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第7章 パーティーは荒れ模様
パーティー本番(宣言とダンスと真打ち?)
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アルフィリード殿下が最後に入場した。
そして、音楽が流れ始めてアルフィリード殿下とミリュエンヌ様が踊り始める。
優雅な音楽に合わせてふわりふわりと踊る二人はとても絵になる。
しかも二人ともお互いの顔を見て微笑み合っているのだ。なんだかこちらも幸せな気分になった。
二人が踊り終えると会場から送られるのは盛大な拍手。
私も思わず力一杯拍手をしてしまいました。
そして、拍手が鳴り止むとアルフィリード殿下は片手を上げて…
「わたくし、アルフィリード・フィル=ラナクリードはルーゲリア王国第2王女ミリュエンヌ・ゼイ=ルーゲリアを生涯唯一の伴侶とすることをここで宣言する」
そういったのだ。
それに息を飲んだのは貴族たち。
サイスをちらりと見ればあいかわらずの無表情。
通常王族には側妃がいるのが当たり前だ。
一人の伴侶だと世継ぎに不安があったり、貴族のパワーバランスのためという面があったりする。
それを全てぶった切っての宣言。これは入念な根回しと覚悟が必要なこと。
そして、殿下の瞳には強い意志が宿っていた。
最後の決断をするのは国王陛下。
みんなが固唾を飲んで待つ。そして…
「結婚後5年以内に世継ぎをもうけることを条件として認めよう。5年以内に設けるとができなければ、王族から籍を外し臣籍とする」
「かしこまりました」
側妃は今の代では望めないことがこれで決定した。
歯噛みする貴族もいる中、アルフィリード殿下は堂々と笑っている。傍にいるミリュエンヌ様は幸せそうだ。
しばらくすると音楽が流れ始める。
ダンスの時間だ。
「お嬢さん。一曲お相手願えますか?」
コクリ
まだ少しだけなれない丁寧な言葉。
差し出された手に自らの手を重ねればダンスが始まる。
そこまで優雅に踊れるかどうかといえば…無理。
一週間でなんとか一曲。それが精一杯。
しかも付け焼き刃だからステップも少しばかり怪しい。
とはいえ、よほどの理由がない限り一度も踊らないというのは失礼にあたる。
「リシア」
頭上からサイスの声がして顔を上げると目があった。
なぜか呆れ気味な目をしている。
「緊張するのはわかるが、笑え。ハッタリでも笑えばだいたい楽しくなる」
(ハッタリって…)
結構めちゃくちゃな励まし。
だけど、今はそのめちゃくちゃ加減が落ち着く。
私は自然と笑っていた。
その笑顔を見てサイスも笑う。それは時々見せてくれる優しい笑みだ。
踊り終えて踊りの輪から外れる。
一曲しか踊っていないのに少しだけ息が切れてしまった。
「飲み物を持ってくる。少しここで待っていろ」
たどり着いたのは休憩用のソファーのある場所。そっと座らせるとサイスは行ってしまった。
「お嬢さん。おひとりでしたら、わたしと一曲お付き合いいただけませんか?」
「いやいや、ここは僕と一曲いかがでしょう」
「なにをいう。ここは俺と踊るべきだ」
サイスが離れた途端男性陣が押し寄せてきた。
しかし、いっぺんに言われているので困る。
そして言葉が出ないのでどうしようもない。
サイスは早く戻ってこないか…と男性陣の隙間から伺うとあちらは大勢の令嬢に囲まれている。
戻ってくるのに時間がかかりそうだ。
サイスがそばにいるだろう…と、今はメモ帳とペンを持ってきていない。そもそも、ドレスにそれを入れる場所はない。
男性陣はしきりにアピールしてくるが、わたしは踊る気がなかった。
反応がないのに焦れたのか、一人の男性が手を伸ばしてきた。
反射的に体を竦ませてしまう。まだ、サイス達以外は怖いのだ。
「ごめんなさい。彼女はわたしとお話しするのよ」
触れられる寸前、そんな声がした。
それがさながら天の声に聞こえたのはしょうがないだろう。
そこにいたのは…サイスの母・アリアナだった。
そして、音楽が流れ始めてアルフィリード殿下とミリュエンヌ様が踊り始める。
優雅な音楽に合わせてふわりふわりと踊る二人はとても絵になる。
しかも二人ともお互いの顔を見て微笑み合っているのだ。なんだかこちらも幸せな気分になった。
二人が踊り終えると会場から送られるのは盛大な拍手。
私も思わず力一杯拍手をしてしまいました。
そして、拍手が鳴り止むとアルフィリード殿下は片手を上げて…
「わたくし、アルフィリード・フィル=ラナクリードはルーゲリア王国第2王女ミリュエンヌ・ゼイ=ルーゲリアを生涯唯一の伴侶とすることをここで宣言する」
そういったのだ。
それに息を飲んだのは貴族たち。
サイスをちらりと見ればあいかわらずの無表情。
通常王族には側妃がいるのが当たり前だ。
一人の伴侶だと世継ぎに不安があったり、貴族のパワーバランスのためという面があったりする。
それを全てぶった切っての宣言。これは入念な根回しと覚悟が必要なこと。
そして、殿下の瞳には強い意志が宿っていた。
最後の決断をするのは国王陛下。
みんなが固唾を飲んで待つ。そして…
「結婚後5年以内に世継ぎをもうけることを条件として認めよう。5年以内に設けるとができなければ、王族から籍を外し臣籍とする」
「かしこまりました」
側妃は今の代では望めないことがこれで決定した。
歯噛みする貴族もいる中、アルフィリード殿下は堂々と笑っている。傍にいるミリュエンヌ様は幸せそうだ。
しばらくすると音楽が流れ始める。
ダンスの時間だ。
「お嬢さん。一曲お相手願えますか?」
コクリ
まだ少しだけなれない丁寧な言葉。
差し出された手に自らの手を重ねればダンスが始まる。
そこまで優雅に踊れるかどうかといえば…無理。
一週間でなんとか一曲。それが精一杯。
しかも付け焼き刃だからステップも少しばかり怪しい。
とはいえ、よほどの理由がない限り一度も踊らないというのは失礼にあたる。
「リシア」
頭上からサイスの声がして顔を上げると目があった。
なぜか呆れ気味な目をしている。
「緊張するのはわかるが、笑え。ハッタリでも笑えばだいたい楽しくなる」
(ハッタリって…)
結構めちゃくちゃな励まし。
だけど、今はそのめちゃくちゃ加減が落ち着く。
私は自然と笑っていた。
その笑顔を見てサイスも笑う。それは時々見せてくれる優しい笑みだ。
踊り終えて踊りの輪から外れる。
一曲しか踊っていないのに少しだけ息が切れてしまった。
「飲み物を持ってくる。少しここで待っていろ」
たどり着いたのは休憩用のソファーのある場所。そっと座らせるとサイスは行ってしまった。
「お嬢さん。おひとりでしたら、わたしと一曲お付き合いいただけませんか?」
「いやいや、ここは僕と一曲いかがでしょう」
「なにをいう。ここは俺と踊るべきだ」
サイスが離れた途端男性陣が押し寄せてきた。
しかし、いっぺんに言われているので困る。
そして言葉が出ないのでどうしようもない。
サイスは早く戻ってこないか…と男性陣の隙間から伺うとあちらは大勢の令嬢に囲まれている。
戻ってくるのに時間がかかりそうだ。
サイスがそばにいるだろう…と、今はメモ帳とペンを持ってきていない。そもそも、ドレスにそれを入れる場所はない。
男性陣はしきりにアピールしてくるが、わたしは踊る気がなかった。
反応がないのに焦れたのか、一人の男性が手を伸ばしてきた。
反射的に体を竦ませてしまう。まだ、サイス達以外は怖いのだ。
「ごめんなさい。彼女はわたしとお話しするのよ」
触れられる寸前、そんな声がした。
それがさながら天の声に聞こえたのはしょうがないだろう。
そこにいたのは…サイスの母・アリアナだった。
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