手足を鎖で縛られる

和泉奏

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過去【少年と彼】

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…でもそれには答えずに、指を少し動かすと「…っ、ひ…っぅ…っ、」と厭らしい声を漏らしてその頬がじわじわと紅潮する。


(……本当、俺が危ない人だったら襲われても仕方ない表情してるんだけど…)


本人に自覚がないから余計に心配になる。


「…っ、ひぁ…っ、や…っ」

「……」


そのまま今度は少し強く硬い部分を服に擦らせるようになぞると、またビクビクと小さく震える身体。
快感が強すぎたせいか腰が逃げるように少し後ろに引いた。


「…気持ちいい?」

「…っ、わ、わかんな…っ、」


頬を見ると赤く染まって、上気している。
…ただ泣いただけの時とは少し違う様な、明らかに感じてる…そんな雰囲気に

ゴクンと唾を飲みこむ。


(…やばい)

なんで真冬が”おもらし”をしたのか、その意味を完全に理解して胸がドキドキしてきた。


「…っ、ひ…っ、どう、しよ…っ、くーくん…っおれ、の、おかしく、…っなっちゃっだぁあ…っ」

「っ、」


俺が触ったことに対して怒るわけでもなく、ぎゅううと縋るように泣きながら抱きしめてくる真冬の体温を感じて、じわじわとこの場にそぐわない感情で胸がいっぱいになる。

…どうしよう。


「…っ、」


(…すごい、嬉しい…)

こみ上げる喜びに思わず手で口元を覆って、相変わらず潤んだ目で純粋に見上げてくる真冬から顔を逸らす。
頬が熱くなるのを感じる。
口元が緩むのをおさえられない。

…真冬が俺とキスして、射精した。

(それも、初めて…)

じわじわと胸に広がる喜びに身体が震える。
嗚呼やばい。
まだ不安で泣いているその小さな身体に腕を回した。
抱きしめながらそのやわらかい髪を撫でてふ、と微笑む。


「真冬」

「…っ、ひっく…、ぅ…?」

「だいじょうぶ。真冬はおかしくない」


手の甲で頬の涙をぐじぐじと拭ってやる。
ぷにぷにしてて可愛い。
白い頬が泣いたせいで赤くなっていた。


「…っほんと?」

「うん。むしろ俺は嬉しいけど」


多分今そういう精通とか説明したって理解できないだろう。
だから敢えて説明しないことにした。

(…罪悪感で泣く真冬ってなんか可愛いし)


「…っ、うれ、しい…?どうして?」

「んー、…ないしょ」

「…むぅー…いじわるー」

「もっと真冬が大きくなったら教えてあげる」


どうしても知りたいのか、ゆさゆさと胸元を掴んだ手で揺らしてくる。
「くーくんおしえてー!」っていう真冬に「だーめ」と首を横に振って却下するとぶうううとかなりむくれて怒ってた。

想像してみる。
もっと後、多分真冬はその時すごく動揺して真っ赤になるだろう。
その時の顔が楽しみで堪らない。


「数年後、意味を知った時の真冬は絶対可愛いだろうな。…だから、今は内緒でいい?」


こっちを見上げてキョトンとする真冬にへへと自分で驚くぐらい珍しく御機嫌で笑いかければ、ぷいと顔を逸らした。
何故かもう涙は止まったはずなのにその頬がぶわっと赤くなる。


「…っ、くーくんは狡い」

「…?何が?」

「……っ、な、なんかそのときまでずっといっしょに、いる、みたいな…こと、いうから…」

「……」


自覚してなかった。

…確かにそう言われてみれば、そういう風に…聞こえなくもない。
というか、むしろそうとしか聞こえない。

自分の発した言葉の意味を理解した瞬間、羞恥心で顔が熱くなった。
そんな俺を見て更に真冬の頬が赤くなっていく。


「……その、違うから。そういう意味じゃ、なくて」

「…う、うん」


気まずい沈黙。



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