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強力なライバル
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また質問しに来てくれないかなーと、そればかり考えている今日この頃。また、週一回の、教員室から体育見学をする生活が続いていた。
だが、ある昼休みに颯太を見かけた。用事があって3年生の教室のある階の廊下を歩いていると、教室とはだいぶ離れた特別教室の前に、颯太がいたのだ。廊下が90度曲がっているので、曲がる手前の廊下から、窓を通して見えた。俺は嬉しくなって、しかしドギマギして、歩くスピードが緩んだ。と、次の瞬間足を止めた。
颯太は独りではなかった。まあ、それはそうだろう。一緒にいた生徒は、こちらに背を向けていたので、最初は顔が見えなかったが、その人物が動いたので、横顔が見えたのだ。坂口だった。あの、颯太と勉強合宿で同室だったイケメンだ。坂口と颯太は二人きりでそこに立っていた。颯太は壁に寄りかかり、坂口は今は壁に横向きに寄りかかっていた。なぜ俺が立ち止まったかと言うと、その二人の距離が、何となく普通以上に近いと思ったからだ。内緒話でもしているように、顔と顔がとても近い。二人は穏やかに微笑んでいて、楽しそうだった。
ぐっ、何だ?急に胸がざわざわし出したぞ。これは・・・嫉妬なのか?合宿で二人きりの夜を過ごした二人が、急速に距離を縮めたのではないか。ざわざわが止まらない。苦しい。
俺は、颯太を想っているのはこの学校で俺一人だと思い込んでいた。男子校だから、学校で友達を好きになってしまう生徒は多くないだろうと思っていた。本来なら、十人に一人くらいは同性を好きになる生徒がいるはずである。それでも、それが颯太である可能性は限りなくゼロに近いと思い込んでいた。だが、俺が好きになってしまったくらいだから、他にも颯太を好きになる男がいたっておかしくない。なぜ今まで誰もいないと思い込んでいたのか。しかし、よりによってあんなイケメンの坂口がライバルだなんて。いや、まだ坂口が颯太を好きだと決まったわけではない。二人はただ仲の良い友達なだけかもしれない。と思いたいけれど、人目を避けてこんな所に二人きりでいるとなると、どちらかに恋愛感情がないとは思い難い。考えたくないけれど、もしくは両方に恋愛感情があるとか。ひいぃー、考えたくない!颯太が坂口のことを好きだなんて。
俺は、とにかくあの二人の邪魔をしたくなった。このまま仲良くされていては、俺の脳が沸騰する。俺は姿勢を正し、威厳を目一杯身に纏い、歩き出した。そして廊下を曲がる。颯太が俺を見た。一瞬「あ」という口をして、笑いを引っ込めたが、思い直したように微笑をたたえて俺を見ている。それで、俺の心を鷲掴みだ。
颯太の顔を見ていた坂口は、颯太の表情の変化を見て、俺の方を振り返った。坂口の方は笑いを引っ込めた後、更に鋭い眼差しで俺を見た。と思ったら、颯太の頭に手を置き、自分の頭を颯太の頭にピタッとくっつけた。そして、すりすりしながら俺の方を挑戦的な目で見ている。
こいつ・・・。やはり、坂口は颯太の事が好きなのだ。そして、俺が颯太の事を好きなのも分かっていて、見せつけようとしているとしか思えない。いや、しかし待てよ。もし、颯太が坂口の事を好きなら、って考えると泣きそうになるけれど、二人が両想いなら、坂口が俺を挑発する必要はないのではないか。坂口が俺をあんな目で見るという事は、坂口の片想いなのではないか。と、思いたい。
そうして、俺は颯太たちの前に着いてしまった。目が合っているのに、このまま素通りというわけにもいかない。彼らが悪い事をしているわけでもないので、注意するとか叱るというのはおかしい。𠮟りつけたい気持ちで一杯だけれど。
「お前たち、こんなところで何やってるんだ?」
まあ、これくらいしかかける言葉はない。そして、実際聞きたい事だったりする。
「デート。」
坂口は、まだ颯太にぴったりくっつきながら、そう言った。困った。我が校の校則に、恋愛禁止という項目はない。校内でデートしていても悪い事ではない。俺は、すがる思いで颯太を見た。颯太は、されるがまま大人しくしていたが、俺の視線を受けると、いまだ頭をくっつけている坂口の体を、肘でぐいと押した。さすがに坂口は頭と手を颯太から放した。
「冗談だよ。」
と、颯太は俺に言った。
「そっか。」
と、とりあえず俺は相槌を打った。そして、それ以上何かを言う余裕のない俺は、二人を残してその場を立ち去った。心の中は嵐が吹き荒れる。目の前で二人のいちゃつきを見てしまったのだから、俺の心は崩壊寸前だ。
そう言えば、俺はずっと颯太の事が可愛い、会いたい、と思っていたが、颯太が俺の事をどう思っているか、とか、両想いだったら付き合いたい、などとは考えた事がなかった。前に颯太が「先生の事、好きかも」と言ってくれたから、嫌われていないという自信があった。だが、俺の事を恋愛対象として見てくれるなんて事は、ないと思っていた。最初から諦めていたのだ。しかし、今日のあの二人を見て、とうとう俺の欲望が輪郭を現し始めた。颯太と付き合いたい、いちゃいちゃしたい!と。は、恥ずかしい。
坂口め、見てろよ。俺は颯太をお前になんか渡さないぞ。と、意気込んだものの、圧倒的に俺よりも坂口の方が、颯太と過ごす時間が長い。颯太の気を引くには、どうしたらいいのだろう。今は受験生だし、そもそも教師と生徒が付き合うわけにはいかないし。はあ、やっぱり卒業するまでは我慢だな。どうか、それまで颯太を坂口に取られませんように。
だが、ある昼休みに颯太を見かけた。用事があって3年生の教室のある階の廊下を歩いていると、教室とはだいぶ離れた特別教室の前に、颯太がいたのだ。廊下が90度曲がっているので、曲がる手前の廊下から、窓を通して見えた。俺は嬉しくなって、しかしドギマギして、歩くスピードが緩んだ。と、次の瞬間足を止めた。
颯太は独りではなかった。まあ、それはそうだろう。一緒にいた生徒は、こちらに背を向けていたので、最初は顔が見えなかったが、その人物が動いたので、横顔が見えたのだ。坂口だった。あの、颯太と勉強合宿で同室だったイケメンだ。坂口と颯太は二人きりでそこに立っていた。颯太は壁に寄りかかり、坂口は今は壁に横向きに寄りかかっていた。なぜ俺が立ち止まったかと言うと、その二人の距離が、何となく普通以上に近いと思ったからだ。内緒話でもしているように、顔と顔がとても近い。二人は穏やかに微笑んでいて、楽しそうだった。
ぐっ、何だ?急に胸がざわざわし出したぞ。これは・・・嫉妬なのか?合宿で二人きりの夜を過ごした二人が、急速に距離を縮めたのではないか。ざわざわが止まらない。苦しい。
俺は、颯太を想っているのはこの学校で俺一人だと思い込んでいた。男子校だから、学校で友達を好きになってしまう生徒は多くないだろうと思っていた。本来なら、十人に一人くらいは同性を好きになる生徒がいるはずである。それでも、それが颯太である可能性は限りなくゼロに近いと思い込んでいた。だが、俺が好きになってしまったくらいだから、他にも颯太を好きになる男がいたっておかしくない。なぜ今まで誰もいないと思い込んでいたのか。しかし、よりによってあんなイケメンの坂口がライバルだなんて。いや、まだ坂口が颯太を好きだと決まったわけではない。二人はただ仲の良い友達なだけかもしれない。と思いたいけれど、人目を避けてこんな所に二人きりでいるとなると、どちらかに恋愛感情がないとは思い難い。考えたくないけれど、もしくは両方に恋愛感情があるとか。ひいぃー、考えたくない!颯太が坂口のことを好きだなんて。
俺は、とにかくあの二人の邪魔をしたくなった。このまま仲良くされていては、俺の脳が沸騰する。俺は姿勢を正し、威厳を目一杯身に纏い、歩き出した。そして廊下を曲がる。颯太が俺を見た。一瞬「あ」という口をして、笑いを引っ込めたが、思い直したように微笑をたたえて俺を見ている。それで、俺の心を鷲掴みだ。
颯太の顔を見ていた坂口は、颯太の表情の変化を見て、俺の方を振り返った。坂口の方は笑いを引っ込めた後、更に鋭い眼差しで俺を見た。と思ったら、颯太の頭に手を置き、自分の頭を颯太の頭にピタッとくっつけた。そして、すりすりしながら俺の方を挑戦的な目で見ている。
こいつ・・・。やはり、坂口は颯太の事が好きなのだ。そして、俺が颯太の事を好きなのも分かっていて、見せつけようとしているとしか思えない。いや、しかし待てよ。もし、颯太が坂口の事を好きなら、って考えると泣きそうになるけれど、二人が両想いなら、坂口が俺を挑発する必要はないのではないか。坂口が俺をあんな目で見るという事は、坂口の片想いなのではないか。と、思いたい。
そうして、俺は颯太たちの前に着いてしまった。目が合っているのに、このまま素通りというわけにもいかない。彼らが悪い事をしているわけでもないので、注意するとか叱るというのはおかしい。𠮟りつけたい気持ちで一杯だけれど。
「お前たち、こんなところで何やってるんだ?」
まあ、これくらいしかかける言葉はない。そして、実際聞きたい事だったりする。
「デート。」
坂口は、まだ颯太にぴったりくっつきながら、そう言った。困った。我が校の校則に、恋愛禁止という項目はない。校内でデートしていても悪い事ではない。俺は、すがる思いで颯太を見た。颯太は、されるがまま大人しくしていたが、俺の視線を受けると、いまだ頭をくっつけている坂口の体を、肘でぐいと押した。さすがに坂口は頭と手を颯太から放した。
「冗談だよ。」
と、颯太は俺に言った。
「そっか。」
と、とりあえず俺は相槌を打った。そして、それ以上何かを言う余裕のない俺は、二人を残してその場を立ち去った。心の中は嵐が吹き荒れる。目の前で二人のいちゃつきを見てしまったのだから、俺の心は崩壊寸前だ。
そう言えば、俺はずっと颯太の事が可愛い、会いたい、と思っていたが、颯太が俺の事をどう思っているか、とか、両想いだったら付き合いたい、などとは考えた事がなかった。前に颯太が「先生の事、好きかも」と言ってくれたから、嫌われていないという自信があった。だが、俺の事を恋愛対象として見てくれるなんて事は、ないと思っていた。最初から諦めていたのだ。しかし、今日のあの二人を見て、とうとう俺の欲望が輪郭を現し始めた。颯太と付き合いたい、いちゃいちゃしたい!と。は、恥ずかしい。
坂口め、見てろよ。俺は颯太をお前になんか渡さないぞ。と、意気込んだものの、圧倒的に俺よりも坂口の方が、颯太と過ごす時間が長い。颯太の気を引くには、どうしたらいいのだろう。今は受験生だし、そもそも教師と生徒が付き合うわけにはいかないし。はあ、やっぱり卒業するまでは我慢だな。どうか、それまで颯太を坂口に取られませんように。
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