2 / 2
召喚
しおりを挟む
星宮海斗は今、修学旅行で常夏の島にいる。
昼は海や景色を満喫し、夜になると星明りのもとでキャンプファイヤーが始まった。
夜とはいえ、常夏の島でキャンプファイヤーのような暑苦しいことを行うことは海斗にとって酷く不愉快なことだった。
キャンプファイヤーには参加せず、夜の道をビーチサンダルでペタペタと歩く。
巨大な篝火を囲い、輪になって手を繋ぎ歌う声が聞こえる。
キャンプファイヤーに参加していないのは海斗だけではなかった。
学校の不良たちもキャンプファイヤーに参加せず、海岸で酒を飲み騒ぐ。
「海斗くんっ」
クラスメイトの春川茜が声をかける。
「なんだよ」
「キャンプファイヤー、はじまってるよ?」
「いいよ、俺は」
「なんで?」
「暑いし。春川が参加したいなら行けば?」
「そっか、ならアタシもやめとく」
「あっそう」
海斗と茜は歩きながら話す。
二人は高くそびえる火山の近くを通った。
切り立った道を歩く。
「そういえば、パンフレットに書いてあったね」
「なんて?」
「この火山には、島を守護する精霊が棲むんだって」
「なにそれ、宗教?」
「うーん、宗教というか、神話というか、伝承というか」
「呼び込みだろ、観光の」
「身も蓋もないなあ」
二人は歩き続ける。
その間にもキャンプファイヤーでの歌声が響く。
≪異世界≫
「異世界の円陣を発見しました。接続します!」
神官たちが宣言した。
魔法陣と異世界の円陣を触媒に、世界を極めて限定的に交差させる。
女王は固唾を飲み、家臣は恐れおののく。
≪現世≫
『聞こえますか――人間よ――』
声がした。
「なんか言った?」
「え?なんだろ、この前ボールペン失くした話?」
「いや、そうじゃなくて」
『私と契約してほしい―――』
「ほら、今なにか声がした」
「どこから?」
『時間がありません――契約してください――』
空が光る。
満天の星空に暗雲が立ち込め、発光する巨大な円形の模様が浮かび上がる。
「なんか変じゃない?……怖い」
と茜。
暗雲は唸り、雷鳴を轟かせる。
波は荒々しく岸を打ちつけ、風が激しさを増す。
『――契約を結ぶと念じてください―――』
雷が島のどこかに落ちる。
海斗と茜以外の人々も、島の異変に不安を抱く。
キャンプファイヤーの広場――――。
「雨が降るんじゃない?」
「嵐になりそう」
「ホテルに戻ろう」
海岸―――――。
「なんかヤバくね?」
「バッカびびってんのかよ」
「フゥー!!」
曇天に浮かぶ魔法陣が禍々しい光を増幅させていく。
火山の付近――――。
『あなたに主導権を譲る――契約を――』
「契約って、なんの契約だ?」
海斗は声を返す。
「なに?海斗くん」
歩き続けていた茜は立ち止まり、立ち尽くす海斗に振り向く。
「声が聞こえるんだ」
「やめてよ、変なこと言うの」
『あなたに私の依り代を務めてほしい―――』
雷鳴が唸り、火山に落雷する。
崩れた岩石が茜の頭上に転がり落ちる。
「きゃあっ!」
茜は悲鳴を上げ、逃げようとする。
落石を一つ避けたが、つまづいて転ぶ。
そこへ第二、第三の落石が降る。
「茜!!」
海斗は駆け出し手を伸ばす。
「海斗くん……」
『私が力を貸します―――契約を――』
(なんでもいいから力を貸せ!!!)
海斗は心の中で叫んだ。
『ありがとう―――海斗さん―――』
落石が今、茜を押し潰そうとした時に島は光に包まれた。
その日、島から無数の人々が姿を消した―――――。
≪異世界≫
海斗と茜は手を繋ぎ、地面に倒れていた。
「……」
二人は目を覚まし、見つめ合う。
「よかった、無事だったんだな……!」
海斗は茜を抱きしめる。
「うん……」
茜も海斗を抱きしめた。
一体どれくらいの時間、そうしていただろうか。
目を閉じて抱きしめ合っていたが、あまりの静けさに目を開ける。
「なんだ、これ」
海斗がつぶやくと、茜も目を開けて異変を知る。
そこは先ほどまで二人がいた火山の近辺とは違い、平地だった。
日が沈み夜だったはずが、太陽は地上を照らしている。
空は青く、風に草木が揺れる。
「俺たち、死んだのか……?」
海斗は死後の世界を信じていないが、そう解釈したい気持だった。
「さっきまで、夜だったよね」
と茜。
「時間も場所も違う」
海斗は気持ちを切り替えて立ち上がる。
「人を探そう」
海斗と茜は歩き出す。
昼は海や景色を満喫し、夜になると星明りのもとでキャンプファイヤーが始まった。
夜とはいえ、常夏の島でキャンプファイヤーのような暑苦しいことを行うことは海斗にとって酷く不愉快なことだった。
キャンプファイヤーには参加せず、夜の道をビーチサンダルでペタペタと歩く。
巨大な篝火を囲い、輪になって手を繋ぎ歌う声が聞こえる。
キャンプファイヤーに参加していないのは海斗だけではなかった。
学校の不良たちもキャンプファイヤーに参加せず、海岸で酒を飲み騒ぐ。
「海斗くんっ」
クラスメイトの春川茜が声をかける。
「なんだよ」
「キャンプファイヤー、はじまってるよ?」
「いいよ、俺は」
「なんで?」
「暑いし。春川が参加したいなら行けば?」
「そっか、ならアタシもやめとく」
「あっそう」
海斗と茜は歩きながら話す。
二人は高くそびえる火山の近くを通った。
切り立った道を歩く。
「そういえば、パンフレットに書いてあったね」
「なんて?」
「この火山には、島を守護する精霊が棲むんだって」
「なにそれ、宗教?」
「うーん、宗教というか、神話というか、伝承というか」
「呼び込みだろ、観光の」
「身も蓋もないなあ」
二人は歩き続ける。
その間にもキャンプファイヤーでの歌声が響く。
≪異世界≫
「異世界の円陣を発見しました。接続します!」
神官たちが宣言した。
魔法陣と異世界の円陣を触媒に、世界を極めて限定的に交差させる。
女王は固唾を飲み、家臣は恐れおののく。
≪現世≫
『聞こえますか――人間よ――』
声がした。
「なんか言った?」
「え?なんだろ、この前ボールペン失くした話?」
「いや、そうじゃなくて」
『私と契約してほしい―――』
「ほら、今なにか声がした」
「どこから?」
『時間がありません――契約してください――』
空が光る。
満天の星空に暗雲が立ち込め、発光する巨大な円形の模様が浮かび上がる。
「なんか変じゃない?……怖い」
と茜。
暗雲は唸り、雷鳴を轟かせる。
波は荒々しく岸を打ちつけ、風が激しさを増す。
『――契約を結ぶと念じてください―――』
雷が島のどこかに落ちる。
海斗と茜以外の人々も、島の異変に不安を抱く。
キャンプファイヤーの広場――――。
「雨が降るんじゃない?」
「嵐になりそう」
「ホテルに戻ろう」
海岸―――――。
「なんかヤバくね?」
「バッカびびってんのかよ」
「フゥー!!」
曇天に浮かぶ魔法陣が禍々しい光を増幅させていく。
火山の付近――――。
『あなたに主導権を譲る――契約を――』
「契約って、なんの契約だ?」
海斗は声を返す。
「なに?海斗くん」
歩き続けていた茜は立ち止まり、立ち尽くす海斗に振り向く。
「声が聞こえるんだ」
「やめてよ、変なこと言うの」
『あなたに私の依り代を務めてほしい―――』
雷鳴が唸り、火山に落雷する。
崩れた岩石が茜の頭上に転がり落ちる。
「きゃあっ!」
茜は悲鳴を上げ、逃げようとする。
落石を一つ避けたが、つまづいて転ぶ。
そこへ第二、第三の落石が降る。
「茜!!」
海斗は駆け出し手を伸ばす。
「海斗くん……」
『私が力を貸します―――契約を――』
(なんでもいいから力を貸せ!!!)
海斗は心の中で叫んだ。
『ありがとう―――海斗さん―――』
落石が今、茜を押し潰そうとした時に島は光に包まれた。
その日、島から無数の人々が姿を消した―――――。
≪異世界≫
海斗と茜は手を繋ぎ、地面に倒れていた。
「……」
二人は目を覚まし、見つめ合う。
「よかった、無事だったんだな……!」
海斗は茜を抱きしめる。
「うん……」
茜も海斗を抱きしめた。
一体どれくらいの時間、そうしていただろうか。
目を閉じて抱きしめ合っていたが、あまりの静けさに目を開ける。
「なんだ、これ」
海斗がつぶやくと、茜も目を開けて異変を知る。
そこは先ほどまで二人がいた火山の近辺とは違い、平地だった。
日が沈み夜だったはずが、太陽は地上を照らしている。
空は青く、風に草木が揺れる。
「俺たち、死んだのか……?」
海斗は死後の世界を信じていないが、そう解釈したい気持だった。
「さっきまで、夜だったよね」
と茜。
「時間も場所も違う」
海斗は気持ちを切り替えて立ち上がる。
「人を探そう」
海斗と茜は歩き出す。
0
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」
パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。
彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。
彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。
あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。
元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。
孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。
「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」
アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。
しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。
誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。
そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。
モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。
拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。
ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。
どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。
彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。
※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。
※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された
ふぉ
ファンタジー
魔王の息子に転生したら、生後三ヶ月で魔王が討伐される。
魔領の山で、幼くして他の魔族から隠れ住む生活。
逃亡の果て、気が付けば魔王の息子のはずなのに、辺境で豆スープをすする極貧の暮らし。
魔族や人間の陰謀に巻き込まれつつ、
いつも美味しいところを持って行くのはジイイ、ババア。
いつか強くなって無双できる日が来るんだろうか?
1章 辺境極貧生活編
2章 都会発明探偵編
3章 魔術師冒険者編
4章 似非魔法剣士編
5章 内政全知賢者編
6章 無双暗黒魔王編
7章 時操新代魔王編
終章 無双者一般人編
サブタイを駄洒落にしつつ、全261話まで突き進みます。
---------
《異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた》
http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/952068299/
同じ世界の別の場所での話になります。
オキス君が生まれる少し前から始まります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗
神尾優
ファンタジー
友人や先輩達と共に異世界に召喚、と言う名の誘拐をされた桂木 博貴(かつらぎ ひろき)は、キャラクターメイキングで失敗し、ステータスオール1の最弱勇者になってしまう。すべてがステータスとスキルに支配された理不尽な異世界で、博貴はキャラクターメイキングで唯一手に入れた用途不明のスキルでチート無双する。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる