黄昏の国家

旅里 茂

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見えない敵

黄昏の国家25

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複雑な政治と金の流れが大きく浮遊した。
最終的には、オーイックス内で会議を開き、議論をする事で話を纏めた。

「日本政府及び、国防省からの通達に基づく次期支援戦闘機のエンジン開発に指名を受けました。現在、我がオーイックスの管轄ではCo2光合成エンジンの点火燃焼試験に合格しております」
高沢は軍需コントロール室の多田が読み上げる内容について、何故に大手である”IFH”が手を引いたのかを考えていた。
嘗て、XーF2のエンジンに採用され、実際に飛行に成功した。
その実績は非常に大きい物であったが、米国の横入でFー3のエンジンは純正を使う事はなかった。
幾度の純国産を夢見た閣僚たちは、”IFH”に米国製のFー22に匹敵する精度を求めた。
処が、交渉に当たっていた、讃岐健一という人物が突如、行方をくらました。
まず、姿を消す理由がないのと、米国製のエンジンと同等の性能を自負していた人物だけに、警察は事件性を疑った。内密に公安も動いたが、その動向は知れなかった。
家族は居らず、独り身の人物だけに合って、数年が経過した。
世間が忘れかけた頃、神戸市の北側にある山中で、犬と散歩中の男性が、妙な記号を刻んだ杉の木を発見した。それは一見意味をなさない物のように見えたが、一つだけ判る記号があった。『←』と刻まれている。男性は杉の木の上を見上げると、大きな麻の袋のようなものがぶら下がっているのに気付いた。
高い確率で遺体が入っていると思い、直ぐに警察に連絡を取った。
十数分で警察官が十人程駆けてつけ、その麻袋を降ろし中身を確認した。
すると大量のジェル状の物体が入っており、その中心には電子ペーパーが一枚入っていた。
遺体とばかりに思っていた、そこに集まった者たちは一旦は胸を撫で下ろしたが、電子ペーパーが起動している状態だったので、サイバー班を緊急に寄越した。
ナイフでゲル状の物質を切り裂き、危険な物質が入っていないか計測し、安全を確認しながら電子ぺーパーを取り出した。
操作系で電源をオンにするとパスワードを要求してきた。
全く判断が出来ないので、ラボに持ち帰って解析しようと判断した処、隊員の一人が、発見した人物の言う通り、木に刻まれた矢印を打ち込んだところ、パスワードが解けた。
その瞬間、アラートが鳴り響き、電子ペーパー上にある地域が表示された。
場所は直ぐに確認出来た。
ロシアの「スラトフストフスク」という場所であった。
この地域に讃岐と関連があるのか?
外務省に問合せ、ロシアとの外部回線を通しての連絡を取るすんだんを行ったが、ロシア外務省からの応答は、問題になる要素はないとの回答だった。
では一連の意味はどういう事を現しているのか。公安は頭を抱えた。
その情報はもちろん、オーイックスにももたらされ、ロシアと日本政府との間に入り、日本政府外務省と公安とオーイックスからは、三人詮索した人物を派遣する旨を通達した。一人に永井健一という人物。
ロシア外務省は問題がなしと押し通そうとしたが、突然手の平を返し、受け入れる準備をするという。
日本の外務省もそうだが、オーイックス側でも裏があるのではと感潜ったが、今現在出来るのは、その土地に到達する事だ。
オーイックスが準備した機体に乗り込み、ロシアに飛んだ。
高沢は念の為、チェック・スタビライザーを持ち合わせて行くよう指示した。
チェック・スタビライザーとは、サイバー攻撃においてあらゆる探りも入らないようにする機器である。
本来は、舌の内側に設置する可成り小型の部品である。
これもオーイックスが開発したサイバー攻撃の防御システムである。
近隣の空港に到着した際、ロシア警察と外務省の職員が直ぐに駆け付けた。
歓迎はされていない事は、数十秒で判った。
外務省職員ロドリゲス・シュナイフ一等外務員が、「その場所に何も無い事は通知した通りだ。我々が受け入れたのは、不快な探りを拒否する為だ」
これは随分なご挨拶だなと日本側は思ったが、捜査線上に浮かんだ状況を調べ無い訳にはいかない。
空港から自動車で四時間はかかる場所で、軍需産業が盛んな場所だと聞かされた。
何故にロシアが機密性の高い場所の入所を許可したのか。これが不可思議で仕方がなかった。
その理由が分かったのは、現地に着いた時点で判った。
そこはサイボーグ・グラインドという、廃人の脳に電子機器を付け作業を延々とさせる場所である。
愕然とした。永井は身の危険を感じていた。いや、この状況を見た時点で消されるのではないかという恐怖心が湧いた。
しかし、案内をしたシュナイフは静かな笑いを見せていただけだ。
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