593 / 804
現在
17
しおりを挟む「……ぐ、」
なんか、ムカついた。
どうにか応戦できまいかと考えに考えあぐねた結果、ぐぎゅ、と眉を中心部に最大限まで寄せて、ぷいとくーくんと逆方向を向く。
「…口移し、して」
「…え、」
「薬!じゃないと、飲むのやだ!」
絶対にやだ!と身体まで反対方向を向いて、つーんと拗ねてみせた。
可愛いばっかり言うから、せめて口移しって言ったらなんか可愛いじゃなくて…大人っぽくなれるような気がして、だからそれを要求してみる。
だけど、怒ってるおれになんか全然怯まずに怒りを収めようと普段通りに頭を撫でてくる手。
「ごめんって。まーくんが可愛いから、つい揶揄いたくなったんだ」
「…っ、」
なでなでしてくるから、一瞬ほだされかけて、だめだだめだ!と首を振って振り払った。
しかもまた可愛いって言った…!!許せぬ。
窺うように覗き込んできた顔とは反対方向を向く。
ぷい
「まーくん、ごめん」
「……」
ぷい。
「…ごめん、」
「……ふん」
ぷい。
「…まーくん、」
「おれが許すのは口移し限定です!それ以外は認めないです!」
変な敬語になりつつも、精一杯怒ってるんですオーラを醸し出して、早くしたまえと催促した。
「……」
「やらないなら、くーくんのことだめだめ男認定しちゃうからね!」
最早自分でも何でこんなことを言い始めたのかわからなくなってきた。
最初は可愛いって言ったことを後悔させるための行動だったはずなのに、なんだか口移しをしたいがために怒っているふりをしているような気さえしてきた。
……ん?おれ、くーくんとキスしたかった…だけ…なのか、な?
と自分がしたかったことさえぐちゃぐちゃになってきて、混乱してくる。
けど、一度始めてしまっただけに後には引けない。
「?」「?」と一人で困惑して、まぁいいやと考えを放棄する。
そして、さっきまで何度もおれを追いかけて覗き込んできていたくーくんの姿がなくなったことに気づいた。
同時に…いつの間にか部屋を包み込んでいた沈黙。
(……、)
…ちょっと気になって薄目を開けて、いっそのこと振り向いてしまいたいのを我慢する。
「……」
…もしかして、怒らせただろうか。
ちょっと調子に乗り過ぎた。
そんなに、おれに口移しするの嫌だった…?と若干泣きそうになってくる。
61
お気に入りに追加
1,088
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
無自覚な
ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。
1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに
イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。
それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて
いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外
何をやっても平凡だった。
そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる
それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない
そんな存在にまで上り積めていた。
こんな僕でも優しくしてくれる義兄と
僕のことを嫌ってる義弟。
でも最近みんなの様子が変で困ってます
無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる