黄昏の国家

旅里 茂

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副総理の転落

黄昏の国家44

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川崎自体は、勿論そんな事は知らぬ存全だが、不倫については心当たりがある。
つまり、オーイックスがフェイクで流した情報網に、まんまと引っかかったのだ。
首相官邸では中越総理が、確かに狼狽していた。
起きては成らぬ、川崎の暗殺未遂という、国家に緊急事項を持たせた出来事をないがしろには出来ない。
中越総理は、全国民に告げてTVとネットワークに向かって緊急記者会見を始めた。
「もう既存の事実ではありますが、川崎副総理が何者かに襲撃を受けました。しかも首相官邸でです。」
これを見ている或いは聞いている国民がどれだけの関心を示すのか、高沢と共にネット放送を見ているオーイックスの知りえる人物たちが、笑みを浮かべて拝見している。
中越は平坦な人だ。
逃げる事が出来ない状況に押し込んだのには罪悪感があるが、取り除きたいのは川崎である。
記者会見の間にダイレクトスクリーンで、不倫を匂わす女性たちが何人か、その輪に入って来た。
中越の傍に居た川崎は慌てて転倒してしまった。
これに失笑する人々の声が日本中を駆け巡った。
SPが川崎を起こし、取り乱した、その顔は憤怒の形相だった。
中越もこれ以上の会見は不可能と判断したのだろう。
TVカメラやネット通信をカットするよう、各テレビ局、ネットテレビ、ダイレクトスクリーンに問うた。
しかし副総理である川崎が、幾十もの不倫をしていたことが表だったことが自己崩壊につながるまでには時間はそう掛からなかった。
マイクをカメラに投げ付け、「私は副総理だ!不倫など別に大したことではない!」取り乱し、SPが止めに入るが半狂乱の状態では失態を全国に広めるだけの行為だった。
放送は一時ストップし、宣伝が流れた。
尾本が高沢に「これで、放っておいても川崎は終わりですね」
その言葉を噛みしめながら、暗殺には失敗したがそれ以上に、恥をさらけ出した川崎の行先は、良くて除名だろう。
その後、記者会見の場が再び映り、中越総理への責任問題に話が集中していた。
不倫解散という、何とも不名誉な言葉が飛び交っている。
これで、一連の事態は収束を向かえるだろう。

 川崎は数十人の女性と関係を持ち、金でコントロールしていたという。
しかも税金を使用してでの流れだった為、公安が動いた。
其れも相当な金額に上がるらしい。
一部の住民はその流れを解明し、全て返却するようデモを起こした。
ネットでは、どの人物が不倫をしていたかを探る動きが出ている。
一般の主婦も混ざっているらしく、AIを使い解析する人物も出てきた。
日に日に騒ぎは大きくなり、国会前ではデモの人数が二百人を超えたと、TVやネットで混乱を放映していた。
川崎にインタビューをする為、大勢のレポーターが集まったが、川崎サイドは、体調を崩し面会謝絶を表に出して、どこの病院かも出さず雲隠れしたのだった。
高沢はこれで、莫大な金を出さずに済んだのだが、ミスもあった。
反省はあるが、政治家の汚さにはほとほと参った次第だった。
大きな山場を一段落し、次の構想に入ったオーイックスでは、放射能を完全除去するシステムの開発に入った。
何故にそんなものが必要かと、またロシアの影がちらつき始めたからだ。
ロシアはかつて隣国に戦争を仕掛けたが、結局二年に渡る抗争で、当時の指導者たちが失脚したが、更に独裁を固めたような人物が出てきた。
三国に分離したロシアだが、その独裁ぶりは強烈で、核をEUに発射する寸前まで緊張したことがあった。
そしてオーイックスでも犠牲者を出した事件があった。
核ミサイルを打ち落とすシステムは、米国が既に完成しており、「ファージャ」という特殊迎撃レーザーの事で、西側諸国の一部に配備されている。
勿論、日本政府もその恩恵を受けている。
但し、迎撃すると放射能がき散らされるので、それにより被曝する人が出る。
速やかに放射能を除去する必要が有る為、その研究をしているのだった。
かつて川崎がオーイックスに軍部があると言っていたが、あながち間違いではなく、実際には軍需部門が独立形態で存在している。
これが外部に漏れるのは絶対に防がねばならない。
オーイックスの職員も、一部限られた人物しか知りえない。
しかし、どの組織にしても話の和は漏れるもので、一般のオーイックスの人物も「スゲー兵器を製造してるみたいだぜ」
明るみに出るのは仕方がないのかも知れない。
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