手足を鎖で縛られる

和泉奏

文字の大きさ
上 下
144 / 804
修学旅行

8

しおりを挟む




見て、ちゃんと目が合ったはずなのに。

おれが声をかけようとした瞬間に、冷たい目で逸らされた。


「……っ、」


結構、ショックだった。

ぎゅっと拳を握る。


(…おれも、蒼くんを騙した一人だと思ったのかな)


違うけど、あの状況で蒼くんから見たらそう見えても仕方ないかもしれない。


嫌われた。

嫌われた。


ずーんと暗くなっていても、佐原さんは関係なしに話しかけてくる。

あああもう、どうしよう。本格的に嫌になってきた。


「蒼くんに嫌われちゃったねー」

「………」


ケラケラと笑われて、余計に悲しくなった。
今の出来事を見ていたらしい。

…やっぱり、無視されたんだおれ。


「…嫌われ、てるのかな」


他人にまでそう見えていたことに、自分の錯覚ではなかったんだと実感して悲しい。
そうぽつりと零せば、彼女は何故かにこりと嬉しそうに笑った。

ぎゅっと腕に与えられる力が強まる。
浴衣がはだけて、胸がちょっと見えて気まずくて視線をずらした。


「うーん、どうだろ。でも、私はこれで良かったと思ってるけどね」

「…良かった…?」

「いつもめっちゃ仲良しだったからちょっと心配だったんだ」


心配されるようなことが何も思い浮かばなくて、そう尋ねると。
彼女は、全くの予想外の発言をした。



「蒼くんと真冬くんが実はデキてるのかなって」

「……へ?」


さらりと放たれた言葉に、耳を疑った。


デキてる…?

いまいち普段聞きなれない言葉に、意味がピンとこなかった。
眉を寄せると、「もー」と怒ったように頬を膨らませた彼女が言いなおす。


「付き合ってたり、してないよね?」


確認するようにそんな質問をしてくるから、驚いて目を瞬く。


(…なにを言ってるんだろう)


一瞬、理解できなかった。


「…おれ、男なんだけど」


このクラスでは、何故か男同士が付き合うってことがおかしいことだと思われなくなってるような気がする。

でもそんな発想、普通は考えもしないんじゃないだろうか。


(…おれがおかしいのかな)


む、と眉を寄せて疑問に首を傾げる。
本気で自分を疑い始めていると、ふいに腕を掴む手にぎゅっと力が込められた。


「でも、」


一瞬視線を下げて、躊躇いがちな口調で何かを言いかけた佐原さんの言葉をさえぎるように、椙原くんが「注目ー」と声を上げた。

その声に、皆の視線が集まる。

彼は視線を集めたことに満足げに頷き、にやりと笑みを作って。


「今から、王様ゲームをしまーす」


何本かの割りばしを手に、そんなことを言った。


しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...