃんと先頭をきって、戦おう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「だから、なんで全部物資持ってくんですか⁉︎」

「私のだから! 誰にもあげない!」

「仕方ないな。これを」

「スコープとグレネードね。いらないって言ってんでしょ! 弾をください、サキサキさん、絵茶さん!」

「「いやだ!」」

 こういうやり取りを毎戦闘するのであった。もちろん、チャンピオンを取ることは出来なかった。
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