16 / 786
鳥は外の世界に夢を見る。
2
しおりを挟む「ぁ…」
庭に出て、空を見上げると小さい粒が空から降ってきて肩や足に落ちる。
その光景を目に焼き付けるようにじっと見つめていると、肩に何かがかけられた。
大きなコートで、わざわざ取ってきてくれたのか、と驚いて蒼を見ると「風邪でも引かれたら困るから」とぶっきらぼうに言われ、なんだか昔に戻ったみたいだな、なんて考える。
あの時はこんなことになると思わなくて。
ただ、優しい人だなんて思ったあの頃の自分が少しだけ憎らしい。
どのくらいそうしていたのか、ただ静かに空を見上げる俺を見て、ふ、と蒼が目を細めた。
「まーくんは肌が白いから、雪が似合うな」
「…そう?」
褒められているのか、けなされているのか分からない言葉に首を傾げる。…と、
「真冬」
後ろから抱き寄せられて珍しく名前を呼ばれた。
何事かと蒼を見上げれば、ひんやりとした手に頬を触られて「冷たい」と眉を顰められる。
「そろそろ戻るよ」
「わ、」
膝裏の少し上あたりを支えられて、抱き上げられる。
別に体重が軽いわけでもないのに、易々と持ち上げられて。
さっきまで地面を踏みしめていた足は宙に浮いた。
遠ざかっていく景色を見たくなくて、スタスタと未練がなさそうに屋敷に戻ろうとする蒼の首筋に顔を押し付けた。
――――
再び籠の中に舞い戻る。
戻りたくない。
……そう言えたらいいのに。
その願いがかなうことはないけれど。
47
お気に入りに追加
1,076
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる