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「本当は誰にも見せたくないんだけどさ。でも自慢したいってのも正直な気持ちだよねぇ」

精霊王が挑発的な笑みを浮かべながら言った。

「アイシラの元婚約者様には是非見せたいと思ってね」

「アイシラは……笑えるのか?」

リカ王子が問う。

「笑えるよ。たまに甘えたりもしてくれて、すごく可愛いよ」

甘える?
あのアイシラが?

あの可愛い笑顔で?

「王子様、君はアイシラが何も感じないと思っていたようだけど、あの子はとても感情豊かだよ。幼い頃からね。ただ君が彼女の心を開いてあげられなかっただけ」

「馬鹿な。俺は彼女に……」

彼女に?
一体何をしてあげた?

何か贈り物をしてあげたか?
いや、したことがない。

何か喜ぶことを言ってあげたか?
間違ったことを言ったことはないが、それは彼女が喜ぶようなことだったか?
むしろ傷つける言葉だったのでは……。

俺は間違っていない。
でも、彼女を喜ばせるようなこともしていない。

いやいや、俺の婚約者になれたのだからそれだけで喜ぶべきことだろう。

あれ?
でも、それを一方的に破棄したのは……。

「アイシラはずっと頑張っていたのにね。君のため、そしてこの国のために。きっついお妃修業も弱音ひとつ吐かずに」

確かにアイシラから弱音や愚痴を聞いたことがない。
俺が無実の罪を着せるまで、アイシラはずっと俺の婚約者として傍にいた。

全ては俺のために。
愛する俺のために。

それに比べアンナはどうだ?
卒業パーティの事件があってから、あっさり俺の傍を離れた。

アイシラは俺が突き放すまで、俺の傍にいてくれたのに。

……俺の傍にずっといてくれて、可愛くて、表情豊かで。
さらには未来の妃としても申し分ない。




アイシラと婚約破棄する理由があるのか?




「俺……父上!俺っ……アイシラが欲しいです!アイシラと結婚したいです!」




国王陛下の顔が引き攣った。

「リ、リカ……何を言っているんだ」

精霊王が声を上げて笑った。

「いやぁ、王子様。君は恋多き男だねぇ」

皮肉で言ったにもかかわらず、それに気づかないリカ王子はそれだ!という顔をした。

「そうだ!俺は愛情深い男なんだ!だから今までのアイシラを俺は許す!」

「でもアイシラはもう俺のお嫁さんだからなぁ。今まで君にも十分チャンスはあっただろう?」

「あんな鉄仮面のような女好きになるわけないだろ!俺とお前ではフェアではない!俺がアイシラとのやり直しを求めるのは当然の権利だ!」

リカ王子は父親に協力を求めようとした。

だがさすがに息子に甘い陛下でもそればかりは協力できるはずがなかった。

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