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しおりを挟むもっと簡単にしてくれると思ってただけに、本気で気持ち悪がられているのかも…と段々不安になってきて、でもやっぱりやめた!なんて言い出せないから「…あ、あの」と中途半端に声をかけた。
…すると、
「…後悔、しても知らないからな」
耳に届く…真剣で、少し低めの声音。
いつもとは違う雰囲気を感じて、ゾクリと背筋が震えた。
けど、呟かれた言葉に…どういうことだ、と振り返る。
そしてハッとして顔を戻そうとした瞬間…少し伏目がちに近づけられる、綺麗な顔。
「…え、……」
「………」
軽く顎を掴んだ指に、クイと持ち上げられて
至近距離で目が、合う。
「…っ、ぁ、…」
逃がさないというように鋭く光る、まるで獣みたいな瞳に…息を呑んだ。
全身が、凍り付いたように動かなくなる。
どうにかこの空気を変えようと、呼びかけようと、して、
「…くー、…く……っ、ん…っ!?」
「……、」
塞がれる、唇。
数秒たって実感する、…そこに押し付けられている柔らかい感触に、
思考が停止した。
(…え、…え……?)
驚いたまま、目を見開いて、
しかも、くーくんもこんなことをしてくるくせに何故か目を閉じないから、そのいつもみたいに優しく笑ってなくて真剣で、
……なんだか凄く大人っぽい瞳に、バクバクとなる心臓とうわ、わわという心境で反射的にこっちが瞼をぎゅっとキツク閉じた。
まさか本当にやるとか思わなくて、なんて嘘だけど、っていや嘘じゃない本当にやってくれると思わなかった!!!と動揺100%で反射的に閉じた唇を割るように捩じ込まれた舌に、頭がおかしくなりそうになる。
「……は…っ、」
「…ふ…ッ、ん…」
なんだか熱くて、ぬるりとしたソレが、おれの舌に軽く触れてくる。
舌に擦りつけるように一緒に錠剤を押し込まれて、コロンと口腔内におちてきた。
そして、それを確認して、解放される唇。
しばらく呆然として、忘れていた呼吸を浅く開始する。
(…び、びびびっくした…!)
と、離れてもまだ緊張が解けなくて、そっと薄目を開けると、
……もう既にくーくんは次の行動に移っていた。
水の入ったコップを傾け、その縁に口をつけてあおるようにして飲んで、…じゃない、口に含んでいる。
「…ぁ、」
…そ、そそそそうだった。まだ水っていうものがあったんだった!
自分から要求したくせに、いざとなると完全にへっぴり腰になっていた。
近づいてくるくーくんから錠剤を口に入れたまま、ぎゃあああと内心パニック状態で、タンマ!と休戦を提案しつつ逃げようと、して
「…ッ、ひょ、ひょっと、ま…ッ、んん…っ、」
当然、無理だった。
また唇を塞がれて、息が止まる。
「……ん、」
「…、ふ…んぐ…っ」
今度はさっきとは違う。微かに開いた唇の隙間から水が流れ込んできて、まだ水を飲みこんでもいないのにわざとなのか一瞬舌が歯茎をなぞる。
「……っ、ふ、」
でもまだ水を渡しきれてないんだから、ほとんどが唇の端から零れ落ちていくのが当然で
そのせいで顎を伝って大量の水が落ち、肌と浴衣を濡らして、
「…ッ、ん゛…っ、ふ、ぁ…ッ、」
「…っ、は…」
「……、ふ、…っ、ん…ッ、」
……完全に薬を飲むことなんかそっちのけで、口腔内をやりたい放題貪り荒らされた。
ぼたぼたと床に落ちた水を気にもしないで、吐息を零しながら更にキスが激しくなる。
いつの間にか顎を掴んでいた手が後頭部に回されていた。
次第に息が苦しくなってきて、探り当てた服をぎゅっと掴んで、しがみつく。
(…おか、しく、ない…ですか…!!)
このままだと心臓が、心臓が爆発する…!!
酸素不足とか色々その他のせいで服を掴んだ手が、ぶるぶると震えてきた。
舌は器用に薬を避けるようにして口の中を弄んでくるし、だからっていって、おれだって、……離れたいわけじゃないし、ってことで、
…結局、…くーくんの気が済むまで、そこを好き放題され続けたのであった。
やっと離れた唇に、酸欠でぼうっとする頭でとりあえず息を整えながら濡れた唇と顎を浴衣の袖で拭う。
「どう?ちゃんと飲めた?」
「…っ、の、飲めるかぁ!!」
悪戯っぽい笑みを浮かべて、してやったりな表情を浮かべるくーくんに、ぜーぜーとほとんど窒息状態で文句を言う。
飲ます気なんか絶対になかった。
「でも、まーくんが俺に飲ませてって言ったんだからな」
「…だ、だけど、」
「飲ませ方は人それぞれ」
「うぐ、」
確かにあれだけキスしまくってたせいか、熱くなった口の中にあった錠剤は大半が溶けた。
さっき飲み込んだ薬の味を思い出して、…確かに、飲んだ…から、「嘘つき!」とは言えずにがるると唸るだけになった。
(……………)
唇に残る感触に、そこに、指で触れて、
「…う、ううう…!!!」
ボフン、と顔が真っ赤に爆発する。
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