ちょっと事故った人魚姫

第６章 断ち切れない過去

人魚のおはなし

遠い昔、この国は二つに分かれていました。
二つの国は仲は悪くはないけど、特別仲が良かったわけでもありませんでした。

片方の国は見目麗しいものが多く、世界で一番自分たちが美しいと言っていました。
各国の王族もその一族の美貌をもてはやし、気に入れば贈り物をしたりして気を引こうとしていました。

しかし、彼らは自分たちの美貌で驕り高ぶり始めました。
自分たちは美しい、自分たちは特別なんだ。
そう言って贈り物を当たり前のように享受し、贈り物を送らないものには送ってくれた国へ悪い噂を流して立場を悪くさせました。

それから徐々に世界が混乱して来ました。
全てはその国を中心にして回り始めて、誰も止められませんでした。
それは隣国も巻き込まれ、人々は困ってしまいます。

見返りのない贈り物、会議の中の先の見えていない発言、自分本位な行動。それは誰の目にも余るものでした。
そして、それに習うように、その国出身の貴族や商人たちは同じ気質をしていたのです。

本格的に困り果てた王様たちは藁にもすがる思いで神様に祈りました。

『おごり高ぶっているものをどうにかしてください』

すると、慈悲深い海の神が願いを聞き届けてくれました。

海の神は一部の国民を除いて一人残らず海の底に連れて行きました。
それに王様たちは深く感謝をしてその日を盛大お祭りの日にすることを決めました。

しかし、慈悲深き神はいくら頼まれたからと言って人間たちを殺すことはできませんでした。

海の神様は力を使い海の中でも生活できるように人魚の姿を与え、 生活環境を整えて上げました 。

そして、一つだけ救いをつけました。

それは、自分の眷属を一人だけ近くに住まわせてその眷属の目にかなったものが再び人間に戻れるということです。

海の中には人魚の国があり、陸にあった国は併合されて一つの国になりました。

そして、世界は次第に安定して言ったのです。