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彼が選んだのが、他の人だったら。
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「んん……」
何かにすごく圧迫されてるようで苦しい。
軽く身じろぎして、目を開けると物凄く整った顔が目の前にあって。
驚いて思わず喉の奥で悲鳴が上がる。
それに反応したのか、蒼が小さく吐息を零してぎゅううと抱きしめてくる。
頭を胸に寄せられた。布団の中だということもあって酸素が足りずに息が詰まりそうになる。
「…(俺、抱き枕じゃないんだけど…)」
昨日無茶苦茶に抱かれて、そのまま気絶した俺は蒼に連れられてお風呂に入った。
あんまり覚えてないけど、風呂に入った後一緒にここで寝たらしい。
行為のせいで歩けない体を蒼に抱き抱えられたまま部屋に戻ると、敷いてあった一組の布団を見下ろして、どうせなら二組用意してくれればいいのに、と毎度ながら思った記憶が微かにある。
「……………」
(それにしても。)
こんなに無防備な寝顔を見るのは初めてで、ちょっと新鮮な気分になる。
いつもなら、俺の目が覚めるときには既に起きている蒼が今日はぐっすり眠っている。
目を閉じて眠る彼の寝顔はとても綺麗で、騒ぎたくなる気持ちもわかる。
こんな関係じゃなくて、普通に蒼と出会っていたらきっと見惚れていたことだろう。
「…なんで、俺なんだよ」
そのあまりにも整った顔を見ていると、いつも考えてしまう。
もっと他にいい人がいたんじゃないかって。
俺みたいに普通にどこにでもいるありふれた人間じゃなくて、もっと綺麗で素敵な女性とか。
…蒼の顔なら、選び放題のはずだ。
それなのに、蒼は休みの日も学校から帰った後もこうしてずっと俺のそばにいる。
俺を「お姫様」だなんて言って、逃げないように閉じ込めようとする。
寝てるときですら逃げると思っているのか手首につながれている鎖に、ため息をつきたくなった。
蒼の考えていることが、怖いぐらいに理解できない。
起きようとその胸を手で軽く押せば、
閉じていた彼の瞼がゆっくりと持ち上げられた。
ぼーっと眠たそうな目でこっちを見る。
「まーくん…?」
「……うん」
頷いて、背中にまわされている腕の拘束が緩むと同時にほっと息をついて、離れようとする。
と、後頭部に手が当てられたと思った瞬間上を向かされて、落ちてきた唇が俺の唇を吸う。
「…っ、ちょ…っ、ん」
予想外のキスに息が思うようにできない。
起き抜けに舌を嬲られ、抱き寄せられていれば動くこともできずに良いようにされるしかない。
擦られ、否応なしに甘美な感覚を覚える粘膜に小さく震えて吐息を漏らす。
僅かに離れた蒼が、意地悪げな笑みを浮かべた。
「おはよう」
「っ、あお、」
「…可愛いまーくんの顔見てたら、勃っちゃった」
優しく抱きしめられて、太ももに硬いものが擦りつけられる。
朝なのにその瞳に欲望の色が見えて、顔から血の気が引いた。
近づけられる唇を受け入れるように、目を閉じた。
………俺には、選択肢なんかない。
―――――――
(朝の穏やかな時間は、)
(瞬きするほど一瞬で、終わりを告げた)
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