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…………
「…――あ゛、ぁ…っ、は…ッ、」
叫ぶような自分の声で目が覚めた。
バクバクと異常な鼓動の速さとその大きさに眩暈がする。
身体全体を何か…虫が無数に這っているような痒さといっそのこと悲鳴を上げて悶え苦しみたくなるくらいの激痛。
ガリガリ、
ボリボリ、
我慢できなくて、痒くて掻き毟る。
爪に赤色の皮膚が抉れて残った。
「くーくん、くーくん、どこ…」
暗い部屋の中、視線をゆらゆらと彷徨わせる。
最早意識するよりも、唇から零れる名前。
動くだけで痛みに声が上がるけど、でもそれでもくーくんが傍にいてくれたら痛みなんか吹き飛んじゃう気がした。
ぺたぺたと、床に手を這わせながら四つん這いで探す。
(…足りない、)
胸が、心臓が、ざわざわと音を鳴らす。
足りない。足りない。
何が足りないのかもうまく説明できないけど、内側から侵食してくる空っぽな感覚が全身に広がってきて、…息が、詰まる。
手が障子に辿りついた。
この部屋のどこにもいないことがわかると、「…っ、ぁ、や、だ…」部屋に気の遠くなるような焦燥感と寂寥感に急き立てられて、手を床について腰を上げた。
体重をかけた瞬間、立ち上がれない程全身が狂ったように痛くなって、思わず床に膝をつく。
もう一回…、と頑張って立って、カラカラ…と横に引いて部屋を出た。
温かい夜の風が全身を撫でて、裸足で廊下を歩いた。
浴衣が着崩れているせいで、だらだらと下がってきて足で踏んづけそうになってしまう。
(…くーくん、くーくん…は、)
いない、いない…?段々と瞼の裏を熱くする涙に、きゅ、と唇を噛む。
それだけじゃなくて、廊下には人影が一つもなかった。
足を速めて最早半泣きで探しながら、
…次第に夢心地だった意識が薄れてくる。…あ、と足を止めた。
(…そうだった。今いないんだった)
「いない、」…と小さく呟いて、まだ帰って来てないんだということが分かった瞬間、涙が零れる。そしてずっと殴られているような痛みに耐えかねて、その場にしゃがみこんだ。
「…っ、」
やっぱり、おれはくーくんと会ったことで…会う前よりもずっと弱くなってしまった。
そう実感して、じわじわーっと視界が滲む。
…と、
「どうかされましたか」
「…ぁ、」
声に反応して顔を上げれば、黒服の人がこっちを見下ろしていた。
知らない人だということに加え、無機質な声。
反射的にビク、と肩が跳ねて、少し怯える。
慌てて、目を袖で拭いながら首を振った。
「…お、おれ、ごめん、なさい…っ、だいじょうぶ、です」
心配してくれたのかもしれない、と少し嬉しくなって自然と笑みを浮かべながらお礼を言う。
そうすると、男の人の視線が顔からすっと下にずれて、何故かおれの身体をなぞるように動く。
「…肌に血が滲んで…、痛そうですね。手当、してあげましょうか?」
「…っ、あ、の…?」
答えるよりも早く腕を掴まれて、引かれる。
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