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第2章 未知の世界と初めての人間
海で助けた女性2(side・サイス)
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風呂から上がっても女性は起きなかった。
それどころか、助けてから丸二日は目を覚まさなかった。
治療の名目で自分の部屋に寝かせていたが、目を覚ました時に驚かれないか心配になってきた。
二日後、殿下に女性の様子を伝えてから部屋に戻ると、女性が目を覚ましていた。
…というか、布団に潜って震えていた。
(寒いのか?…とりあえず、様子だけでも知りたいな)
邪魔な布団を引っぺがした時、女性の顔が見えた。
整った顔に翡翠の瞳がきらめいている。
とても綺麗だと思うが、見とれるのは後にして今は…
「気分はどうだ?」
体調が気になったので声をかけるが、反応はない。
「どうした?」
反応ができないくらい体調が悪いのかと、手を伸ばすがビクリと震えられてしまった。
怯えられているようだ。
(いままで乱暴にされてきて、人を警戒しないほうがおかしいか…俺の配慮不足だな)
これ以上怯えられても困るし、彼女の負担にもなるだろう。
まずは緊張を解いてやるのが先決だ。
女性の様子をうかがいつつ、ミルクティーの用意をする。
普段は他の使用人に任せているが、今この部屋に人が増えるのはいいことではない。
ますます萎縮する結果になる確率のほうが高い。それでは何も聞けないし、彼女の負担になるだけだ。
彼女は何かを言おうと口をパクパクさせているが、出るのは掠れた音だけ。
声が出ないとわかると顔を俯かせてしまった。落ち込んでいるようだ。
「声がでないか…。他に不調はないか?」
ミルクティーの入ったマグカップを持ち、一つを渡す。
警戒はしているようだが、おそるおそる受け取ってくれた。
マグカップを覗き込んで不思議そうな顔をしている。
「ただのミルクティーだ。それなら女性でも飲めるだろう」
俺が一口飲むのを見て、またマグカップを覗き込んだ。
そして、おそるおそる一口飲むと目に見えてホッとした顔を浮かべた。緊張をほぐすことができたみたいだ。
(ミルクティーを飲んだことがないのか?)
茶葉はいいものだが、ミルクティー自体はどこにでもある。それこそ、老若男女問わず知っているものだ。
しかし、そんなものでさえ与えられていない状況だったのかもしれない。
女性の謎は深まるばかりだが、まずは…
「いろいろ聞きたいことはあるが…名前だけでも知りたい。字は書けるか?」
そう問うと、女性は確かに頷いた。
近くにあった紙とペンを差し出し、自分が名乗っていないことに気がつく。
相手の名前が知りたいなら、自分から名乗るのが礼儀だ。
「俺はサイスだ。君の名前はここに書いてくれ」
彼女は差し出された紙とペンを受け取り、綺麗な文字で名前を書いた。
『リシア』
この世界は字と言葉が統一されている。
字を学ぶのは貴族や商人が多く、農家や針子などは学ばない。
つまり、字を知っている時点で少なくとも、中流階級の家のお嬢様だってことがわかった。
字を書いている時、迷いはなかったが、動作がぎこちなかった。
体がまだ本調子ではないのだろう。少しだけ眉間にしわがよっている。
近づいて悪いが、俺は背もたれにできるようにクッションを積み上げてやった。
ビクリと震えられても体を楽にしたほうが、いいに決まっている。
肩を軽く押して寄りかからせた。
触れた肩は…折れそうなほど細く、骨の感触まであった。
それどころか、助けてから丸二日は目を覚まさなかった。
治療の名目で自分の部屋に寝かせていたが、目を覚ました時に驚かれないか心配になってきた。
二日後、殿下に女性の様子を伝えてから部屋に戻ると、女性が目を覚ましていた。
…というか、布団に潜って震えていた。
(寒いのか?…とりあえず、様子だけでも知りたいな)
邪魔な布団を引っぺがした時、女性の顔が見えた。
整った顔に翡翠の瞳がきらめいている。
とても綺麗だと思うが、見とれるのは後にして今は…
「気分はどうだ?」
体調が気になったので声をかけるが、反応はない。
「どうした?」
反応ができないくらい体調が悪いのかと、手を伸ばすがビクリと震えられてしまった。
怯えられているようだ。
(いままで乱暴にされてきて、人を警戒しないほうがおかしいか…俺の配慮不足だな)
これ以上怯えられても困るし、彼女の負担にもなるだろう。
まずは緊張を解いてやるのが先決だ。
女性の様子をうかがいつつ、ミルクティーの用意をする。
普段は他の使用人に任せているが、今この部屋に人が増えるのはいいことではない。
ますます萎縮する結果になる確率のほうが高い。それでは何も聞けないし、彼女の負担になるだけだ。
彼女は何かを言おうと口をパクパクさせているが、出るのは掠れた音だけ。
声が出ないとわかると顔を俯かせてしまった。落ち込んでいるようだ。
「声がでないか…。他に不調はないか?」
ミルクティーの入ったマグカップを持ち、一つを渡す。
警戒はしているようだが、おそるおそる受け取ってくれた。
マグカップを覗き込んで不思議そうな顔をしている。
「ただのミルクティーだ。それなら女性でも飲めるだろう」
俺が一口飲むのを見て、またマグカップを覗き込んだ。
そして、おそるおそる一口飲むと目に見えてホッとした顔を浮かべた。緊張をほぐすことができたみたいだ。
(ミルクティーを飲んだことがないのか?)
茶葉はいいものだが、ミルクティー自体はどこにでもある。それこそ、老若男女問わず知っているものだ。
しかし、そんなものでさえ与えられていない状況だったのかもしれない。
女性の謎は深まるばかりだが、まずは…
「いろいろ聞きたいことはあるが…名前だけでも知りたい。字は書けるか?」
そう問うと、女性は確かに頷いた。
近くにあった紙とペンを差し出し、自分が名乗っていないことに気がつく。
相手の名前が知りたいなら、自分から名乗るのが礼儀だ。
「俺はサイスだ。君の名前はここに書いてくれ」
彼女は差し出された紙とペンを受け取り、綺麗な文字で名前を書いた。
『リシア』
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つまり、字を知っている時点で少なくとも、中流階級の家のお嬢様だってことがわかった。
字を書いている時、迷いはなかったが、動作がぎこちなかった。
体がまだ本調子ではないのだろう。少しだけ眉間にしわがよっている。
近づいて悪いが、俺は背もたれにできるようにクッションを積み上げてやった。
ビクリと震えられても体を楽にしたほうが、いいに決まっている。
肩を軽く押して寄りかからせた。
触れた肩は…折れそうなほど細く、骨の感触まであった。
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