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彼と俺の終わり

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車に当たった瞬間、笑っていたのはこの男だったはずなのに。

どうして、そんな顔をするんだろう。


「なぁ、春樹……っ、嘘だろ?嘘だって言えよ……!!」


綺麗な顔をこれでもかと言うほど、憎悪と悲哀に歪めている。
その瞳から零れてきた涙が、降ってくる。
とめどなく溢れて、俺の頬にたれてきたそれはシーツを汚していく。
恨みのこもった瞳。
でも、悲しそうな瞳。
首を絞める手に、力が込められる。


「ぁ…… がっ」


涙がこぼれる。
どくどくと音が耳に響くほど、首の脈が悲鳴をあげている。

苦しい。酸素が足りない。
頭がガンガンする。
世界の音が遠ざかる。
口の端から唾液が零れた。

俺、ここで死ぬのかな。

なんて、他人事のように思った。


「…っ、お前が、…っお前が言うから…っ、俺は…ッ!」


そいつは泣きながら言う。
今までの俺に対する恨みを、歪んだ執着を、言葉にして吐き捨てた。

お前が言うから、アイツと話した。
お前が言うから、アイツと付き合った。
お前が言うから、アイツとデートした。
お前が言うから、アイツに笑った。
お前が言うから、アイツを好きになった。
お前が言うから、アイツを抱いた。

お前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が言うからお前が…………!!!

全部お前のためにやったことなのだと、俺を責める。
子どもみたいに泣き叫んで。
喚いて、訴えてくる。
顔にボタボタと垂れてくる涙が、あたたかい。

俺を突き飛ばしたくせに、殺そうとしたくせに、何故か被害者のような、俺より痛い目にあったような悲痛な表情で歪に俺をみて笑った。

はじめてみる、表情。


「あんなにお前の言うことばっかり聞いて、イイヤツでいたのに、お前が女と付き合うなんて言うから……っ」



顔も良くて、勉強もできて、運動もできて。そんなコイツがどれだけ多くの女子に告白されても見向きもしないから、俺は「付き合ってみたらいいのに」と軽くいっただけだった。

…もしかしたらそれ以外にも色々言ったのかもしれないけど、記憶に残ってない。それほど、軽い言葉だった。


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