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Evo9 「魔法の意味」

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 初めは私を敵対視していたみたいなのですが、少しだけ思いが通じる様になった、遣いの滝野 雲影さん。

 でも雲影さんは、領土進出に現れたソフィーさんに打ち負かされてしまったのです。

 それを聞かされた私は怒りの感情をあらわにしてしまい、ソフィーさんと戦う事になってしまいました。だけど、ソフィーさんの実力は格が違い過ぎ、私は全くと言っていい程歯が立たず、惨敗してしまう事になってしまったのです。

 そして私は、アグリッタさんの城で1週間程治療を受ける事になっていたのでした。


「翡翠さん、身体の具合はどうだい?」

「……はい。大……分、良くなりました」

 ミルキさんの能力により身体の治療と、私の中に出来てしまった感情の濁りを浄化させて貰っていたのです。


「翡翠さん、動物は多かれ少なかれ感情持ち合わせているよね」

 アグリッタさんは、私に教えてくれました。人間に限らず、知能を持ち合わせている動物には喜びや悲しみ、嫌悪や驚きなどの感情があるのだと。

 しかしその中でも、特に人間による『怒り』 の感情は、本人のみならず周りの人にも、『負』 の気持ち抱かせてしまうのだそうです。

 例え戦いに勝利したとしても、相手を傷付けてしまえば、そこには虚しさが残ってしまうのだと。だからこそ、先ずは状況を良く判断し、何が正しく何を正さなければいけないのかを見極めなければいけないのだと、アグリッタさんは言っていたのでした。

 だけどもし、目の前で大切な人を相手の性で失ってしまった場合は、そんな理屈も吹っ飛んでしまう事になってしまうでしょう。


「アグリッタさん……私は……どうすれば良いですか?」

「……翡翠さんの、思いで戦えば良い。表面の出来事に惑わされず、心の奥にある真の叫びを解放すれば良いんだよ」

 私が望む願いは、皆んなの平和です。ならば、平和な世界を作るその為の戦い方をすれば良いのだと気付けました。

  ……と言っても、どこにでもいる極平凡な女子高生であった私には、直ぐに理解出来ない話だったのですが。ならば今は、己が正しいと思う行動をとれば良いのだと、少しだけ吹っ切れる事が出来ました。

 そして漸く自宅へと帰る事が出来た私は、翌日早朝から玄関前に立っていたのです。


「よ~し、やるぞっ。先ずは体力をつけなきゃねっ」

 本当の進化(成長) をする為に、私は先ず体力からつけて行こうと考えいたのです。

 魔力を極めて行けば、体力は然程必要ではないらしです。でも、精神力を鍛えるには、体力があるのと無いのでは格段に違うのではと思ったからでした。

 そしてアキナ君と共に、私は走り出したのですっ。


「翡翠、どこまで走るの?」

「今日は学校も休みだから、取り敢えず20km程走ろうかと」

 意気揚々と走り出した私。だけど、体育の授業以外で運動をした事がない私は、2km程走ったところでギブアップしてしまいました……。

「う~ん……これは思っていた以上にアレだね」

「すみません……。少しずつ距離を増やします……」

 その後、私は毎朝のマラソンを日課にし、体育の授業も積極的に出席する様になって行きました。そして1ヶ月が過ぎた頃。


「翡翠、ボールが行ったわよ」

「了解です。それっ!」

 通常時であったのですが、アリスちゃんの強烈アタックボールを、私は見事受け切る事が出来たのです。

 そこで、その様子を見ていた魔美華ちゃんに、何かあったのではと絡まれる私だったのですが、内緒だと言いマラソンの事は黙っておく事にしました。

 でもそれにより、アリスちゃんにまで絡まれる事になってしまったのです。そこには3人の笑顔があり、こう言った何気ない状況が、平和その物の風景なんだなって思えて瞬間でした。

 そして私はこの平和を失う事の無い様、更なる特訓を開始したのです。


「翡翠、余り勧められない行動だけど、本当に良いんだね?」

「うん。こんにちは~、マリアさんいますか~?」

 そうなのです。私はまだ進出していない、マリアさんの領土に入れて貰う為、勝負を挑みに行ったのでした。


「あら、翡翠。まさかとは思いますが、私の領土に入りたいとでもおっしゃるのですか?」

「はい。それも兼ねて何ですけど……マリアさん、私と戦って下さい」

 私の言葉に唖然としてしまうマリアさんでした。そこで私は、ソフィーさんと戦った話をマリアさんにしたのです。

 その結果は完全敗北であった為、現在特訓しているのだと。そしてマリアさんも1度、ソフィーさんと戦った事があると聞いていた私は、特訓して貰いたいと頼んだのでした。


「まっ、まあ、私は遊んであげただけですわ。そんな事より、翡翠。貴女に確かめておきたい事があります」

「はい?」


 マリアさんは私にある質問をして来たのです。私は本当に神黒翡翠を手に入れ様としているのかと。当然、その問いに私は『はい』 と答えたました。

 そして私の願いは、神黒翡翠を使い平和な世界を創りたいのだとも告げたのです。

 でもマリアさんは、私が発した『平和な世界』 と言う言葉に、ほんの少しだけ癇に障っていた様でした。

 そんな事は、どんな膨大な魔力を使ったとしても、到底不可能な事だとマリアさんは知っていたからだそうです。


「翡翠、貴方は『魔法』 の意味を理解していない様ですわね」

「え? 私もそうですが、一般世界の人にとっては夢の様な力の事ですよね?」

 魔法を簡単に例えるならば、私の言った事は間違いではないのかも知れませ。だけど『魔法』 とは人間が考え出した術であり、決して『神の力』 では無いのだとマリアさんは言ったのです。

 私の願いである、一般世界の皆んなに平和をもたらすには、神でなければ叶えられない願いであるのだと。

 そして人は欲の塊であり、1つ願いが叶えばまた次の欲が生まれてしまいます。その欲全てを叶えてこそ本当の幸せを掴んだ事になるのだとも。

 だけど魔法の力では、それも私1人の行いでは不可能である事は明確であったのです。

 もし全ての人に魔法を与えられ、魔法の国に来る事が出来たのならば、まだ可能性はあるのかも知れません。でも現時点では魔術師になるか、私達の様に選定された者のみしか、非現実の世界を経験出来ないのだと、マリアさんは説明してくれたのでした。


「理解なさい、翡翠。人が泣く事や苦しむ事は、その人に与えられた宿命なのです。それを糧として生きて行く事こそ、人生なのですよ」

 マリアさんの言葉に、私は納得すると同時に少しだけ反論していました。例え宿命で辛い思いをする人がいたとしても、理不尽な事はあるのだと。そしてその理不尽を、良い方向に導いてあげる事は、絶対に出来る筈だと告げたのです。

 現実的なマリアさんの意見と、それでも苦しみを抱えている人達を救いたいと思う私の願い。どちらも正しい考え方だと思いたいのですが、私はソフィーさんとの戦いの中で薄々理解し始めていました。

 神黒翡翠を手に入れても、自分の願いは叶わないであろうと言う事を。

 だけどそれでも、私が魔術師の遣いとして選定された以上、決して諦めたく無い願いなのだと、歯をくいしばる事にしたのです。


「アユさん、この戦いは私が乗り越えなければいけない戦いなの。力を貸してっ」

「翡翠様。共に戦い、そして乗り越えましょう」


「奏でなさい、レ♯っ!」

 マリアさんは、私の甘い考えを打ち砕くべく戦闘を開始した様でした。そして、レ♯は『繊細な力』 を持つ能力であり、マリアさんがピアノの鍵盤を叩く動作をする事により、音を振動させ私にダメージを与え始めたのです。


「ぐっ、音が重くて痛い……」

「この程度の攻撃で動きが止まる様では、まだまだ精進が足りませんわよ。ド♯、翡翠を高揚させてあげなさい」

 ド♯は『高揚させる』 能力であり、この音を聞かされた私は身体中を熱くさせられ、更に動きが鈍くなってしまっていたのでした。


「ぐうう……」

「翡翠様、暑さ寒さも彼岸までですよ。一瞬に乗り越えましょう」

「アユさん……はいっ」

 彼岸まででは無いのでしょうが、アユさんが言った通りマリアさんは同じ攻撃に飽きてしまったらしく、次の魔法に切り替える事で、ド♯の能力から私は解放されました。


「翡翠様、今です。反撃しましょうっ」

「はいっ。エマリさん、来てっ!」

 エマリさんは『厄除け』 の能力を持ち、私と同化する事で、『破魔矢』 を武器として精製してくれたのです。


「翡翠姫、『魔』 を撃ち抜いて下さい」

「はいっ。行きますよ、マリアさんっ!」


 マリアさんは私の攻撃に対し、ドを奏で様としていました。ドは『落ち着かせる』 能力を持つそうなのですが、私はその音を聞く直前に矢を放っていた為、僅かな差でマリアさんを貫く事になっていたのです。


「なっ、この矢は……」

「マリア、エマリが精製した破魔矢は、その名の通りの能力があるんだよ」

 アキナ君が説明をしてくれました。破魔矢とは、魔を破壊する矢の意味を持つそうです。そしてその『魔』 とは、この世界で言う『魔力』 の事であったのでした。

 そして破魔矢に撃ち抜かれたマリアさんは、数分の間魔力を使えない状態になってしまっていたのです。


「……ソフィーは、この技を使わなかったですわ。翡翠、私の負けよ」 

 マリアさんはソフィーさんと戦った事で、私の用いる天使さん達の能力は、ある程度把握していたみたいです。

 だけど、今回私が使った破魔矢は、エマリさんですら初めて試みた能力であった様でした。


「翡翠姫なら、撃ち抜いていただけると信じていましたよ」

「エマリさん……」

 体力的にも、精神的にも少しずつだけど、成長してくれていると、私は少しだけ実感を持てました。だけど、まだまだ願いを成就させるには遠い道だと言う事も分かっています。

 そしてその後、私はマリアさんの案内で領土を探索する事になったのですが、やはり神黒翡翠を見付け出す事は出来なかったのでした。


「私も探しましたけど、見付かりませんでしたわ」

「そうですかぁ。そう言えばマリアさんは、神黒翡翠で何を願いたいんですか?」

 マリアさんは言いました。一般世界において、自分を超える演奏者に出会う為、神黒翡翠の力を使いたいのだと。

 マリアさん自身、魔法を使わなくても、トップと言える程の演奏者だそうです。でも、頂点に立つ者が故の願いなのでしょう。己を超える、ライバルの様な存在が欲しいとマリアさんは語ったのでした。


「大きな壁である程、嬉しいわですわね。その壁を乗り越えた時の嬉しさは、翡翠が今正に感じている気持ちなのですから」

 そしてマリアさんはアキナ君に、『これで恩は返ししましたわよ』 と告げ、一般世界に帰って行くのでした。

 マリアさんの願いは、己の為に神黒翡翠を使う事だったのですが、自身を向上させる願いもまた、素敵な行動理由だと思います。

 そして、私の学校にて。


「翡翠、何ニヤニヤしてんのよ? 気持ち悪いからやめなさい」

「まさかアレですか? 等々、悪い意味で覚醒しましたか?」

「魔美鼻ちゃんは真鬼女で、アリスちゃんは真悪女だと、日記に書き加えます」


 魔美華ちゃんとアリスちゃんに、からかわれてしまった私。でも、魔法の国で目まぐるしい一喜一憂を経験していた為、2人との会話は私に安らぎを与えてくれていたのです。

 そして放課後、私はアリスちゃんを連れ、雲影さんのお見舞いに行く事になっていました。


「そう。雲影がソフィーに」

「うん。あっ、領土に入れるみたいだよ」 

 私は雲影さんに1度勝利している為、結界を緩められていた様です。でもアリスちゃんは入れない筈なのですが、私と手を繋ぐ事により何とか入れたのでした。


「ゲロゲロ」

「あっ、大我慢君。元気になったんだね」

 大蝦蟇君は私達を乗せ、雲影さんの居場所へと案内してくれました。

 雲影さんが魔法の国でお世話になっている場所は『忍者屋敷』 と呼ばれいて、そこは忍者兼魔術師である初多理 半助さんの屋敷だそうなのです。


「ようこそ、我が屋敷へ」

「うおっ! どっから出て来たのよ?」

 驚くアリスちゃんを余所に、半助さんは私達を雲影さんの部屋へと案内してくれました。


「雲影さん、お身体の調子はどうですか?」

 雲影さんは少し情けなさそうに、見ての通りでござると、ソフィーさんに付けられた傷を披露し始めたのです。

 そして私がソフィーさんと戦った事を噂で知っていた雲影さんは、その件について聞いて来る事になりました。私はその事をアリスちゃんには黙っていたのですが、完全敗北であった事を雲影さんに説明したのです。


「何それ? いつの間によ、翡翠?」

「ちょっと前にね」

 私は照れ笑いで誤魔化しました。そこで半助さんもソフィーさんについて、私に質問して来たのです。

 私がアグリッタさんの遣いになる前は、ソフィーさんが遣いであった筈なのですが、何故入れ替わったのかと。だけど、その件に関しては私も詳しく聞かされていなかった為、答える事は出来なかったのです。

 でも、アキナ君に少しだけ聞いた話によると、ソフィーさんは我儘であった為、任を解かれたらしいと伝えました。そこで雲影さんが言葉を発したのです。


「我儘でござるか……確かにアヤツの戦い方は一方的であったな」

 戦いにおいて一方的に交戦出来ると言う事は、その人が優れているからであり、決して悪い事ではないのでしょう。私もその事に関しては、戦いの中で気付けたのですが、ソフィーさんの戦闘は全くと言っていい程、躊躇が無かったのです。


「翡翠、ソフィーと戦って、良く無事でいられたわね?」

「無事では無かったんだけどね」

 呆気にとられていたアリスちゃん。ソフィーさんは魔術師の遣いとして、上級クラスのレベルである事を、アリスちゃんはその身で経験していたからです。

 そして私は経験不足もさる事ながら、そんな相手に挑むなど無謀を通り越して、馬鹿のやる事だとアリスちゃんは言ったのです。


「まあ、こうして魔法の国に存続出来ているだけでも大したものよ」

「翡翠殿、いつかは我も含め、ソフィーと戦わなければいけない日が来るであろう」

 雲影さんは言いました。神黒翡翠を手にしたいのであれば、ソフィーさんを見習うのではないが、相手に情けを掛けてはいけないのだと。己の夢を叶えたいのであれば、戦いは避けられない所業なのだと教えてくれたのです。

「はい。何となくですが、理解出来ました。雲影さんにも負けませんよ。でも、それでも雲影さんは私の友達ですっ」
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