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30 お風呂★

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「お風呂?」
「えぇ、一緒にどうです? 血行が良くなるので先生にも推奨されてるんですよ」

 結局抱き合っているうちに離れがたくてそのまま眠ってしまった私達。私は元々寝る体制だったので問題ないが、晴人さんはお風呂に入りそびれてしまっていた。そこで洗面だけ済ませて戻ってきた晴人さんに提案されたのがそれだった。
 私はすぐには答えず考え込んだ。いくら番になると承諾したからといっていきなり一緒にお風呂に入るのは躊躇われる。血行が良くなることで骨折に良いという説は分からなくもないが、単に私とお風呂に入りたいだけなんじゃないのかと疑ってしまう。
 第一先生が診察に来た時そんな話は全くされなかったし。
 私が疑っているのが伝わったのだろう、晴人さんは苦笑いして私の足元を見た。

「疑うのもごもっともだとは思いますが、本当ですよ。ただ一人では危険なので介助が出来る俺にしか話していないだけだと思います」
「あー……。なるほどね」

 確かに治ってきているとはいえ松葉杖が無いと歩けない状況で一人で湯船に入るのは自殺行為だというのは考えなくても分かる。かなり治ってはきているが固定具はまだついたままだし、あばらだって未だに体勢に気を付けなければ傷む。うっかり足を滑らせでもしたら大変な事になるだろう。

「でもここシャワーしか付いていなかったと思うんだけど」
「奥に扉があったでしょう? 危険防止で普段は閉鎖しているんですがあの奥に湯船があります」

 秘密を明かすように鍵を見せてくれた。

「何故わざわざ鍵を?」
「一見元気に見えるような患者の中には、医者の許可も出て無いのにお風呂に入りたがる方は結構多いんだそうですよ。なのでドクターストップが解けるまでは患者にもその番にも秘密にしているそうです。医者の許可なく患者の番を湯に入れてしまい病状を悪化させた事例があったそうですよ。馬鹿な事をとは思いますが気持ちは分かるので何とも言えません。番に我儘を言われたら俺達獣人は叶えたくなってしまうものなので」
「……」

 呆れてものが言えないとはこの事だ。元々ちょっと思っていたけれど獣人ってちょっと馬鹿なんじゃないかなと思う。

「俺も昨日鍵を貰ったばかりなんですが、さっき準備をしに中に入ったら結構広くて快適そうでしたよ」
「入る」

 彼の言葉に好奇心をそそられて承諾してしまった。
 彼の介助が無くては入れないのならしょうがない。バスタオルできっちり身体を隠して入れば良いという事で我慢しようとベッドの縁に座って松葉杖に手を伸ばそうとしたところで、衣擦れの音と共に急に薄暗くなった。不思議に思って振り返ると晴人さんが遮光カーテンを閉めた所だった。

 何故カーテンを? と思っていると、ベッドサイドに戻ってきた晴人さんが私のパジャマのボタンを外し始めたので仰天して彼の手を握り締めて止める。

「ちょっと何してんのよ」
「何って脱がせてるんです。お風呂に入るんですから脱がないと」
「自分で脱衣所に行って脱ぐから先に入っててよ!」

 もう松葉杖を使って病院内をうろつけるぐらいに回復しているのだ、なるべく自分の事は自分でしたい。第一恥ずかしい。
 それに、ここで脱がされたら出入口付近にあるお風呂まで全裸で移動する事になる。

「ちょっと脱がさないでばっあっ痛た! うぅ」
「あぁ、暴れないで下さい、傷に響きます」
「誰のせいよ! あ、脱がさないでってば」

 身をよじって逃げようとしたらあばらに響いて動きが阻害されて呻いていると、呆れたように宥めながらボタンを全て外されて下着を身に付けていない上半身が晒されてしまった。肋骨の為の固定具が乳房の下、鳩尾を覆うように巻かれているのが胸を強調しているようで更に恥ずかしい。
 それを隠そうとパジャマごと巻き込むようにして腕で身体を守ろうとしたら、今度は上半身を倒されてズボンも下着も纏めて引きずり下ろされて抜き取られてしまった。

「やだぁ」

 全裸にパジャマの上だけを羽織っただけの姿にされて恥ずかしくて、身体を横向けて身を守るように丸めた。
 しかし、然程裾の長くないパジャマでは腰の下辺りまでしか隠せず、お尻が丸見えの情けない格好になってしまっている。
 羞恥に半泣きになっていると、覆い被さった晴人さんが宥めるように髪を撫でながら米神に唇を落とした。

「瑠璃さん可愛いです、とても綺麗だ」

 頰にも唇を落とし、掬うように私の顔を上に向けると唇を合わせた。








 
 




 


 
 
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