ちょっとした小話

ラズ

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咲いた名は?

とある町娘の話

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遠い世界のお話。
あるところに花屋の娘がいました。
彼女の名前は「シェリア」といいます。
今日はそんな彼女のお話です。

気持ちいいくらいの晴天に心地よい風が吹く。
シェリアは大きく伸びをして言った。

「今日もいい天気!いっぱいお花が売れるかしら?」

売り物のお花一つ一つに水をあげて、せっせと手入れをする。
彼女の手はとても荒れているがそれは働き者の証だった。

「シェリア!」

「ルカ!」

不意に声をかけられて顔を上げた先にいたのは自分の恋人。
彼は旅人で頻繁には会えないけど、かっこよくて優しい自慢の恋人だ。

「久しぶりだね。元気にしてたかい?」

「ええ。私はいつも元気よ!でも、ルカに会えなくて寂しかったわ」

少し照れくさくてうつむけば彼は頭を撫でてくれた。それがとっても心地よかった。

「今回はどのくらいいられるの?」

「うーん…一週間というところかなぁ」

「そう……」

すごく寂しいけど、そんなこと言って困らせたくはない。曇った顔なんか吹き飛ばすように笑えば彼も微笑んでくれた。
今はそれで十分だ。

「寂しい思いをさせてごめんね。仕事終わったらデートしよう?」

「いいの?!」

「もちろん」

そんな気遣いだけで嬉しくなる。
仕事の終わりが待ち遠しく、早く時間が過ぎることを願った。

その日の夜は素敵だった。
少し高いレストランでディナーをして、愛する人と結ばれたのだから。
私には彼しかいない。純潔は将来の伴侶に捧げるものだ。
痛かったけど、それ以上に幸せだった。

次の日ももちろん仕事があったが、痛みを訴える体に鞭を打って頑張った。

辛くても愛する人に捧げたのだから幸せの方が勝っている。
いっそ鼻歌なんて歌いながらせっせと花の手入れをしていった。

「シェリアは楽しそうね」

「ええ!」

母がなぜかため息をつきながらそんなことを言ってきた。
心なしか父の顔色をよくない。

「お母さん、お父さん大丈夫?」

「うん?大丈夫さ。ちょっと寝不足なだけだよ。ねえ、レアン」

「ええ。シェリアは気にしなくて良いわ」

取ってつけたような笑い方だが、これ以上聞いても答えてはくれないだろう。
なんとなくそんなことを思った。

また鼻歌を歌いながら手入れを再開する。
どこかどんよりとした店内で楽しそうな鼻歌だけが響く。

今日は少しだけおかしかったけど、何気ない日常だった。
こんな平凡で穏やかな日々がすぎていくものだと本気で思っていたんだ。

だけど、嵐は突然やってくるもの。
それを体験したのはそれから3日後のことだった。
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