手足を鎖で縛られる

和泉奏

文字の大きさ
上 下
382 / 786
吐き気と、暴力と、

会いたくて、会いたくて、会いたい。

しおりを挟む



緩慢な動作で顔を上にあげれば、突然性器を何かが包み込んで、ぎゅっと握られる。

目の前で火花が散る。


「…ッ、いだ…っ、ひ…ッ!!ぐ…っ」

「あー、やっぱ薬打ち過ぎた。無理矢理勃起させ過ぎたみたいだな。こっからも血が出てるじゃねえか。汚ぇ」


上下に擦られれば、条件反射のように血流が一気に性器に集まって欲を放った。
何度も暴れたせいで、手首と首と足首に出来た傷が枷に擦れて痛む。


(…っ、痛い、痛い…ッ)


精液と先走りでグチャグチャだからきもちいいはずなのに、それに勝るほど痛みが性器を襲ってきた。


「おら、汚い精液が御主人様についたぞ?なめろ」

「…ッ、ふぐ…ッ」


口の中に無理矢理指を突っ込まれて、手についたソレを塗り付けるように口内を指で荒らされる。

息ができなくて、苦しくて、苦痛に声を上げて涙を流せば、それに満足したように笑った御主人様は指を引き抜いて、言葉をつづけた。


「家畜。今日はお前に特別サービスな餌をやろうと思って、その話をするために来た」

「…えさ…?」


地面に倒れ込んでその声の方向に視線を向ければ、声は「ああ」と頷いて笑う。
なんだろう、と期待よりも、喜びよりも、むしろ警戒しながら続きの言葉を待つ。


「お前、一之瀬蒼に会いたいんだってなぁ?」

「…っ」


予想しない言葉に、思わず息を呑む。
そして、久しぶりに誰かの口から聞く懐かしいその名前に、思わず涙腺が緩んだ。


「な、んで…」


蒼の話は一度もしたことないはずだ。
そんな俺の疑問の声を無視して、声が俺に問う。


「今でも会いたいか?」

「…っ」


会いたい。会いたいに決まってる。
会いたくないわけがない。

でも。

それをこの場で口にしていいのか、わからなくて黙り込んでいると痺れを切らしたのか後頭部の髪を掴んで引っ張られる。

引っ張られる皮膚が焼けるように痛い。


「ぁ…ッ、ぁ゛あ…ッ」

「おい、家畜。答えろ」

「…ッ」


苛立ちを含んだ声に、ビクリと身体が震える。

熱い涙を零しながら、言葉を吐いた。


「…っ、………あい…たい…ッです…っ」


蒼に、会いたい。

何千回、何億回、もはや数えきれないほど心の中で望んだ。

けど、そんな願いは叶いそうもなくて。

もう一度蒼に会えるはずなんかないと、もうあきらめていて。

だから、言葉になんかしなかった。


(……でも、)


一度その欲求を言葉にしてしまえば。

口から吐き出してしまえば。

もうとまらないほど大きな感情に襲われる。

痛みとは違う涙が、眼球をじわじわと熱くする。


「あいたいです…っ、あおいに…ッ、あいたい……ッあいたい…っ」


あいたい。あいたい。あいたい。あいたい。

髪から手を離されると同時に、顔を手で覆ってひっくと嗚咽を零してしゃくりあげた。

だめだと、こんな無様な格好をさらしたら殴られるとわかっているのに、一度溢れた感情はどうやってもおさまらない。


「…ッ、ひ…、く…ぇ…ッ」


手首から伸びた鎖が、嗚咽を零すたびに耳障りな音を立てる。


あいたい。あいたい。


もう一度「まーくん」って呼んでもらって、もう一度あの少し寂しげな、でも優しい表情で微笑んで、頭を撫でてほしい。抱きしめてほしい。


…もう一度、好きだと言ってほしい。



(蒼…っ)


締め付けられるような苦しみに、胸が痛い。

頬から流れた涙が、裸の脚にぼたぼたと足におちる。


「家畜」

「…っ」


その低い声音に、殴られる、と反射的に身体を強張らせる。

しかし、返ってきたのは思いもよらない言葉だった。


「そんなに会いたいなら、お前を一之瀬蒼に会わせてやろうか」

「…え?」


ずっと望んでいて、

ずっと願っていたことを、

さらりと口にされた言葉に、思わず期待に満ちた声を上げてその男の方に視線を向けた。



しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

童話パロディ集ー童話の中でもめちゃくちゃにされるって本当ですか?ー

山田ハメ太郎
BL
童話パロディのBLです。 一話完結型。 基本的にあほえろなので気軽な気持ちでどうぞ。

処理中です...