手足を鎖で縛られる

和泉奏

文字の大きさ
上 下
772 / 786
飼い殺し

22

しおりを挟む





予想できなかったことに驚き、腕で庇おうとして意識がそれた瞬間にまた殴られた。


「利用してやろうと思って使ってやったのに、失敗しやがって…っ!挙句の果てには殺しかけた相手にくーくんくーくん何事もなかったみたいに媚びてすり寄りやがって、ふざけんじゃねえよ…っ!!!」

「殺さない…っ、おれが、殺そうとするわけ、…っ、」


ない、はずなのに、
身体が、異様に顫動するように震える身体が、何かを蘇らせようとしてくる。

怖い。怖い。怖い。

目を開ければ、再び首を鷲掴まれた。


「今度こそ、アイツを殺して俺の元に戻って来い。家畜」

「家畜、じゃな、…っ、ぃ…っ、おれは、違、」

「俺を自分のモノにしようとしてその”くーくん”に何をしたか、幾ら忘れたふりしたって事実は変わんねえんだよ」

「…っ、ぅ、ぁ、あ゛、」


知らない人のはずなのに、身体が反応する。
何故か命令以上に強制力を感じる言葉に、その手を取ってしまいそうになる。

それ以上、聞きたくない。
この人と、もう何も話したくない。

見たくない。
知りたくない。
分かりたくない。

……思い出したく、ない。


「もう、お前が戻れる場所なんて俺以外にねえんだよ」

「…っ、おれは、くーくんに、くーくんの傍に、」


ぼろぼろとわけもわからず涙が零れる。

戻れる。
まだ、彼の隣にいられるはずだ。
まだ、何も知らないから、大好きなくーくんと一緒に


「アイツは、もうすぐ死ぬ」

「……ぇ、?」


死ぬ?

ありえない言葉に、脳がシェイクされたように揺れる。
でも、いや、まさか聞き間違えだろうと思いなおし、「アイツ、って」と呟けば、答えはすぐに返された。


「お前の言う”くーくん”に決まってんだろ」


「……………っ、………………………………は、」



飲みこむのに時間がかかって、はは、と思わず笑ってしまった。


「くーくんが、死ぬ…?そんなはずない…っ!だって、ついさっきも、普通に話して、」

「そう見えてるだけだ。アイツがそういう育ちだってことは知ってんだろうが」

「……っ、」

「アイツは、ずっとそう父親に教育されてきた。痛い、悲しい、苦しい、辛い、寂しい、って負の感情だけじゃない。幸せだ、嬉しい、それらも含めた喜怒哀楽全てのどの感情を出すことのない『人形』になるために」


「どれだけ痛くても、辛くてもそれを感じないように、表に出ないようにさせられて、ずっと、そうして生きてきたんだ。だから、もしかしたら今我慢してる自覚もないかもな」と嘲笑って吐き捨てる声。


確かに酷い発熱をしていた。それでも、何もないって、彼は否定して――――、

でも、だけど


「うそだ、そんなはずない…っ!くーくんはこれからも生きてる…っ!!死ぬわけない…っ!!」


首を振る。
全力で否定する。

これを肯定してしまったら、どうなる、
ありえない、ありえない、


しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...