316 / 804
不良と
14
しおりを挟むそう思わせてしまったことが、申し訳なくて、辛くて、ごめん、ごめんと謝る。
蒼は何も悪くないのに、
そんな顔、させたくなんてなかったのに。
結局巻き込んでしまった。
……最後、あんな怒り方をして避けてしまったけど。
やっぱり蒼が近くにいると安心する。嬉しい。
そんな感情が胸に広がって、ほうっと肩から全身から力が抜けた。
「あと少しで全部終わるから、」
抱き締められたまま、彼の体温を感じる。
そう小さく呟き、ひっく、ひっくと嗚咽を漏らしながら泣く俺の頭を撫でてくれていた手が、離れた。
「二度と酷いことさせないから安心して」
「…っ、あおい…?」
真剣な声に、顔を上げる。
「大丈夫。まーくんは、俺が必ず守るよ」
甘い言葉を囁いて、俺を優しく包む蒼の体温と香りに安堵して涙腺が緩む。
ああ、なんで蒼の言葉は、こんなに俺の心を安心させてくれるんだろう。
「ひ、ぅ…っ」
しゃくりあげながら、その背中に回した手で、蒼の服をぎゅっと握る。
こんなに汚い俺を、蒼は抱きしめ返してくれた。
「…蒼、待っ、」
でも、それと同時に
流れてきたむせるような血の匂いが充満していることに、その優しさとの違和感を感じる。
身体に触れた瞬間、生暖かいものが頬につく。
さっきまで目の当たりにしていた光景を思い出し、焦る。
まさか、なんて思いたくない、けど
少し後ろで、板本君の悲鳴が聞こえた。
(………え?)
一度落ち着いた鼓動が、ばくばくと音を立てる。
おかしい。こんなのおかしい。
さっきから、全部俺の常識の範疇を超えたことばかりが起きていて、ついていけない。
もう、俺のせいでもう蒼にさっきみたいな、あんなことさせたくない。
「待って…っ」
身体の力を振り絞って、腕を掴んだ。
「待って、…とまって…ください…っ」
本気で何をしでかすかわからない蒼に、思わず敬語になってしまった。
俺なんかの言葉を聞いてくれるとは思ってなかったけど、怪訝そうに眉を寄せながら止まってくれたのを見て少し安堵する。
「蒼…っ、やめて、くれ…っ頼むから…ッ!お願いだから…っ」
「どうして?」
どうしてって、なんでわかってくれないんだ。
……あんなことして、蒼は大丈夫なのか。
血塗れの公園。
倒れている男達。
なんで、どうでもいいことみたいにしていられるんだ。
言葉が伝わらないことが、悔しくて、悲しくて唇を噛み締める。
「だから…っ、これ以上、蒼にそういうことして欲しくないし、蒼も板本君も、俺の大事な友達だか――っ、」
そこまで言って、腕を掴まれた。
(――え?)
振り向く前に手でぐいと後ろに引き寄せられて、冷たいモノが首に当てられる。
ひんやりとした鋭利な感触。
「――柊君。動かないでね」
「…っ、な、んで…?」
すぐ後ろから、板本君の低い声が聞こえた。
28
お気に入りに追加
1,088
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる