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0章 ~プロローグ~

たとえば、九曜千暁【八】

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 「両者入場~!!!!!」
 司会の挨拶とともに花田豪、九曜千暁が会場の両端から中心に近づく。
 会場は相変わらず喧噪としている。
 
 目の前にいるのは、準特選組の男だ。果たして俺はやれるだろうか。
 さっきまで勝つとか負けるとか考えもしなかったが、今の俺はどうやら勝つことを考えている。華恋に絆されたことは言うまでもない。
 
 「昨日は良く眠れたかい?勝敗が分かっているから逆によく眠れたんじゃないかなぁ?」
 花田先輩が皮肉めいた表情で問いかけてくる。
 心底、自身の勝利を確信しているといった感じだ。

 「いやあ、あんまり眠れなかったっすね。緊張してたんで」
 昨夜とは違い、緊張はあるものの落ち着きを払っていた。

 「ふーん。まぁどっちでも構わないけど」
 つまらなそうにそっぽを向く花田。
 俺は、今日負けても良いと思っていた。でもそうじゃなかった。いい加減、前を向こう。深呼吸する。大丈夫だ俺はやれる。

 会場は妙な緊張感に包まれ、試合開始を見逃すまいと先程とは打って変わって、静まりかえったいた。

 自身の心臓の音がうるさい。
 
 司会が唾を飲み込む音が聞こえる。もう始まるのだろう。

 「では、試合を開始する!!!」
 司会が声高らかに宣言する。会場中にその声は響き渡り、観客が一斉に声を上げる。ボルテージは最高潮だ。

 観客の熱気とは裏腹に主役とも言うべき中央の二人は落ち着いていた。
 九曜千暁も花田豪もその場を動くことはない。
 意外だった。最初から魔法なりを使ってくると思っていたが、警戒しているのか、それとも俺の出方をうかがっているのか。まあ恐らく後者だろう。

 呼吸を整え俺は、一歩後ろに飛び下がる。そして跳躍中に魔法の詠唱を始める。
 一瞬花田は、反応が遅れたように見えたが、まだその場を動くことはない。不敵な笑みを浮かべ顎を突き出しながらまっすぐ俺を見つめる。

 その隙に高速で詠唱を終え、魔法名を叫ぶ。
 「緋弾!!」
 日本式の火属性魔法を発動する。
 
 すると、一瞬で炎が形成され、その塊は、花田の元へと向かう。

 しかし、花田はレイピアのような自身の神器を魔力で強化し、これをあっさりと切り捨てる。
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