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修学旅行
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「…だから、気安く触るなって言ってるだろ。まーくんが穢れる」
「ひどい!俺きたなくないもーん。なー真冬」
「わ、」
「抱きつくな不純物」
「っ、ひっぺがされた!えーん」
おれと蒼くんと依人。
相変わらず蒼くんと依人はよく言いあってるけど。
それもある意味微笑ましい光景に思えるくらいには、仲良くなったと思う。
…――今日は、修学旅行の班決めの日だ。
1グループ、計6人の男子3人女子3人。
別に男女混ぜなくても男子だけで六人でもいいじゃないかと思うけど、クラスで目立つ人達が何を思ったのか突然皆との交流を深めるために混合にしようと言い出した。
(……もうその時点で大体の予想はできてはいたけど)
「一之瀬君は私の班!」
「えー…私も一之瀬君と一緒がいいのに…」
「ちょっと皆自己主張ばっかりじゃない。誰か譲ってよ」
なんて、声が蒼くん本人には聞こえない程度にチラホラと聞こえてくる。
「……うわ…」
感動とか驚きより、ちょっと引いた。
予想通り蒼くんは女子に大人気だった。
バーゲンセールで一番込む時間帯に現れる人達よりも殺伐とした空気の女子達が火花を散らしていた。一緒のグループになるおれにまでなんとかして同じ班にしてくれないかと頼み込んでくる人がいて本気で困る。
蒼くんに聞いてみても、
「まーくんと一緒なら他なんてどうでもいい」
「―———………」
これまたおれが蒼くんを狙ってる男子だったら勘違いされそうなことを見惚れるような笑顔で言う。
それを見た女子達から熱視線を浴びて焼き焦がされそうになった。
天然なのか、それともわざとだったら魔性すぎると、こんなことがこれ以上続いたら本当に比喩じゃなくなりそうであたふたする。
「だから、そういうことを言うとまた…っ、」動揺しつつ発言の訂正を求めると、よしよしと頭を撫でられた。何故こうなった。というか、皆の目つきが怖くてたまらない。
同じグループの依人はと言えば、軽い感じで男子にも女子にも寄っていくから結構どちらかといえば目立つ感じの女子と仲が良い。
だからその女子達と一緒の班になったらどうしようと心配したけど、結局じゃんけんでその子たちにはならなかった。…良かった。正直、すごく安堵した。
―――――――――――
修学旅行当日。
まず初めに、バスでめちゃくちゃ酔った。
何かが胃からせりあがってくる。
頭が、脳がシェイクされてるような嘔吐感。
「……うう」
気持ち悪い。
うめき声をあげて、口を手でおさえると隣に座っている蒼くんが心配そうにおれの背中をさすってくれる。
背中越しに伝わる体温と優しさで若干目が涙で潤んだ。
見た目と同じく中身まで完璧な蒼くんはどんな時でも優しい。
「俺の肩にもたれていいよ」
「…ううん。だいじょう、ぶ」
そんなことをしたら重いだろうし、申し訳ない。
そもそも酔いやすいというのに、そのことを忘れて窓側でなく通路側に座ってしまった。
考えるまでもなく、それが致命傷になった。
もういっそのこと寝ようと思っても頭を置く場所がないし、後方に座っているせいで揺れが激しい。
ガタン。
「…うっ」
大きな揺れがある度に気持ち悪さが増幅される。
時計に目を向ければ、目的地に着く予定の時間までかなりあることに気づいて絶望した。
まだ、あと一時間もこのまま…
(……吐きそう)
いや、こんなところで吐いたら一生笑いものにされる。
「あー…もうやだ…」と泣きそうになっていると、蒼くんがふ、と呆れたような笑みを零す。
仕方ないなぁというようなその笑みに、自分が駄々をこねる子どもみたいに思えて情けなくなってくる。
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