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虐待がおさまることもなく、オリビアは16歳になった。
ある日突然今まで住んでいた塔から連れ出された。
塔の外へ出るのは何年ぶりだろうか。
あまりにも幼い頃のことでオリビアはほとんど覚えていなかった。
覚えているのは優しい祖父と、冷たい父。
そして、最期まで深く愛し続けてくれた母。
それも覚えているのはごくわずかだったが。
オリビアは王の間へと連れて行かれた。
そこには玉座に座った父がいた。
その冷たい視線は記憶の中のそれと、あまり変わりがない。
オリビアは深く頭を下げた。
「よく来たな、オリビアよ」
その言葉に耳を疑った。
「え、あ、はい……えっと、お、お父様……」
お父様と呼ぶのは初めてだった。
合っているだろうか、この呼び方で。
頭を上げ、ちらりと父の顔を見て絶望した。
あからさまな嫌悪がそこにあった。
父は深々とため息をつき、「まぁいい」と呟いた。
「今日ここに呼んだのは他でもない。お前に頼みがあるのだ」
頼み?
父が私に?
ずっと捨て置かれた存在だった。
まともに会話する相手もおらず、ずっと孤独だった。
誰かに傍にいてほしい。
誰かに必要とされたい。
誰かを愛し、愛されたい。
父は私に頼みがあると言った。
必要とされる。
私が、父に。
父は母を見殺しにした人。
死に追いやった人。
それなのに。
どうして嬉しいと思ってしまうんだろう。
あまりの孤独にオリビアはもう分からなくなっていた。
それほどまでにオリビアの心はズタズタだった。
孤独に耐え、義母からの虐待に耐え、心がひたすら愛に飢えていた。
「オリビアよ、お前の存在が役立つ時が来た。お前にしか頼めないことだ」
「はい、お父様」
父はごほんと咳払いをし、告げた。
「隣の国へ死にに行ってくれ」
「え……」
今、なんと……?
「引き受けてくれるな、オリビア」
「ちょ、ちょっと待ってください、お父様……」
はぁぁと父はまた深いため息をついた。
「お父様お父様と……いや、そうだ。確かにお前は私の娘だ。そんなお前にしか頼めないことだ。光栄なことなのだぞ」
「何故私が死ななければならないのですか」
「この国はな、戦争に負けたんだ」
忌々しげに父は今のこの国の現状を話した。
ある日突然今まで住んでいた塔から連れ出された。
塔の外へ出るのは何年ぶりだろうか。
あまりにも幼い頃のことでオリビアはほとんど覚えていなかった。
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オリビアは深く頭を下げた。
「よく来たな、オリビアよ」
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「え、あ、はい……えっと、お、お父様……」
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頼み?
父が私に?
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「何故私が死ななければならないのですか」
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忌々しげに父は今のこの国の現状を話した。
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