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出会いイベント ライリー編 おまけ

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【ローズ】

はぁ……今回も失敗……。
しかも私のせいで……。

失敗ばかりでこれから先の展開に不安が募る。

腕の中のアランは「どうしたの?」という無邪気な顔でこちらを見上げている。

そんなアランをぎゅうっと抱きしめる。

いいのよ。
あなたは悪くない。
あなたを利用しようとした私が悪かった。

ごめんね、アラン。

きっと何も分かっていないだろうけど、それでもアランは抱きしめられたことが嬉しかったのか、楽しそうに「わんっ」と鳴いた。

「いつまでそうしているつもりだ?」

いつまでもアランを抱きしめる私からライリーが無理やりアランを奪いとった。

「あら、いいじゃない。もうドレスも汚れたし」

「そういう問題じゃねぇだろ」

ライリーが地面にアランをおろすと、アランは不満そうに鼻をならした。

「生意気な犬だな」

ライリーはしゃがんでアランに手を伸ばすと、そのもふもふの毛をくしゃくしゃにした。

「ち、ちょっと……」

「これ以上ローズを好きな奴はいらねぇんだよ」

どういう意味?

「それ、どういう……」

「お嬢様が服を泥だらけにしてんじゃねぇ」

ライリーは何故か顔を赤くし、私の言葉を遮った。
そして懐からハンカチを取り出し、泥がついたところを軽くはたいてくれた。

「ありがとう」

って、それメアリーが受け取るはずだったハンカチー!!

あぁー……。
私のせいでライリーとメアリーの恋路が……。

「なんだ、その顔」

ぷっとライリーが笑った。

「笑ったり、怒ったり、青ざめたり……忙しいな」

素敵な笑顔……。
誰もが見とれてしまう笑顔。

でも、私は知ってる。
心の中で泣く。

これはスチルだ。
ゲームの中で悪役令嬢に嫌味を言われた二人だったが、メアリーがさすがにライリーに対してひどすぎると悪役令嬢にぶち切れる。

それを見たライリーは笑う。
「泣いたり、怒ったり……忙しいやつだな」って。

攻略対象たちのスチルを生で見られて幸せ。
でも、見せる相手が違うのよぉ。

私は悪役令嬢なんだからぁ。




【ライリー】

ほんとにローズはころころと表情がよく変わる。

その感情のそれぞれのきっかけはなんなんだろう。

犬と戯れるのが楽しくて、笑った。
俺が犬をもみくちゃにしたから、少しだけ怒った。

俺がハンカチで泥をはたいてやったから、青ざめた?
この理由はよく分からない。
俺のハンカチが汚れるから?

全てを知りたい。
ローズの胸の内にある全てを。

いや、分かっている。
本当はそれだけじゃ足りないってことは。

その感情全てのきっかけが俺であればいいのに。

そんなどうしたって叶わないことを思ってしまう。

だってずるいじゃないか。
俺の中の人間らしさは全てローズが認めてくれたもの。
だから俺の感情は全てローズに関わるもの。

それなのにローズはたくさんの人を魅了する。
俺が全てではない。
あんな小さい犬っころさえも懐かせて。

だから思わず口から出た。
「これ以上ローズを好きな奴はいらねぇんだよ」って。

お願いだからこれ以上……。

「まぁ!」

ローズの友人メアリー嬢が突然声を上げた。
見ればアランが今度はメアリー嬢に飛びついていた。

もちろんローズと同様そのドレスは泥まみれなわけで……。

このバカ犬が……。
そんなことしたらローズが……え?

慌てて怒るか、悲しむかするかと思ったら、ローズの目は何故かきらきら輝いていた。
喜んでいる?
なんで、どうして?
全てを知りたいのに答えが出ない。

「大変だわ、メアリー!早く着替えなくちゃ!ほら、早く!ライリー、付き添ってあげて!」

俺が?
なんで?

「早く!」

「あ、あぁ……」

よく分からないが、ローズがそう言うなら……。

頭に「?」が浮かびながらとりあえずローズの部屋へと連れていく。

道中、メアリー嬢に謝罪する。

「申し訳ありませんでした。私が犬から目を離したばっかりに」

「いえ、大丈夫ですわ」

メアリー嬢は気分を害した様子もなく、むしろ上機嫌のようだ。

「なんか嬉しそうですね」

「えぇ、もちろんですわ!だって……」

メアリー嬢の頬が薄く赤に染まる。

「だって、ローズ様のドレスをお借りできるんですもの!」


勘弁してほしい。
ローズ、あんたって人は本当にどこまで人を誑し込めば気がすむんだ。

俺にはあんただけだっていうのに。
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