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結局、離れることなんてできない
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しおりを挟む怯える俺を見て、不思議そうに首を傾げて、ああ、と何かを納得したように頷いた。
…目は笑っていないのに、ふわりと怖いくらい綺麗に微笑んで、俺の髪を優しく撫でる。
そして、ふいに俺の口元についてる…それに目線を移したのがわかった。
(っ、…やば…)
慌てて拭ってももう遅い。どっちにしろ涙とか言葉にできないものでぐちゃぐちゃだった。
「大丈夫。あの害虫はすぐに片づけておくから」
「…片づけるって、」
まさか、なんて俊介の時のことを思い出しながら問うと、ポケットから携帯を取り出した蒼が淡々と呟いた。
「今俺の部屋にいる虫を10秒以内に目の前から消せ」
その言葉を理解するよりも早く、スーツ姿の人たちが何人も扉からはいってきた。
蒼がその人たちに指示し、男はそれに慌てたような顔をしてキッと蒼を見る。
「おい…っ、いっでぇ…っ!離ぜ、よ…っ、」
取り押さえられた男が、押さえつけてくる男たちを振り払おうとしながら声を荒げる。
「ぞもぞも、蒼ぐん、がなんで、ごこにいるんら゙…!がの女と会ってら゙はずじゃ―ッ」
「…………」
(…かのじょ…、)
何度も蹴られたことで顔が歪み、血反吐を吐きながら話しづらそうに非難する男から再び出た『彼女』という言葉。
ぴくりと小さく眉を寄せて動揺したような表情をする蒼に、目を瞬く。
そう見えたのも一瞬で、無表情になって、俺の手足の鎖を外した。
近くに置いてあった毛布をかけられ、抱き上げられる。
わ、といきなり宙に浮いた身体に、声を上げて蒼の首に腕を回す。
と、
彼は一瞬満足げに微笑んで、でもすぐにその顔に暗い影をおとして小さく俺の耳元で囁く。
「まーくん。なんでアレがこの屋敷に入ってこれたのか、心当たりある?」
ドアの方に歩き出したところで、ようやくその言葉の意味を理解した。
(……俺が、窓のカギを開けたことが、ばれてる……)
固まったように身体が動かない。
俺は、ただ茫然と蒼が俺を連れてどこかへ向かうのを見ていることしかできなかった。
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