黄昏の国家

旅里 茂

文字の大きさ
上 下
12 / 47
核の正体

黄昏の国家12

しおりを挟む
高沢は防衛救急隊が既に出動していることを確認後、現場に索敵チームを送らせた。
一刻も被疑者を確保して、事の状態を収集したい。
索敵チームより連絡が入る。「こちらデルタワン、被疑者と思われる人物を二人確保!」
状況からして北朝鮮の人物と判明する。
公安も動いている。全てをオーイックスが管理することは出来ない。
すぐさまテロの容疑者を公安に委ねる。
救急隊も入り、オーイックスの救護隊も活動に当たった。
現状の酷さに目を背けたくなるが、人命第一である。
一人一人にトリアージを付けて、それぞれの所轄に搬送するが、オーイックスの現場での簡易手術室車が到着し、ことに当たる。
火災は次第に小康状態となり、警察と消防の現場検証が入った。
使用された爆発物は、TNT火薬であることが化学班の調べで判った。
日本政府は直ぐに、大規模テロとして緊急対策本部を設けた。
国内を始め海外でも大体的に報じられ、テロが身近で発せしうる恐怖を共有した。
これがまだ、始まりの序章なのか?こんな惨事を起こし、更に壊滅的な兵器を使用する。だが、絶対に防がなければいけない。
突如、ビジョノートから連絡が入る。角安からであった。
「どういう状況かね。TVでは可成りの規模のテロだと判断しているが…」
高沢は今回の事件が、先にある目くらましと伝えた。その根拠はサキナたちの言葉しかないのだが。
「それは、例のギークたちか。過信過ぎるのではないかね」
それを聞いて反芻する自分がいる事に気付いた。サキナたちの判断を今一度、振り返っている。
そして「最初は私も疑心暗鬼でした。しかしながらギークたちが言う、核攻撃の意味を今一度考えております」
しかし、角安は不信感で一杯だった。「ギークと言っても所詮は子供の戯言だと思うがね、今の北朝鮮を操る中国がそんなことをして何になる?」
だが、何とも言いようのない不安が高沢の脳裏に過る。
高沢の中で静かに事態を吸収することを願った。
「角安副次官、私は自分の今の立場を無くしても構いません。どうか残りの時間を私に託して頂けませんか?」
角安は少しの時間を置いて、「判った。事態が起きてからでは、全ては無に帰す。お前さんの言葉とギークたちを信じようじゃないか」
「有難う御座います。引き続き警戒に当たります」
軍需コントロール室にすぐさま戻り、サキナたちに再度再開する。
「あと一日と二十一時間。必ず二発の核がここへ飛んでくるわ。でも、大丈夫、防いで見せるわ」
高沢の心を読んだのか、先程より話し方が柔らかいようだった。
その頃、防衛ビッグ・マーカーでは、妙な動きをする二つの衛星に注目が集まっていた。
「これは中国製の軍事衛星みたいだな。なんで降下している?」
量子コンピューターを介して計算を始める。
すると妙な一致点を探り当てた。此の軌道でもし地上に落ちるとしたら、此処ビッグ・ワンであることは間違いない。
更に、衛星のデータをネットワーカーという資料内容を、自動的に習得する機器で調べた処、両機共に原子力で動いていることが分かった。
沢田は驚愕した。まさにギークたちが予見したことが、この二つの衛星の事ではないか?
では、迎撃しても濃度の高い放射能汚染が広範囲に広がる。
「そうか!それでニュートリノ・レーザーの照射を求めたのか」
では、北朝鮮と中国の取り分はなんだ?何をこれで得る?疑問が残った。
しかし、衛星は確実にビッグ・ワンに落下する。
間違いない、沢田は直感した。すぐに高沢に連絡する。
「リュクスタ、今、不審な衛星二機を確認しました。軌道を下げながらゆっくりと降下しています。ギークたちが予見したのは、実はこの衛星ではないかと…。」
高沢はその言葉で話を繋げた。「その衛星というのは両方とも原子力のものでないか?」
「その通りです、リュクスタ。ギークたちの予見は弾道ミサイルではなく、原子力で動く衛星だったでは…」
なるほど。全てが一致するものではなく、あくまでも原子力のもの。放射能を伴るものだったのか。
高沢はサキナに連絡を取る。「事情はそうだ。この衛星二つではないのか?」
サキナは少し混乱していたが「核には違いない。だとしたら私たちが予見したのは…」そこで自己不振に陥ったのか。
「サキナ。少なくとも君たちギークが予見したものが多少外れただけで、大変な状況だという事には変わりない。防衛ビッグ・マーカーからも全力で後押しする。
ニュートリノ・レーザーが何処まで有効か分からないが、これに掛けたい!」
「判ったわ。有難う、私たちを信じてくれて…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

おしがま女子をつける話

りんな
大衆娯楽
透視ができるようになった空。 神からの司令を託され、使うことに......って、私的に利用しても一緒でしょ!

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...