ちょっと事故った人魚姫

ラズ

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終章 温かい宝石箱

思わぬ再会と事件発生

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次の日…

サンルームに王族とサイスの両親、そして、側近たちが集まった。
テーブルには美味しそうなキラキラとしたお菓子と匂い立つ紅茶が置かれている。
しかし、集まった全員の表情は固い。

「リシア。ルビエラとの関係を教えてくれるかい?」

コクリ

昨日の騒動は王族主催のパーティーで起きたこと。
関係者ならば事情を聞かれるのは当たり前だ。

『彼女は…私の姉です』

全員が驚いて目を丸くさせた。
誰もが思ったのだろう。似ていない……と。
彼女は艶やかな黒髪、私は銀髪。
彼女はツリ目で紅い瞳、私はややタレ目気味な翡翠の瞳。
彼女の肌は褐色だが、私は白。
似ているとこなど一つもない。でも、あの国ではそれが普通だった。

『これから話すことは到底信じてもらえることではないと思います。ですが、知ってほしいことがあります』

その場の全員が顔を見合わせて一つ頷いた。

緊張しているのか何人かが紅茶を飲んでいたので、私も気を落ち着かせるために紅茶を飲もうとした瞬間……

「飲んじゃダメだ!!!」

懐かしい声とともにカップが壁に飛んでいき割れた。
だけど、そんなことどうでもよかった。
今はカップを飛ばした人物に目がいく…。

《おばあさん…》

ない声で言うと聞こえたかのようにこちらを振り向いた。

「紅茶に口をつけてないだろうね」

コクリ

「あんたたちは?!」

「は?」

突然と自体に反応したのはフェルトのみ。
しかも行った言葉は一文字だけだ。

「いいから!!」

「いや、あんたは誰だよ」

『あの。おばあさんは私の知り合いです。大丈夫な人です』

怪しさ満載な気もするが、私にはそれしか伝えられない。
でも、表情はいぶかしげだが聞く気にはなったようだ。

「俺は飲んだ」

「私も飲みましたね」

「わしもじゃ」

「私もですわ」

飲んだのは4人。おばあさんの顔が歪んだ。

「どう言うことなんだ?」

状況が飲み込めず、視線がおばあさんに集まる。
その視線の中、おばあさんは沈鬱な表情で言う。

「この紅茶には薬が入っている」

ガタガタガタッ

信じられない話に立ち上がってしまった。
他の人たちも驚きを隠せない。
そんな中クロウギリア殿下が冷静に口を開く。

「なぁ、ばあさん。なんで知ってんだ?」

「それはわしが作ったものだから」

「いや、わかるはずねぇだろ。魔女じゃあるまい…」

『あの、おばあさんは魔女です』

「うむ」

誰もかれもがポカン顔。口をあんぐり開けて固まった。

それから数分後…なんとか立ち直ったその場でおばあさんは言う。

「入れられた薬は変化の薬。これは体がそっくりそのまま別のものに変わってしまう薬じゃ。何になるかはわからん」

「それは…鳥や犬になると言うことか?」

「うむ。解毒剤を作ることはできるが…材料がない」

「集めさせよう。何が必要だ」

「人魚の逆鱗を人数分」

ピシリ

固まった。完全に固まった。
その中で、私はおばさんに聞きたいことを伝える。

『姉がなぜここにいるのですか?』

「じつは家をいきなり襲撃されての…二つ薬を盗られたと思ったら変化の薬だった」

『二つ?』

「一つは自分たちで分けて飲んだのじゃろう。薬の反応が動いている…三人じゃ。言わずともわかるかもしれんが、もう一つは紅茶の中…」

『私は変化しているけど、なんで飲んじゃいけないの?』

「魔法が解けてしまうからじゃな。薬の魔法は重ねると解けてしまう。そして制約だけ残ってしまうのじゃ」

『動き回っている場所を教えてください』

「1人は扉のすぐ外にいる。1人はそこまで歩き回っておらんな…もうひとりは入っておる。城の中じゃと思うが…」

『わかりました。ありがとうございます』

知りたいことを知ったなら、あとは行動あるのみ。行かないわけにはいかなかった。
これは私の因果なのだから。

飲んでしまったのはサイス、アルフィリード殿下、国王陛下、ミリュエンヌ様。

誰1人かけていいものではない。
私はみんなに救ってもらった…今度は救う番だ。
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