2 / 3
愛され方も、愛し方も知らない
2
しおりを挟む「……」
見ればわかった。彼女を好意の目で見ているのは明らかだった。
「よーへい、…あれ、好きなの?」
その言葉に、彼は言葉を濁した。
けど、明らかだった。
明らかだった。
明らかだった。
「…そっか」
へぇとどうでも良さげに呟いた。
内心滅多刺しだった。好きな人。洋平に、好きな女。俺以外に。俺がずっと洋平の傍にいるはずだったのに。
「でも、あいつ好きな男いるみたいだよ」
視線の先には、女が少し照れたような顔で話す男。
幼なじみらしい。よくある話だ。他の男が難しいから、手近な男で恋愛してしまおうという。
どう考えてもあんな男より洋平の方が格好いいから、負けるはずがないのだ。ただ、今は洋平とあの女の接点はないというだけのこと。
――――――――――
…だから、それを作ってやろうと思った。
「今からこの場所で待ち合わせね」
一方的に電話を切る。
勿論、電話相手は洋平だ。突然の呼び出しだが、きっと彼は来るだろう。そういう男なのだ。
含み笑いをし、すぐ傍の歩道を歩いている女の口を後ろから塞ぐ。
おさえた掌に響く叫び声。
暴れ、もがく女を組み敷き、持っていたナイフで服のボタンをぶちぶちと裂く。
見たくもない露わにした肌を目前に、今何をしているのだろうとぼんやり思った。
…と、
「やめろ…!!」
怒りと焦りを滲ませた声。
ガツッ!!後頭部を殴られた。星が飛ぶ。
(…ああ、やっと来たか)
待ちわびていた存在に安堵し、意識を飛ばした。
「……お前、なんで…」
数秒後、覚醒した俺を見る、洋平の目。その腕にいるがたがたと震える彼女。
信じられないものを見る目。怪物。ごみ。異物。
「あーあ、一発ヤるつもりだったのに」
けらけら笑えば、一層彼女を守るように抱くその手。
羨ましい。羨ましい。羨ましくてたまらない。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
黄昏時に染まる、立夏の中で
麻田
BL
***偶数日更新中***
それは、満足すぎる人生なのだと思う。
家族にも、友達にも恵まれた。
けれど、常に募る寂寥感と漠然とした虚無感に、心は何かを求めているようだった。
導かれるように出会ったのは、僕たちだけの秘密の植物園。
◇◇◇
自分のないオメガが、純真無垢なアルファと出会い、自分を見つけていく。
高校卒業までの自由な時間。
その時間を通して、本当の好きな人を見つけて、様々な困難を乗り越えて実らせようと頑張ります。
幼い頃からずっと一緒の友達以上な彰と、運命のように出会った植物園の世話をする透。
二人のアルファに挟まれながら、自分の本当の気持ちを探す。
王道学園でひっそりと育まれる逆身分差物語。
*出だしのんびりなので、ゆる~くお楽しみいただければ幸いです。
*固定攻め以外との絡みがあるかもしれません。
◇◇◇
名戸ヶ谷 依織(などがや・いおり)
楠原 透(くすはる・とおる)
大田川 彰(おおたがわ・あきら)
五十嵐 怜雅(いがらし・れいが)
愛原 香耶(あいはら・かや)
大田川 史博(おおたがわ・ふみひろ)
◇◇◇
【完結】体を代償に魔法の才能を得る俺は、無邪気で嫉妬深い妖精卿に執着されている
秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】
同類になれる存在を探していた、無邪気で嫉妬深い妖精種の魔法使い VS 自衛の為に魔法を覚える代償として、体を捧げることにした人間不信青年
\ファイ!/
■作品傾向:ハピエン確約のすれ違い&性行為から始まる恋
■性癖:異世界ファンタジーBL×種族差×魔力を言い訳にした性行為
虐げられた経験から自分の身を犠牲にしてでも力を欲していた受けが、自分の為に変わっていく攻めに絆される異世界BLです。
【詳しいあらすじ】
転生しても魔法の才能がなかったグレイシスは、成人した途端に保護施設から殺し合いと凌辱を強要された。
結果追い詰められた兄弟分に殺されそうになるが、同類になることを条件に妖精卿ヴァルネラに救われる。
しかし同類である妖精種になるには、性行為を介して魔力を高める必要があると知る。
強い魔法を求めるグレイシスは嫌々ながら了承し、寝台の上で手解きされる日々が始まった。
※R-18,R-15の表記は大体でつけてます、全話R-18くらいの感じで読んでください。内容もざっくりです。
オメガパンダの獣人は麒麟皇帝の運命の番
兎騎かなで
BL
パンダ族の白露は成人を迎え、生まれ育った里を出た。白露は里で唯一のオメガだ。将来は父や母のように、のんびりとした生活を営めるアルファと結ばれたいと思っていたのに、実は白露は皇帝の番だったらしい。
美味しい笹の葉を分けあって二人で食べるような、鳥を見つけて一緒に眺めて楽しむような、そんな穏やかな時を、激務に追われる皇帝と共に過ごすことはできるのか?
さらに白露には、発情期が来たことがないという悩みもあって……理想の番関係に向かって奮闘する物語。
僕の幸せ
朝比奈和花
BL
僕はすでに幸せだ。
幸せな、はずだ。
これ以上幸せになることはできるの?
以前別サイトで書いていた作品を加筆・修正したものです。
※この話はフィクションです
※この作品にでてくる地名、企業名、人名、
商品名、団体名、名称などは
実際のものとは関係ありません
※この作品には暴力などが含まれます
※暴力、強姦、虐待など
すべて法律で禁止されています
助長させる意図は一切ありません
※タグ参照の上お進みください
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
三度目の衝撃。
帯刀通
BL
※かなりセンシティブな内容を含みますのでご注意ください。
どこにも辿り着けない。
一度目の衝撃。
警戒色の襲来。
二度目の衝撃。
悪意が忍び寄る。
三度目の衝撃。
絡め取られる恐怖。
星は変わらず瞬き続けるのに
醜く汚い僕たちは今日も
地上で息をして生きている。
だけど諦めない。
どんな暗闇でも星が瞬き続けるように
だれの人生にも救いは在り続けるから。
顔を上げろ。
前を向け。
生きろ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる