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彼女
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しおりを挟む泣きながら、違う、違うよって髪が乱れるのにも構わず、一生懸命にオレに弁解する。
「あれは、最近真白くんがあんまり構ってくれなくなって…っ、だから、」と食い下がろうとする彼女を、見下ろす。
「だから、…浮気、した…?」
「…っ、」
彼女の言葉の続きを、口にする。
虚を突かれたような反応が、涙に潤んだ瞳が、逸れる視線が、答えだった。
そのわかりやすい態度に、つい苦笑してしまう。
記憶がないから、余計に思うのかもしれない。
別に、そんなに悲しい顔をしなくてもいいのにって。
「ごめ、なさい、でも、好き、好きなの、真白くんが、好き、許して、お願い、許して…っ」
「……」
もし、記憶を失ってなかったら、…今、この事実を知って、想像もできないほど悲しくなっていたんだろう。それは彼女のことを好きであればあるほど、大きかったはずだ。
だけど、今のオレには、…そこまでの感情はない。
「いいよ」
「…っ、」
浮気をされたらしい自分のことより、泣いて縋ろうとする彼女に同情さえしてしまう。
こんな全てを置き去りにした自分のために、ここまで取り乱すなんて可哀そうで、慰めてあげたいなって思ってしまった。
「わかったから、泣かないで」
「ま、しろくん…っ、」
泣いてばかりいる彼女に、困り果て、笑みを零す。
頭をなでると、…なんだか、少し懐かしい感じがした。
「…オレの方こそ、ごめん」
「…っ、?」
謝罪の言葉を零せば、彼女が目に涙を貯めたまま不思議そうな顔をする。
…覚えてないんだ。
そうやって、一生懸命に言ってくれても、…きっと今のオレではわからない。
もしかしたら、オレが彼女に何かして、浮気の原因になったことがあったとしても。
彼女と、これまでどんな日々を過ごしてきて、どれぐらい好きだったのかも。
全部、覚えてないんだよ。
(…だから、)
少し、緊張する。
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