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後悔と…

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「梶原っ気持ちいよっはぁっ…!」

「ッ、………」

出されては殴られて、イっては殴られる。

「休憩してる時間なんてないよ。」

また体勢を変えた。
こんどは俺の片足を持ち上げて出し入れするんだ。

「身体柔らかいんだね。」

隼人はそう言ってまた殴った。
俺を殴れば殴るだけ興奮して、俺のナカが締まるらしい。

………………

何してるんだろ。俺。

なぁ、お前もそう思わないか?

「ね”えっ…どうしてっ君は俺を”責めるのっ?”」

「はぁ?何言ってるの梶原。薬の効果切れた?」

「おれっ死ねないよ”っ、思い出したくないよ”…っ」

「……あぁ。」

薄い視界の中、隼人は状況を理解したような顔で言った。

「”廣瀬麻耶”のこと?」

麻耶ちゃん?
麻耶、まや…

“廣瀬 麻耶”

『正っ解』

彼女はニヤリとした顔で俺を見つめる。

そして、鍵を開ける。

嫌だ、開けたくない。イヤダイヤダイヤダ

「梶原っ!!」

「あゔっゥ”!!!!!」

また、またナカに出された。
出された、



あれ、?

隼人がいない。
ここはどこ

『ふう。』

「あ…」

麻耶だ。

『ふう…ふう…どうしよ…ううっ…』

麻耶が泣いてる。
そうだ、麻耶は昔から泣き虫で。
大人の前ではいつも大人しくて華麗で可愛い麻耶。
そんな麻耶のことが俺は大好きで。

だから麻耶が泣いている状況をどうすればいいのか分からなくて、ただ頭を撫でることしかできなかった。

『私って駄目よね。雄斗のほうがしっかりしてるし、パパとママも雄斗のことしか見てない。』

………

“そんなことないよ。俺は麻耶が好きだよ。”

『そんなの嘘でしょ。知ってるよ。』

“ほんとだよ!大好きだよ!”

『……本当に?ならさ、こっち来て。』

“? 麻耶、どこ行くんだよ。”

『私のお部屋。』

“でももう帰る時間…”

『私のこと、好きなんだよね?』

麻耶は微笑みながら俺に聞いてきた。
顔は笑ってるのに表情は全然笑ってないというか、俺はそんな不自然な麻耶が怖くて、麻耶の言う通りに部屋に入った。

入った瞬間少し床がヌルヌルしていて滑りそうになった。
なんで床が濡れてるの?と聞こうとした時、麻耶が言った。

『どっちにする?』

渡されたのは包丁とマッチ。

もう床にかけてあるからマッチのほうがいいかな、と意味が分からないことを言ってる。

“これ、どうするの?”

俺がそう聞くと麻耶は真顔で言った。

『死ぬんだよ。』

…?

言葉の意味が理解できない。
まだ5歳だから?
それとも冗談?

“しぬってなに?”

俺がそう聞くと麻耶は俺からマッチを取り上げた。

ボッ”

マッチ棒に火がついた。

綺麗だなー、と少し見惚れる。

『私よりもマッチのほうが好きなんだ。』

火のついた棒を持ちながら俺のほうへ向かう。

“危ないよ”

『なんで?』

“やけどしちゃう。”

『火傷……』

『私のこと心配してくれるんだ…大好き。』

麻耶が笑った。
今日、初めて笑ってくれた。
俺もなんだか嬉しくて笑顔になる。

「何やってんの。」

後ろから声が聞こえる。

雄斗だ。

「なんで、え、は…?」

雄斗が固まっている。

当たり前だ。

麻耶は火のついたマッチを持っていて、俺は片手に包丁を握りしめているんだから。

『雄斗、どいて。』

麻耶が冷たく言う。

「危ないだろ。床も油か?これ。冗談じゃ済まない。」

ふーくん、行くよ。と雄斗が俺をひっぱる。”あ…”と俺が声を出すと麻耶は雄斗のこ睨む。

『なんで…?なんで私からふうを奪うの?』

「はぁ?」

『雄斗はお父様にもお母様にも愛されてて、先生にも、友達にもみんなに愛されてるのに私だけ誰にも愛されないで本当の私を見てくれなくて!』

『ふうだけは本当の私を見てくれて、好きって言ってくれるのに…どうしてまたあんたが私から宝物を奪うの…?!』

“泣かないで、麻耶、”

雄斗の力を振り切って俺は麻耶のほうへ向かう。
そして、頭を撫でる。

“大丈夫、大丈夫…”

崩れ落ちた麻耶は顔を上げる。
とても悲しそうな顔をしてる麻耶をなんとか笑顔にしようと何度も何度も頭を撫でる。

『ふう……』

彼女は俺の左手、包丁を持っている手にそっと手を置き、握りしめる。

そして、彼女は自分の腹部へ包丁を刺した。




「え…」



何が起こったのか分からない。
何かを刺した感触はある。
俺は目線を下にする。



包丁で、俺は麻耶を刺している。

状況が理解できない俺はそのまま固まる。

『心配っ、してくれないの…?』

麻耶が俺の頬に手を置いて、そっと言う。

『私と一緒に死んで。』

彼女はそう言ってマッチ棒を床に落とす。

その瞬間、ぼわっと炎が広がる。

『ほら、ふうも自分で刺して。』

“あ…や、まや…”

ふふっ、と麻耶は困った顔で笑う。

グイッ

背中を引っ張られた。
雄斗だ。

「逃げるよ!!」

“あ…まって、”

「包丁!持ってたら危ないから落として!」

雄斗が声を上げている。

包丁、あ…

燃える豪邸。
手には包丁。
目の前には血だらけの少女。

『なんで…?来て!戻ってきてよ!』

「だめだ!風!動かないで!」

俺は必死に雄斗の腕から出ようとする。
麻耶も助けないと、死んじゃう。

包丁で腹部を刺されているからか、痛みで立てないのか必死で俺を呼び止めてるけど俺はそれに応えられない、いや応えきれない。

ブワッ!

目の前が炎でいっぱいになった。
麻耶の姿がもう見えない。

“麻耶…麻耶、そんな…麻耶!!!!”

「ッ……」

麻耶は炎に取り込まれた。
死んだのか、そんな…

いやだ、いやだ…

『ふう…。』

炎の中から麻耶の声が聞こえる。
まだ生きてる。
早く助けないと

『私は死んでも、あんたが大好きだよ。』

その瞬間麻耶の悲鳴とパチパチと家具や部屋が燃える音が聞こえた。
俺は雄斗に引っ張られて、一度家を出た。

幸い麻耶の部屋はコンクリートでできていた為、炎が他の部屋に広がることはなかった。

だけど、

俺が麻耶を殺したんだ。

あんなに苦しんでた麻耶を俺は責任のない一言で壊してしまった。

助けてあげられなかった。

一緒に死んであげられなかった。

「まや!!!!!!!!!」

「っ、ビックリした…気絶したと思ったらまた急に目覚まして…」

「へ…」

広がる性液の匂いとバイブ音。

あ、現実か。

現実…現実…

さっき思い出したことも、………









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