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賭けの対象
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しおりを挟む…否、理解したくなかった。
「コイツモテるからさ、よくこうやって俺達でターゲット見つけては遊んでんだよ」
ニヤニヤと続けられる台詞に、頭が殴られた、それぐらいの衝撃を受けた。
「…ほん、と…ですか…」
先輩の方を、見る。
嘘だと思いたかった。
そんなわけないと叫びたかった。
けど、確かに、受け取られたお金がその手にはあって。
これが冗談なら、どっきりだと言うのなら、悪質すぎる。
それでも、信じたかった。
…信じて、いたかった。
「……アヤト、さん…」
身体を重ねて、ああ、好きだと、これ以上ないほどこの人が好きだと感じた。
先輩って呼ばなくていいって言ってくれた。
名前で呼べって。
だけど、簡単には呼び捨てになんてできなくて。
だから、せめてさん付けならって…そういう、話を して
そう、呼んだら、幸せそうに頬を緩めて
「…俺で、賭けてたんですか…?」
「……」
先輩は何も答えない。
大好きで綺麗な横顔は、ただ冷たい表情だけを浮かべて、…俺に向けられることはなかった。
…ここまできて、流石に冗談と思えるほど俺も能天気じゃない。
もう賭け事が終わったから、…”俺とヤッた”から、答える価値もないってことだろうか。
「……おかしいと思いました」
ぽつりと零す。
多くの人に求められるほど綺麗な容姿で人を惹きつけ、遊び相手には困らないはずの先輩が、…平凡で、人助けくらいしかできない…何のとりえもない俺と仲良くしようとしてくれたから。
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