黄昏の国家

旅里 茂

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新たなる軍需

黄昏の国家36

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高沢は、電子ペーパーの着信音で眼が覚めた。
ホログラムを操作すると、政府機関、第二高等軍事委員会の沢崎健太なる人物からの連絡で有った。
この名前と顔には心当たりがある。
Fー7の飛行披露をした際に、政府側の航空自衛軍の制服組に座っていた人物だ。
直接話した事が無いので、何故高沢に連絡を今になって寄越すのか、感潜った。
「出て頂きましたか。突然の連絡失礼致します」
こちらが応答する間もなく、そのまま言葉をまくし立てるように、高沢の耳に信じられぬ情報が入って来たのだ。
「私たち第二高等軍事委員会は、第二の防衛軍を創設しようとしているのです」
自衛軍の間違いではないのか。そう思い伝えが、防衛軍であるらしい。
「現在我々委員会の流れでは、最終的には自衛軍を超える軍需を備えるつもりです」
つまり、イランのように軍の上である革命防衛隊のような組織体制を取るつもりなのか。
「現状、幾つかの工程がありますが、まずそういった処です」
之には高沢は少し混乱をした。
そんな事を日本政府が許す筈がない。「防衛体制を新たに形作る事ですが、それが本当に実現可能と仰るのですか?」
沢崎は一旦息を吐き、こう切り出した。
「勿論、日本政府には内密です。ですから高沢さんに、ご連絡申し上げたのですよ」
どういうことだろう、不安で内面に不快な気持ちが込み上げてくる。なんだ、この感覚は!それが的中した時、日本政府への裏切りを予感した。
沢崎が言葉を続ける。「今、オーイックスは栄工業とタッグを組んでいます。そして日本政府の念願であった純国産戦闘機の完成にこぎ着けた。これは大いなる成功の盾です!」
この男から可成り危険な香りがしてくるのは、こちらを巻き込み反体制を築くつもりなのか。
それを見透かしたように、「反体制を行う事などは考えておりません。寧ろ後方支援をする立場です。先程もイランの革命防衛隊のような存在をこの国に建てようとしているのですから」
高沢にオーイックスと栄工業とのタッグで、軍需を敷こうとしているのか。その時、何が起きるのか。沢崎の真意が何処にあるのか探らねばなるまい。
「沢崎さん、もしかしてビック・フロートを利用する旨ではないでしょうね」
この言葉を待っていたかのように、沢崎は大きく反応した。
「流石高沢さんだ。私の内面を認識して頂けた。正にその通りです」
確かに近い将来、空母などの構想はあるが今どうにか出来る訳ではない。
ましてや高沢が生きている間に、それらが完成する事も考えられない。
単刀直入にそれらが無理な事を沢崎に伝え申したが、「いやいや、もう構想と資金はあるのですよ、高沢さん。あとは貴方次第です」
高沢の一存では決めかねる。
オーイックスの会議にて判断すると伝え、一旦切った。
これは、思いもがけない状況が出来た。しかしながら資金が調達出来たというのは、税金ではないのか。
ビック・フロート管理は純日本政府機関で、現在では高沢が確かにしゅだ。
資金調達は今までに開発した、Co2光合成発電機、Co2光合成エンジン、海水ミネラル浄化システムなど様々な核心的で一般家庭から重工業までに浸透している。
それらの資金廻りが非常に高く、海外でも順調だ。
しかし、日本政府の管轄である沢崎の機関では、資金を自由に扱う事はまかりならない筈。
どこからの資金調達なのか、不正に集積したものなら断じて許せるものではない。

五日後の午前十時、オーイックス緊急会議が開かれた。
まず、最初に取り上げたのが、政府機関、第二高等軍事委員会の件であり、軍需拡大と資金調達の有無についての定義である。
沢崎の件においては、外務担当機関所属、永井健一がその問いを務めた。
それは、日本政府、法務省のキャリアで同期だったという意外な接点があった事による。
沢崎はそれも見据えて連絡をしてきたのだろうか。
永井は沢崎の内務を極めて詳細に覚えていた。
「現在、政府機関、第二高等軍事委員会に所属する沢崎は、法務省時代に自衛軍における立ち位置に、更に強大な軍需を設ける旨を提案しました。一堂に会した所見で大多数が反対を表明。今に至ります」
それから数年後に永井はオーイックスに転身し、沢崎はその後も法務省に残ったそうだ。
十数年が経ち、現在に至るらしいが、その昔IR、つまり合法カジノの経営に法務省からのOKサインが出ていた。そして現在に至る。IR構想が絡んでいる?
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