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冷静でいられない

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「最近機嫌悪くない?」


ご主人様が言う。


「……そんなとこないですよ…」


「敬語。」


「あ………、そんなことないよ……。」


「ふーん………、俺に隠し事?」


「かくしごと………」


違う、

隠してるのはご主人様だろ……


あの臭い…………


ずっと頭から離れない

鼻にこびりつくご主人様以外のにおい……


百合先輩と似てる臭い………




「おれは………、ない………」


「…………そっか。」


ご主人様はため息混じりの声を出してそっと俺の頭を撫でる


(ご主人様がどんな顔してるか……見れない……)


見たくない



「愛してるよ。」


「……………。え、」


突然の告白に俺は動揺する


愛してる、?


(そんな……俺が戴いてもいい感情なのか……?)

顔を見上げると感情の入ってない冷たい目。

人間じゃないような、人形のような


人間としての温かみがまるで感じられない。


(あ、これ………)


告白なんかじゃない。


そう思った瞬間、俺の髪の毛が強く引っ張られる


「い”っ?!……」


「愛してるから、裏切るなよ?」

「ぁ………、……」


若干キレ気味のご主人様にそう言われた俺は掠れた声で「はい……」としか言えない。



「………………………」



ご主人様がじーっと俺の顔を見る


(圧が怖い………)


俺になにか返答を求めているのか?

それとも俺は今、何か気に食わない顔でも……?




でもよく見ると



やっぱり麻耶と似てる美形双子………



「その察しの良さを他で使ってもらいたいな。」


「ッ”???!!!!」

突然


腹を蹴られた


「ごほっ………っぅ、え?」


なんで




「俺の顔見ながら他の奴のこと考えてた?」


「え………な……ん、で…、」


「ふーくんは分かりやすいんだよ。誰のこと考えてた?」


「だ、れのこと…………」

「早く言って。」

これは早く言わないと殺されそうだ………



「っ……ま……まやのこと……少しあたまに出てきた……」

「麻耶?なんで。」

「…、 ……やっぱり、似てるなって……美形双子だな……って………」







殴られるか?


嘘はついてない


だけど、ご主人様の反応がないから………





「麻耶と顔が似てる俺が好きなの?」


「…………え?」


「所詮は女の子か、……………。気に食わないな、」


ご主人様は近くに置いてあるカッターを手に取る



「俺の顔、好きって言ったのに……やっぱり麻耶なんだね。」


「まってっ!なにするの……?」


「他の女で上書きされるような俺の顔、要らない。」


待って



待て待て待て




待ってよ


俺が何を気に食わないこと言った?


まさか、麻耶のことで………死んだ双子の妹までにも嫉妬したのか……?




それで、




自分の顔を傷つけようと…………、



「やめろって!!!!」


俺は咄嗟にご主人様の腕を抑える


「離して。」


「離さねぇよ!!!」


カッターの鋭い先がご主人様の頬に向かう

やめて


自分で自分を傷つけないで


「麻耶で上書きなんてしてない!!ただ、本当にかっこいいって思っただけ!!そんな簡単に自分を傷つけるなよ!!!!!」


グッとカッターの先を掴む

(痛い………)

俺は若干睨んでご主人様を見上げる


ご主人様は…………、相変わらず冷たい瞳だ。











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