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旅は道づれ?
side・ルプス
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出会いなんて数奇で奇妙なもんだ…。
死ぬかと思えば俺は生きているんだから。
俺は改めて小屋を見回してからマイアに訊く。
「そういえば、俺の剣を知らないか?」
「剣…ですか?私はみてないですけど…」
「護身用につけていたんだが、見当たらないんだ」
「もしかしたら倒れていたところにあるかもしれません。あの時夕暮れ時で暗かったので…」
「そうか…あとで、倒れていたところに案内してくれないか?」
「わかりました。まずは朝食を食べてからです」
マイアは自分の鞄からパンや干し肉を出し、干してあった薬草(多分)も一緒に使って簡単な朝食を作った。
青臭い匂いはせず、かなり美味しそうでお腹が鳴りそうになる。
「よかったら、ルプスさんも食べますか?」
「お前の食料だろ」
「大丈夫です。足りなければまた買えばいいのですから」
「……町まで距離があるだろ」
「そうでもないですよ?それに、〈旅はつれづれ、世は情け〉って言うじゃないですか」
「もしかして、〈旅はみちづれ、世は情け〉って言いたいのか?」
「あれ?つれづれじゃなかったでしたっけ…?」
「はぁ…」
「ため息つくことないじゃないですか~!」
昨日の気の強さはどこに行ったのか、彼女は涙目だった。
「そんなに意地悪言うのならあげません!」
「くれないのか?」
「だって、意地悪言うんですもん!」
「そうか…」
グゥー………
絶妙なタイミングで腹が鳴る。
マイアの食べようとしていた手が止まった。
グゥーー………
俺は窓の外をぼーっと眺めている。
(空が青いな…)
ぐぅうううーーー…………
「どうぞお食べくださいっ!!!」
マイアはスープとパンを力強く渡してきた。
「いいのか?」
「お腹が鳴ってる人の横でなんて食べられません!」
「…ありがとう」
怒りながらも食料を分けてくれたので、ありがたくもらうと…今までにない味だった。
決してまずいわけではなく、ちょっとした苦味も楽しめるようだ。
あっという間に食べ終わったら、なんだかふわふわした気分になっていた。
気分が浮ついていると言うより、全部満たされて満足ている感じだ。
(今だったらなんでもできそうだ)
一休みしたあと、食器を洗いに川に行く。
ついでに俺が倒れていたらしい場所に行くと、近くに剣が落ちていた。
ベルトが緩んで落ちていたみたいだ。
馴染んだ重さが戻り、体勢は万全だ。
「ルプスさんはどうしてあんなとこで倒れていたんですか?」
「あー…猟師に獣に間違えられて撃たれたから」
「え…」
本当のことなんて今は言えない。
彼女が本当に何者なのかわからないのだ。
そうでなくともこちらのことに巻き込みたくない。
「もしかして、昨日来た人は…」
「昨日猟師が来たのか?」
「はい。そっか、そうだったんですね」
納得してくれたみたいでよかったが、こんなに騙されやすくて大丈夫なのだろうか。
一抹の不安を抱えながら、皿洗いを終えたのだった。
死ぬかと思えば俺は生きているんだから。
俺は改めて小屋を見回してからマイアに訊く。
「そういえば、俺の剣を知らないか?」
「剣…ですか?私はみてないですけど…」
「護身用につけていたんだが、見当たらないんだ」
「もしかしたら倒れていたところにあるかもしれません。あの時夕暮れ時で暗かったので…」
「そうか…あとで、倒れていたところに案内してくれないか?」
「わかりました。まずは朝食を食べてからです」
マイアは自分の鞄からパンや干し肉を出し、干してあった薬草(多分)も一緒に使って簡単な朝食を作った。
青臭い匂いはせず、かなり美味しそうでお腹が鳴りそうになる。
「よかったら、ルプスさんも食べますか?」
「お前の食料だろ」
「大丈夫です。足りなければまた買えばいいのですから」
「……町まで距離があるだろ」
「そうでもないですよ?それに、〈旅はつれづれ、世は情け〉って言うじゃないですか」
「もしかして、〈旅はみちづれ、世は情け〉って言いたいのか?」
「あれ?つれづれじゃなかったでしたっけ…?」
「はぁ…」
「ため息つくことないじゃないですか~!」
昨日の気の強さはどこに行ったのか、彼女は涙目だった。
「そんなに意地悪言うのならあげません!」
「くれないのか?」
「だって、意地悪言うんですもん!」
「そうか…」
グゥー………
絶妙なタイミングで腹が鳴る。
マイアの食べようとしていた手が止まった。
グゥーー………
俺は窓の外をぼーっと眺めている。
(空が青いな…)
ぐぅうううーーー…………
「どうぞお食べくださいっ!!!」
マイアはスープとパンを力強く渡してきた。
「いいのか?」
「お腹が鳴ってる人の横でなんて食べられません!」
「…ありがとう」
怒りながらも食料を分けてくれたので、ありがたくもらうと…今までにない味だった。
決してまずいわけではなく、ちょっとした苦味も楽しめるようだ。
あっという間に食べ終わったら、なんだかふわふわした気分になっていた。
気分が浮ついていると言うより、全部満たされて満足ている感じだ。
(今だったらなんでもできそうだ)
一休みしたあと、食器を洗いに川に行く。
ついでに俺が倒れていたらしい場所に行くと、近くに剣が落ちていた。
ベルトが緩んで落ちていたみたいだ。
馴染んだ重さが戻り、体勢は万全だ。
「ルプスさんはどうしてあんなとこで倒れていたんですか?」
「あー…猟師に獣に間違えられて撃たれたから」
「え…」
本当のことなんて今は言えない。
彼女が本当に何者なのかわからないのだ。
そうでなくともこちらのことに巻き込みたくない。
「もしかして、昨日来た人は…」
「昨日猟師が来たのか?」
「はい。そっか、そうだったんですね」
納得してくれたみたいでよかったが、こんなに騙されやすくて大丈夫なのだろうか。
一抹の不安を抱えながら、皿洗いを終えたのだった。
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